『ブルセラ病の秘密』(『ぶるまー2000』Liar softSS作品) 投稿者:水方 投稿日:6月6日(水)00時42分
#===== はじめに ===========================================================#
 この物語で出てくる屋号や名称などの固有名詞は全て架空であり、実在の名称その
他、同一のものがあったとしても_何ら_関係ない事を先にお断りします。
 ……いや、マジで。
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 紅蓮の閃光を背景に、二人の少女が虚空へと身を投げだす。
 海面まで、ざっと300メートル。
「あゆみ――」
「なに、愛?」
「――君はどこへ落ちたい?」
「あうーぅっっっ……!!」


 すずず……ざっぱーん。
 子守り歌を思わせる波の音に揺すられ、あゆみの意識がゆっくりと戻る。
「……ん――うっ……」
「気がついたか、あゆみ」
「あ――愛!(がばっ)怪我はない?大丈夫?」
「聞くだけ無駄無駄。大丈夫に決まってるだろ」
「あぁ、良かったぁ……ここは?(きょろきょろ)」
「多分、さっき上から見てた島なんじゃないかなぁって、確度89%」
「じゃぁ、レポーターやヘリのパイロットさんたちは?」
「1番:サメの餌、2番:空の向こうの国、3番:えいえんのせかい――」
「え〜〜〜!!死んじゃったのぉ!!!(ぽかぽか)」
「こら、落ちつけあゆみ。……冗談だってばさ」
「こんなときに不謹慎だよ!」
「大丈夫、あのレポーターだったら、ロンギヌスの槍で貫かれても死なないって」
   「それは――むしろ増えていそうで怖い」
   「ふえるのか?それはふしぎノナ!」
「ほら、血走とキッスもああ言っているし」
「(ほっ)良かった……みんな、無事で」


(ナレーション/CV:某「あのシュワちゃん役の吹き替え」声)

西暦2000年――ブルマは狙われていた!

世界をブルマで支配せんとする悪の秘密結社“BB団”。
かたや世界のブルマバランスを監視する国際組織“MIB(ブルマの男たち)”。
両者の死闘は今まさに佳境を迎えていた。

鍵を握るのは、月面で発見された一着のブルマー。
偶然か、はたまた運命か、そのブルマーは一人の少女の下に舞い込む。
その少女の名は、常葉愛(ときわ・あい)。

彼女と、そのブルマー――“神のブルマー”との出会いから、
地球の命運を揺るがすブルマの……もといドラマが生み出される。

これは、その数多いドラマの中の、幕間劇である。

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  Liar soft 『ぶるまー2000』 Unofficial Short Story
  第5.5話 『ブルセラ病の秘密』 - The secret of Brucellosis. -
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 見渡すかぎり青く広がる大海原に、どこまでも続く白い砂。
 常葉愛と、その無二の友・橘あゆみ(ついでにそのストーカー・血走とそのコンビに
してライバル・キッス)が、太平洋に浮かぶ絶海の孤島へとたどり着く羽目になったの
は、BBC(ブルマー・ブロード・キャスティング:ぶるまぁ放送社)のレポーター・
キャシイ朝日が原因であった。


「ほら、見てください!」
 夏の日のとある放課後、愛たちの下にやって来た彼女は、あいさつもそこそこに切り
上げ、にじんだしわくちゃの手紙を差し出した。
「うーん、なになに『……いっしょうけんめいあやります。ですから神さま、わたしの
お母さんの病気を治してください。おねがいです――彩見』これは?」
「うちの取材班が、東京湾で入手したものです」
「東京……湾?」
「そうですあゆみさん。この手紙は晴海の岸壁そばに打ち上げられていた、メッ○ール
の瓶に入っていたんです」
「……メッ○ールぅ?」
 あゆみより先に、愛があきれた。
「この手紙が、黒潮に乗ってはるばる晴海まで運ばれて来たんですよ。まさにメッセー
ジ・イン・ア・ボトル!あぁ君はぼくのコンパスだ――ロマンチックですねぇ」
「――まさか、それだけで終りじゃないだろうな?」
「そんな目で見ないでくださいよ、ブルマー仮面さん」
「その呼称はやめれ(零下270度の視線)」
「(あせあせ)ですから、これから黒潮を逆行して、このメッセージの発信先を見つけ
ようと言うわけなんです」
「『探偵!ナイトスクープ』の探偵か、あたしらは(ため息)」


「『あゆみと空中散歩も悪くない』って、軽い気持ちで付き合ったまでは良かったんだ
けどねぇ……」
「そう、僕も愛くんの一瞬を納めたくて着いて来たんだが」
「さんにんも、よにんもかわらないノナ」
「……なんでこいつらまで、って十七回目に考えたその時だった」
「乗っていたヘリコプターが、いきなりエンジントラブルで失速するなんて――怖かっ
たよ」
「とっさに飛び降りてなきゃ、今ごろは海の中、だもんなぁ」
 愛はそう言って、腰のブルマーをぽん、と叩いた。
「着地の衝撃まで吸収してくれたんだから、神のブルマー様さまだ」
「ヘリコプターも爆発しちゃったし――ねぇ、レポーターさんたち、無事だよね?」
 あゆみは、不安げに愛を見上げている。
「レポーターはともかく、トート君がいれば大丈夫だろう(ぽん)」
 何気なく肩に置かれた手に、あゆみは自分の右手を重ねた。
「トート……あのしゃべるトースターのこと?」
「火星に行くのは無理だとしても、パートナーの面倒くらいは十分見ていそうだし」
「……なぜ火星?」
 説明しようとした愛の動きが、ぴた、と止まった。
 そして、砂浜から松の木をじっと見る。
「そこにいるのは誰だ!」


「問われて名乗るもおこがましいがぁ――」
 松の木の影から、白髭の老人が杖を振り振り、大見えを切って現れた。
「じゃしゃべるな」
「……最近の若いもんは冗談も解らんようだな」
 その言葉に弾かれたように、愛が一歩を踏み出す。
「知らざぁ言って、聞かせやしょう――!」
「おおっ!知っておるのか!!」
   「(ぼぞぼぞ)愛とおじいさん、何を言っているの?」
   「『白波五人男』をネタにしているんだよ、あゆみくん」
   「聞くからにおいしそうなノナ!」
   「「キッスぅ……」」
「……団十郎よりも片岡孝男のほうが好きなんだ。それより、アンタ誰?」
「この島の長をしておる者だ」
 老人はそこで、ようやく振り上げた杖先を砂に落とした。
「大きな花火があがったので、何事かと思っての」
「実は、乗っていたヘリが墜落してしまいまして……」
「空からこぼれた四人組、というわけなノナ」
 頭を掻き掻き説明する血走の後を、キッスがまとめた。
「ねぇ愛、あの手紙の話、聞いてみない?」
「手紙……ああそうか。実はこれなんだけど(ごそごそ)この『彩見』って子に、心当
たりはないかなぁ?」
「彩見じゃと?」
 愛がさしだした手紙をひったくるようにして読むや、長の手がわなわなと震えた。
「……あのバチあたりめが」
「!?」


 長の語るところでは、この島は行政こそ日本の範囲内だが、月に一回の定期船以外は
外部との接触がないらしい。
 ちょうど前回の定期船が出た翌日、この彩見の母親が熱を出して倒れた。
 それ以来、母親は手当てのかいなくみるみるやつれ、今では自分で起き上がる事もま
まならないとのことだった。
「わしが医者の資格を持っていたから、とりあえずの処置は出来たがの」
「それが、何で『バチあたり』につながるんですか?」
「なに、女人禁制の武流間神さまの祠の近くで、彩見を見た者がおってな」
「『ぶるまがみ』ぃ?」
「間抜けな声を出すでない!」
 老人は愛の頭を小突いた。
「いてっ!」
「武流間神様は、この島の守り神さまなんじゃぞ!!」
   「うがー、いきなり殴りやがって……」
   「気持ちはわかるが愛くん、信仰は時に過激なものだよ」
   「かみさまをバカにすると、メギドのほのおで七日七晩焼かれるノナ」
   「……それはちょっと違う気が……」
「元々はあの山の祠に納まっていた武者人形じゃが、かつてこの島に攻め入った海賊た
ちを相手に怒り、巨大化して武器や食料を喰い荒らすことで、この島を守ってくれたと
いう伝説があるのじゃ」
 老人は、そう言って指を突き出した。
「……どっかで聞いたような話だな」
「何で女人禁制なんですか?」
「うむ、猛り狂った武流間神様じゃが、女人の緋襦袢を見ると元の人形に戻ったという
言い伝えでな……この島を守ってもらうのに、封ぜられては加護がないじゃろう」
   「――そんなものかなぁ?」
   「信仰に一般的な論理を求めるものじゃないとは思うが」
「母親が発病した前日に、『女の子を見た』という噂が集落で広がってな……『武流間
神様のタタリじゃぁ!!』……と口さがない民に、わしが何を言っても聞かんのじゃ。
人口二百人にも満たぬのがアダとなり、おかげで母娘二人は村八分状態さ」
「そんな状態なのに、アンタは何にもしないのか!」
「この集落では武流間神様が絶対なのだ……心配せんでもよろしい」
 激昂する愛の顔を、老人はただただ優しく見つめる。
「明日の昼に、やっと定期便が来る。その船に彩見の母親を乗せれば、あとは大学病院
で治療して解決じゃ」
「治るんですか?」
「治るよ。何しろ――」
「何しろ――なんですか?」
「――母親はブルセラ病じゃからのう」
「「「「ぶ、ブルセラ病!?」」」」
「嘘みたい……」
「怪しいな」
「それ、どんな病気なんです?」
「家畜感染の伝染病じゃ。まれに犬からかかる事もあるの……熱が周期的に訪れて体力
を奪っていく、厄介なもんでの」
「アヤミのお母さん、犬を食べるときはちゃんと火を通さないとダメなノナ」
「……おひ」


 二時間後、止める長を押し切り、愛たち四人は彩見たちの住む、小高い丘の頂上にぽ
つんと立つ家までやってきた。
 玄関を入ると、奥のちゃぶ台を枕代わりに十二、三歳くらいの女の子が寝入っている。
「この子が彩見ちゃんか」
「かわいい寝顔なノナ!」
 おかっぱに切りそろえた黒髪が、耳元にばさり、と落ちた。
「――う、うーん……は、ひゃ!」
 そこで、彩見はやっと目を覚まし、間近に迫った血走の顔を見て驚く。
「ああ怖がることはないよ、彩見ちゃん。僕たちはき(ぼふっ)」
 さわやかに微笑む血走に対し、
「あ、彩見ちゃんの手紙を見て、ここに来たんだ」
 裏拳で突っ込みを入れる愛。
「うぐぅ、ひどいよ愛くん」
「変態の出る幕じゃない」
「……?(きょとん)」
「気にすることはないノナ、これもいわゆるひとつのコムリンク、なノナ」
「あたしゃKITTか」
 キッスに空手チョップで突っ込みを入れると、愛は彩見のそばで膝まづき、彩見と目
線を合わせた。
「――手紙、届いたんだぁ!ありがとうございます、神さま」
「来たのは偶然だけどね」
 愛はそう言って、彩見の髪をなでた。
「ねぇ、そう言えば、お母さんは?」
 そこで初めて、彩見はあゆみのほうを見上げた。
「隣の部屋です――どうぞ」
 ふすまを開けて通された隣の部屋に、彩見の母親は居た。
 透明なプラスチック製の風船の中で、点滴を受けている。
「――!!」
 愛たちは言葉もなかった。
 その眼は落ちくぼみ、視線は天井のあちこちをさまよっている。
 腕半分には醜い塊があちこちに班をなしており、呼吸も細く、荒い。
 わずかに開けた口の中から、血まみれでの歯が飛び出す。
 開いている手で、胸を何度もなで、さすりおろすその姿が痛々しい。
「……愛――」
 いつの間にか、愛の両手が堅く握りしめられ、わなわなと震えている。
 そして、数瞬後。
 無言で常葉愛は家を飛び出した。
「待ってくれ、愛くん!」
「待つノナ!!」
「血走先輩!キッス……!!」
 あゆみは呆然と、一陣の竜巻と化した三人を見送った。


「はぁ、はぁ、はぁ……」
 ようやく二人が愛に追いついた頃には、もうとっぷりと日が暮れて、空のホリゾント
が紫色に変わろうかという頃だった。
「ずいぶん遠くまで来たノナぁ」
「愛くん、気持ちは分かるが落ち着いて――(ばきっ)」
「――これが落ちついていられるか!!」
「正拳をカンッペキに決めて言うセリフではないノナ」
 キッスが愛のそばに近づく。
「いったい、なにを興奮しているノナ?」
「……あの長め……」
「ん?愛くん、いったい――」
「今は話している暇が無い……」
 そこで、愛はキッスたちのほうに向き直った。
「二人に調べて欲しいことがある」


「遅いなぁ、三人とも」
 あゆみはちゃぶ台に頬杖を突いた。
「はいどうぞ。お水しかないですけど」
「ありがとう……もう遅いし、良かったら何か作ろうか?」
「わぁ、ありがとうございます!!」


「愛くんの言うとおりだったよ」
 キッスと血走は、愛の待つ、丘のふもとの岩陰で合流した。
 例の武流間神の祠のあるところだ。
「ひととおり見て回ったけど、ウシやウマはおろか、イヌもネコも、ポロロカピバラす
らいなかったノナ!!」
「……最後のはともかく、やっぱりな」
「それに、村の人はお年寄りばかりでね……」
 ポケットから出した計数器に、血走は目を落とした。
「54世帯、合計で118人確認した」
「キッス、ここの人口は何人だった?」
「……『人口二百人にも満たぬ』とか言ってたノナ。正しいノナ」
「キッスくん、それはかなり違うモノなんだよ」
「みゅう、にほんごはむずかしいノナ」
「愛くん、これはどう言う意味――」
「しっ!!」
「(むぐぐ)」
「――誰か来るノナ」
 岩の間を縫うように、軽い足取りで人影が近づき、武流間神の祠へと近づく。
 祠の入り口をがちゃがちゃいじり、両開きの扉をさっと開ける。
 奥の火に照らされた横顔は、まぎれもなく――
「あの長だよ、愛くん!」
「――やっぱりな……先輩」
「何だい?」
「あゆみと彩見ちゃんたちを、頼む――行くぞ、キッス」
「わかったノナッ」
 その一言を最後に、二人は祠の扉をくぐった。


 祠の地下では、巨大な空洞の中に数十人の男女が鎖に繋がれていた。
 ある者は穴を穿ち、ある者は岩を砕く。
 佐渡の金山を思わせる熱い高炉の中に、砕いた岩を放り込む者もいる。
 そして、高炉から流れた溶岩の最下流では、真っ赤に熱された金属を打ち、見る間に
しろがね色の板に加工する者もいる。
「ブルマリウム合金の出来はどうだ?」
「はっ!」
 長の一言で、全身青の下っ端がレポートを差し出す。
「……あまり良くないな」
「これでも、めいっぱい働かせています」
「質が落ちる一方では困る」
 長はレポートを突き返した。
「もっと働かせろ。必要ならば二、三人殺してもいい」
「よ、よろしいので?」
「労働力くらい、この近海を通る船を襲えばいくらでも確保できよう?」
 そう言って、長はしろがね色の合金を手に取った。
「……この光沢を見よ」
 うっとりとした眼で、長は何度も合金の表面をなでる。
「ブルマリウムは永遠の輝き、とはよく言ったものだな。これに勝るものなど、この世
にはあるまい?」


 シャァ――!!
「うっ!!」
 カラン、カラン、カラン……。
 合金が地に叩きつけられ、済んだ音を立てる。
 その傍で、ちりちりと鳴っているのは……鈴。
「こ、これはメッセサ○オー特典の、ブルマパース!!」
「しかも、紺!!」

「そこまでだ!!!」

「どこだ!」
「どこだ?」
「どこだ!?」
「ボス、あそこだ!!」

 空洞の頂上から、地下へと降りる大階段。
「実体を見せずに忍び寄る、白い影……」
 そこに、二体の影が立っていた。
「常葉愛、見参!!」
「同じく、キッス・キリアンガヤ……ノナ!」

「なぬぅ!?常葉愛じゃと?!」
「やい、貴様!よくもブルセラ病だなんて嘘つきやがって!!」
「なぬぅ!どうしてだ!!」
「あのお母さんは典型的な栄養失調じゃねえか。そのくせ……」
 愛は指を長にめがけて、ぴしっと伸ばす。
「点滴の中身は生理食塩水だった!!そいつが気になって調べたら、ここには感染源の
家畜なんていやしねぇ!!」
「むぅ……一生の不覚」
「素人だからってバカにするんじゃない!あのお母さんがかかっているのは――壊血病、
そして脚気だ!!」
「よくわかったな」
「なめるな、キャラメル!きちんとビタミンさえ与えていれば治る病気を、あそこまで
放っておくなんて――(ばきっ)」
 そうっと後ろから近寄って来た戦闘員を一撃で屠り、地に倒す。
「鈴木梅太郎とキャプテン・クックが許しても、この常葉愛が――許さねぇ!!!」
「ノナッ!!!」
 倒した戦闘員を足蹴にし、キッスともどもポーズを決める。

「ええい、ものども、やってしまえー!!」
「イーッ!!」
 号令一下、十数人の戦闘員が二人に襲いかかる。
 しかし、愛とキッスの二人相手では、勝負にすらならない。
 あっという間に、青い戦闘員が小山となって積み上がる。

「もうおしまいだな、長さんよぉ」
「ぬ……ふ、ふあはははあぁ――!」
「何がおかしいノナ!!」
「おしまいではなく、はじまりじゃよ」
 長はそう言って杖をつき立てた。
「戯れ言はそれくらいにしろ」
 愛は一動作で間合いを詰めると、強烈なパンチをみぞおちに叩き込んだ。
「……なんで、あの母親をあんな目に?」
「邪魔じゃったからじゃよ……武流間神さまの登場にはな!」
 言って、愛を突き飛ばす。
 バランスを崩して距離を置く愛とキッスに対し、長は高らかに両手を振り上げた。

「い出よ、武流間の神よ!!」
 その声と共に、巨大な空洞の一辺がガラガラと崩れ、巨大な影が現れた。
「な……ノナ!!」
 全長およそ20m、ツノの根元に紺色のブルマを被った怪獣が、そこに現れた。
「こやつこそが武流間の神……いや、大神ブルマサリ!!」
「そんな(ピー)名前つけるな――!!」※一部お聞き苦しい点をお詫びします。
「愛、バトルなノナ!」
「よっしゃぁ!!――Let's BULMER Battle!!」


 時ならぬ地震に、ほうほうの体で逃げたあゆみたち。
「あれは……!」
 丘の頂上を突き破り、荒々しい怪獣が顔を出す。
「早く逃げるんだ!!」
 血走に引きずられ、それでもあゆみは怪獣のほうをじっと見る。
「――愛……!」


「くぅ、未だ倒れねぇか!!」
「しぶといノナ」
 既に、戦いは8ラウンドめを過ぎた。
 大神ブルマサリはなおも戦うのをやめない。
「しょせん人は人、神に歯向かうなんて、児戯でしかないのだ!!」
 その怪物の足元で、預言者めいて高らかに叫ぶ長。
「あたしが人なら、あんたは人以下じゃねえか!!」
「ほざけ、人の子がぁ!!」
「――アイ、あの頭を見るノナ!!」
「……角の根元……ブルマが、破れている!――よっしゃあ!!キッス、一か八か、大
技でとどめだ!!」
「ノナ!!」


 カッ!!!
 二人の間に、まばゆい光が広がる。


「食らえ――」
「あいの――」
「「ブルマークロス!」!」
 二人の攻撃が、二条の軌跡を残す。


 その一瞬後。
 灼熱の溶岩のごとき、オレンジ色の体液をまき散らし、
 大神ブルマサリはぐずぐずに砕けた。
「腐ってやがる……早すぎたのか!!」
「腐っているのは――」
 着地点近くで、二人はそろって足をいっぱいに延ばした。
「てめぇの心根だ!!」

 グシャ――ッ!!
「見事な……ユニゾンだ……」
 長は片ひざから、よろよろと身を起こした。
「た、タマランチ様に栄光あれ〜」
 叫び声を残し、派手に爆発した。



 翌日。
「お母さんのことは、安心して」
 愛は、彩見の肩をぽんと叩いた。
「ちゃんしたお医者さんが、治すまで面倒を見てくれるよ」
「本当?」
「本当さ。このアタシ――常葉愛の名に賭けて」
「――ありがとう」
 後は言葉にならない。

 やがて、彩見とその母を載せ、連絡船は静かに発進した。

「いっちゃったね……」
「ああ、うちの財閥系列の、一流どころを紹介したから――」
「きっと、良くなるよね」
 あゆみは、愛の顔を見て、にっこりと笑う。
 ――また、愛が無事で、良かった。

「ところで、愛くん」
「何だ、先輩?」
「我々は、乗らなくてよかったのかな……連絡船」


「――しまったぁ!!!!!!!!!」
 愛の叫び声が、狭い港にいつまでもこだました。


【終】

<<<次回予告>>>

 ――と、あやうくもう一月、この狭い島にいなきゃならないかと覚悟していたその時、
突如現れた真っ青な潜水艦!!
「いやぁ、三○重工業が投げ売りしていたのよ」
 その中から現れたのは、赤い仮面を身につけたブルクトラ――いや、ドクターB!!
「あなたには使命があるわ。伝説の力を高めるために」
 むりやり乗り込まされた潜水艦は、様々な冒険の始まりだった!!

次回「ブルマーウォーターの秘密 -The seacret of bulmer water -」に、チェケラ!

(注:続きません)

http://www.ky.xaxon.ne.jp/~minakami/index.htm