バラ浩之(「お題:夜の学校+クロスオーバー」 サンプルSS) 投稿者:AIAUS 投稿日:8月1日(火)01時24分
全くもう!
なんで、あたしったら、明日までの課題の教科書を、狙いすましたように
その前日に忘れて帰るのかしら?
おかげで、こうやって学校まで取りに来なくちゃならなくなったじゃない。

あたしは自分の失敗に逆ギレしながら、学校の塀を華麗に乗り越えた。
なんで校門から入らないかというと、もう閉まっちゃっているから。
教科書を教室に忘れたのに気づいたのが宿題をやろうとした時だったので、
とっくに夜中になっちゃってんのよね。
えっ? もうとっくに校舎の鍵が掛けられているだろうって?
あまい、あまい。
そんなこともあろうかと、マスターキーの複製を作っておいたのよ〜。

(犯罪です)

ナレーション、つっこみうるさい!

あたしはまるで女スパイのような身のこなしで校舎に入ると、最短距離で自分の
教室に向かった。
だって、夜の学校って怖いじゃない。
何かオバケとか出そうでさ。
昔、肝試しをやって本当の霊体験しちゃったこともあるし・・・。
ああ、こんなことならヒロも連れてくればよかった。
こんな危険な場所に、かよわい志保ちゃん一人なんて犯罪的なシチュエーションだわ。

「わあ、姉さん。上手、上手!」
「なんだか、子供扱いされている気がするんだけど・・・」

・・・ヒロ達の教室から声が聞こえる。
まだ残っている生徒がいるの?
校門を閉める時間になったら、先生が追い出しにかかるはずなんだけど。
まあ、関係ないわよね。
あたしは自分の用事を済ませたら、家に帰って宿題をやらないといけないし。

ガラガラガラ・・・。

あたしは教室の扉を開けると、月明かりを頼りに自分の机の中から教科書を探した。
えっと、妙に分厚くて置き勉して下さい、って言わんばかりの大きさなのよね。
で、手探りで探してみたんだけど、なぜか見あたらない。
机の中にゴチャゴチャと物を詰め込み過ぎたせいなのか、何がなんだかわかんないの。
ちぇっ、こんなことなら懐中電灯でも持ってくればよかったなぁ・・・。

「はい、灯り」

あたしの背中から照らされた灯りのおかげで、目的の教科書はすぐに見つかった。
「おっ、サンキュー・・・って、ぎょえぇぇぇぇ!!」
後ろから急に声を掛けられたあたしは、びっくりして悲鳴をあげたの。

「「ふにゃぁあああんっ!」」

あたしの声に相手も驚いたらしい。
怖々と後ろを見ると、中学生くらいの女の子が二人、互いに抱き合って腰を抜かしていた。
二人ともきれいなロングヘアー。何かで染めているのか、色は赤と青だった。青い髪の
女の子は眼鏡をかけている。

「あっ、ごめん、ごめん。驚かせちゃった?」
とりあえず、友好的な志保ちゃんスマイルで迫ってみることにした。
「びっくりしたよぉ。ゲゲラ鳥みたいな声を出すんだもん」
「ねっ、姉さん。それは失礼ですっ!?」
頬をふくらませて文句を言う赤い髪の女の子。青い女の子は何かを注意しているみたい。

「ねっ、あんたら。なんでこんな夜遅くに、こんな場所にいるの?」
あたしが率直に疑問をぶつけると、女の子二人は腕を組んで悩み始めた。
「えっとね、勉強をする場所はここだ、って聞いたから、魔法の勉強をしに来たの」
「はい。ここはマナ(魔力の源)が充実していて、とてもいい場所ですよ」
あんまりにも二人が真面目な顔で話すので、あたしは吹き出してしまった。
「魔法って・・・魔法少女に憧れる年齢でもないでしょ、あんた達。ほら、そんな
有りもしないものの勉強なんかしないで、家に帰って宿題でもやっていなさい」
注意すると、二人はキョトンとした目で、あたしの顔をジロジロと見た。
「何よ? 魔法は実在します、とか言い出すつもりじゃないでしょうね?」

「あなたの後ろで燃えている炎はなに?」
「どうして、何もないところで燃えているんでしょうね〜?」

そう言えば、さっきから蛍光灯もついていないのに明るいけど・・・。
何気なく、後ろを見てみる。

ニタリ。

あたしの後ろで明るく輝いていたのは、メラメラと燃えるヒトダマ君。
笑顔がとってもチャーミング・・・思わず、気を失うぐらいに。



「馬鹿。幽霊なんかいるわけないだろ」
「本当に見たんだから! こんなメラメラと燃える赤いヒトダマを!」
「で、その魔女っ子二人組がおまえに魔法を教えてくれたって? なら、使ってみろよ」
「いいわよ・・・ええいっ!」

ボンッ!

「やっ、やったわ! 見なさいよ、ヒロ! あんたの頭に咲いた、見事なバラを!」
「・・・で、これはどうやったら取れるんだ?」

あたしは何も言わずに、ダッシュでその場を逃げ出した。
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これは「夜の学校+クロスオーバー」のサンプルSSです。