偽らざる気持ち(お題:三題話) 投稿者:水方 投稿日:7月1日(土)01時23分
「昔話をしよう。
 うちの学校にやってきたマルチが、その日、犬と話してたんだ。
『犬さん、犬さん、こんにちは!』
 から始まって、あきれるくらいにバカていねいに犬と会話してたんだよ。
 人間もイヌも、自分とは違う『生き物』なんだし、明確な差はないのかも
な、そう思った時、オレは気づいたんだ。
 マルチにも『こころ』があるだってことを。
 それだけに、別れる時が辛かったな。身を切られるような痛い思いだった。

 それから、オレが苦労してメイドロボを手に入れた。
 マルチと同じ姿をした、マルチの妹。
 だけど、そいつに『こころ』は宿ってなかった。
 嘘だろ、間違いだろって騒ぎたかった。
 泣いても、わめいても、あのロボットはたった一言、
『・・なんなりとご命令ください』って繰り返すだけだったから……。

 それだけに、おっさんのおかげで、あのマルチがオレのもとに戻ってきた時は、
心の底から嬉しかったぜ!ホント感謝してるよ!!」

「……今では後悔しているよ」
 ふきふき後らしきティッシュの山を横睨みながら、長瀬はそう言いきった。

【終】

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