たまにはこんなお弁当も………(十月のお題『お弁当』サンプルSS) Ver1.0 投稿者:雅 ノボル 投稿日:10月2日(月)20時22分
「浩之ちゃん、今週末は体育祭だね」
「ま、な……… けどよ、なんだって高校生にまでなって体育祭なんて有るんだろ
ーな? まったく、疲れるだけじゃねーか。なんか、たりーよな」
「だめだよ浩之ちゃん。いつもそう言うけど、良くないと思うよ」
「いいんだよ別に……… どーせ400m走しか出ねーんだし」
「ところで、浩之ちゃんのおじさんやおばさん達って、体育祭に来るの?」
「わかんねーよ、まぁ家にいた所で来るかどうかは怪しいけどな、もう子供じゃね
ーんだし………」
「そっか……… じゃぁ、お昼ご飯はどうするの?」
「テキトーにパンでも買って食うさ、心配いらねーよ。それからな、浩之ちゃんは
よせ」
「わかったよ、浩之ちゃん………」
「聞いちゃいねえ………」

            Leaf Visual Novel Series Vol.3 To Heart Side Story
                                               たまにはこんなお弁当も………
                                        Once in a while, such a lunch
     
                                                    Wrote By Noboru MIYABI

「あ、志保。ごめんね夜遅くに。ちょっとお願いがあるんだけど………」
『なーにぃ? 明日の朝でないとダメな話かなんか?』
「体育祭の事なんだけどね、うん、今年もお弁当を作るつもりなんだけど………」
『あのダメダメの浩之には、もったいないくらいのお弁当じゃん。まぁ、アタシも
ご賞味させてもらってるけど』
「ねぇ、今年はさ、志保も作ってみない?」
『あん!? アタシがぁ? じょーだん! そういうのアンタの方が得意じゃない。
アタシなんかが作るよりかぜーんぜん良いモノ作ってくるくせに』
「そうじゃなくって、今年はね………」
『ふんふん……… へぇ、あかりにしちゃ考えたわね』
「でしょ?」
『そんで、段取りどーすんの? 声はあたしから掛けとくとして』
「明日、放課後に家庭科室を借りるから、そこに集まるのはどう?」
『おっけー、明日放課後に家庭科室で、それじゃいまから声掛けとくね、ばいびー』
「よろしくね、志保」


「浩之?」
「おう、雅史。今日は部活ねーのか?」
「明後日の体育祭の準備で、今日は無くなって……… あれ? あかりちゃんは?」
「しらねぇ……… なんか用事があるって言ってたけどよ………」
「そっか……… たしか準備委員じゃなかったはずだけどな」
「まー、良いけどよ」
「で、今日はどうするの?」
「ヤックでたむろって、マンガでも読んで帰る」
「じゃぁ、僕も付き合うよ。行こう」
「おう」


「ヒロは雅史に頼んで、先に帰ってもらったとして……… にしても、ずいぶんと
集まったわねー」
「呼んだの、シホだよ?」
「まぁ、いつもやったら無視してるところやけどな……… まぁ、神岸さんのお呼
ばれってことやから、断るわけにもいかんと思ぅてな。まぁ、断ったら、隣のアホ
が何言うかわからんけど」
「へーへー、そりゃまたご挨拶なことで」
「でも、こういう事でしたら、喜んで参加させていただきます、ねぇ琴音ちゃん?」
「は、はい。よろしくお願いします」
「………」
「神岸さん、きょうはお誘いありがとうございます? そんな、来栖川先輩」
「あはは……… あたしがここに居てもいいのかなぁ? ビンボーなのに」
「材料費その他は、来栖川先輩が全面的にバックアップしてくれるから、平気平気。
ね? 先輩」
「………」(こくこく)
「わたしはお料理下手ですけど、こういう事ならいくらでもお手伝いします。だそ
うです」
「今回は、料理の上手い下手は関係無しに、集まってくれてありがとうございます」
「で、結局の所どーすんのよ?」
「うん、みんな一人一品づつ、みんなの分をちょっと多めに作って持ってくるの」
「てことは……… わたしに神岸さん、宮内さんに来栖川先輩、それから松原さん
に姫川さんに雛山さんと……… 長岡んアホォのか……… ざっと十人分か?」
「藤田君って結構食べそうだし、藤田君が居るなら佐藤さんだって来るんだよね?
ホラ、ウチって良太……… 弟が居るでしょ? 男の子って良く食べるんだよねー」
「まぁ、せやな」
「デ、作ってくるモノはドーするノ?」
「それをいまから決めるんだけど、レミィ」
「アハハ、そうデシた」
「七品もあれば、すごい量になりますね」
「おかずもそうですけど、ご飯はどうするんです? 一気に十人以上のご飯を炊く
のって、厳しいですよ」
「あ、それなら私のバイト先のを借りるから大丈夫。業務用の大きなのがあるし」
「しっかりと、押さえる所は押さえとるんやな………」
「………」
「先に献立を決めてしまいましょう? そうですね。じゃぁみんな、どんなおかず
が良いかな?」
「うーん、子牛のローストビーフでしょ? フカヒレの姿煮に、マグロの大トロの
握りに………」
「アホか! いくら先輩のバックアップがあるからって、私らで朝っぱらからそん
なもの作れるわけないやろ!」
「言ってみただけじゃないのぉ……… ちょっとしたお茶目って奴!」
「アンタなぁ……… まぁ、ダシ巻き卵は外せんわなァ」
「それから鳥の唐揚げ、定番よね」
「………」
「え? 小さなおつまみもいいですね、シュウマイとか春巻とか、タコさんウィン
ナーとか……… え? タコさんウィンナー食べた事、ないんですか?」
「………」(こくこく)
「ミニハンバーグもいいですね、小さいから他のもつまみながら食べられるし」
「じゃぁ、わたしはサラダを……… お肉とかばかりだとちょっと………」
「フライドポテトも、イイ感じネ」
「きんぴらゴボウあたりも……… あ、ひじきとお豆の煮ものもいいかも」
「こんなところかな? じゃぁ割り振りだけど……… 雛山さんはご飯の炊き出し
をお願いするとして………」
「うん、一応ご飯はおにぎりと、炊き込みご飯を作ってくるつもり」
「他は、くじ引きやな。人によっては慣れない物もあるやろうけど、たまにはええ
やろ?」
「面白そうダネ」
「藤田さんのためですもの、なんだって来いです!」
「作り方が判らなければ、神岸先輩にお聞きすれば良いわけですし………」
「………」
「わたしも、綾香に聞いて作ってみます? ぜひ頑張ってください!」
「でも来栖川先輩、ちゃんと食べられるもの作ってきてよ……… ったいわねー!」
「アンタも人の事言えへんやろ! って、ご、ごめんなさい先輩! そういう意味
やないですけど………」
「………」(ふるふる)
「気にしないで下さい? すいません……… ほら、アンタも謝りや」
「判ってるわよぉ……… ごめんなさい」
「ほらほら、二人とも。くじ引きするけど?」
「おっけー」
「あ、まったってや」


「じゃぁ、決まったからみんなに伝えるね。まず志保」
「なんになったの?」
「きんぴらゴボウとお豆の煮物ね」
「なんか地味臭いわねー、まぁ作り方はあかりに聞くからいいか」
「次に保科さんは……… ダシ巻き卵ね」
「なんや、言い出しっぺが作るわけやね。まぁええわ」
「レミィは……… 鳥の唐揚げ」
「Japanase Fried chickenね? OK!」
「葵ちゃんは……… ミニハンバーグ」
「わかりました!」
「姫川さんは……… フライドポテト」
「はい」
「来栖川先輩は、サラダをお願します」
「………」(こくこく)
「で、わたしが残りのシュウマイに春巻、タコさんウィンナーってことで」
「あ、他にも作って来ていいんだよね?」
「うん、雛山さん。かまわないけど………」
「あはは、そう大層なものじゃないから」
「うん、わかった。それじゃ、材料の買い出しは前日の金曜日に行くとして、作り
方がわからないとかあれば、わたしの家で教えるけど………」
「じゃぁ、一回見本って事で作ってみませんか?」
「あ、それいいね葵ちゃん」
「そだねー、実際お手本あれば、勝手違うだろうし」
「………」
「そですね、味付けとかもわかるし……… そういえば藤田君こっちの人間やから、
薄味なれてへんかもしれへんし」
「聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥、案ずるより生むが易しネ!」
「それに藤田君の好みとかもわかるし」
「じゃぁ、一回作ってみようか。材料を買っていく必要があるから、一回スーパー
で買い出ししないと」
「Let's go!」
「さぁさぁ、行くなら早くしないと」
「せやな、自分流に試してもみたいしな」
「………」
「支払いはわたしが……… って先輩が言ってます」
「とにかく行ってから、考えよっか」


「おはよー、あかり」
「おはよう、志保……… どうしたの?」
「どうしたもこうしたも、お弁当作ってきたからよ、全く手は包丁で切っちゃうわ
寝不足にはなるわで、もーさっぱり」
「アホやなぁ、前日にあらかじめ用意だけしておけば良かったのに。相変わらず前
準備が苦手やなぁ。こっちはばっちりやで」
「あ、保科さんおはよう」
「ほっといてよ」
「神岸先輩、おはようございます! 他にもいろいろ作ってたら、結構凄い量にな
っちゃいました」
「おはよう葵ちゃん」
「神岸先輩、おはようございます。朝起きるのが大変でしたけれど、なんとか間に
合いました。他にもいろいろと付けあわせを作ってきましたよ」
「姫川さんも、ごくろうさま」
「ハァイ! グッモーニン! アカリ、いっぱい作って来たヨ!」
「はぁ……… レミィ、何その箱は?」
「Japanase Fried chickenデース」
「れ、レミィ。ひょっとして、それ全部?」
「Yes! ソーダヨ?」
「ア、アメリカって、ホンマ大仰って言うか………」
「だから、宮内先輩ってアメリカンなんですね………」
「アメリカンパワーなんて、嫌いです………」
「ニャ? Why?」
「ごめーん、遅くなっちゃって!」
「あ、リオ! 急ぐと危ない………」
「って、っとっとっととぉ!」
「あ、コケよった………」
「ご飯抜きは、シャレになってないわよね」
「あ、痛たたた……… あ、お弁当……… よかったぁ……… あ、あはは………」
「「「ふぅ………」」」
「あとは来栖川先輩だけ?」
「………」
「うわっ! いきなり後ろにいないでよね! 先輩」
「………」
「ごめんなさい、用意するのが遅れてしまいました? それで先輩、モノはどこに
あるんや?」
「こちらでございます」
「あ、執事の………長瀬さ」
「セバスチャンでございます」
「………セバスチャンさん、先輩のお弁当って、どこにあるんですか?」
「こちらにございます。いちおうドレッシングなどは別の容器に入れております」
「じゃぁ、これは家庭科室の冷蔵庫に入れておくとして……… どうしたんですか
先輩?」
「………」
「いろいろと工夫してみたんですけれど、ちょっと失敗しちゃいました?」
「………」(こくこく)
「大丈夫、浩之ちゃんはそんな事気にしませんから」
「やほー! 面白そうな事やってるのね。ついでにわたしも混ざって良い?」
「綾香さん!」
「なぁ、なんで寺女の綾香がここにおんねん?」
「………さぁ? 学校サボってきたとか?」
「アヤカ、今日はどうしたノ?」
「あたしの学校、土曜日に授業ないもん。だから、姉さんの体育祭の観客。ついで
に浩之のおべんとも作ってきたけど」
「で、何を作って来たんです?」
「ほら、姉さんから話を聞いたら、汁ものが無いから豚汁作って来たの。一応簡易
コンロもあるし」
「………」
「えっ、今日のお料理は、殆ど綾香が手伝ってくれました? そうだったんですか」
「別に良いんじゃない? 料理は多めに作って来たんだし」
「せやなぁ、もし余っても、人海戦術でかたつけられるし」
「ひょっとして、志保も智子も私の事残飯処理役って決めつけてない?」
「………」(ぽん)
「これは大事な役目です、頼みますよ? って姉さんヒドい!」
「大丈夫ダヨ、アヤカ。………ノルマは一人10ピースダヨ」
「レミィ……… アンタどれだけ作ってきたのよ………」
「ほらほら、もたもたしてると浩之ちゃんが来ちゃうよ」
「あ、ヤッバぁ………」
「せやな……… もう時間的にもそろそろ来そうな頃合やし」
「じゃあ、これ全部家庭科室に?」
「そうね、その方が良いかも」
「早い所持ってった方がいいよね? それじゃ、早く運んじゃわない?」
「持ってくなら、足元に気ぃ付けや」
「あ、あはははは……… 気を付けまーす」
「みんなも早く早く」
「「「うん!」」」

「あかりぃ、探したぜ。どこに行ってたんだ?」
「ちょっとね。ところで浩之ちゃん、お昼一緒に食べない?」
「おう、雅史が弁当作って来てくれたから、一緒に食わねえかって言おうとした所
なんだけど……… って、おい、どうしたんだよ急に……… 慌ててどっか行っち
まいやがった」

「み、みんな、みんな大変!」
「どーしたの?」
「何をそんなに泡食ってるんや?」
「先輩、とりあえずお水です」
「………あ! いま何か見えたような………」
「コトネ? 虫の知らせかナニか?」
「………」
「ずいぶん動揺してますね。って姉さんが言ってる」
「なに? 藤田君になにかあったの?」
「あかりっ! なにがあったの!?」
「ふぅ、ふぅ……… じ、実は………」

「「「じつは?」」」


「あれ? あかり、雅史の奴知らねえか?」
「雅史ちゃん!? ううん、ぜ、ぜんぜん知らない」
「ほんとか?」
「………うん」
「しゃーねえなぁ。いまから学食でパンを漁っても、ろくなもんがねえハズだし」
「あ、あのさ、浩之ちゃん。お弁当、みんなで作って来たんだ。良かったら一緒に
食べない?」
「みんなって……… 志保とかいいんちょとか、レミィとか?」
「うん、他にもレミィや先輩に葵ちゃんや姫川さん、それから雛山さんに綾香さん
も」
「………ま、いっか。ありがたくご馳走になるぜ」
「よかったぁ、みんな多めに作ってたから………」
「そっか。そんじゃたらふく食ってやるぜ」


「………うぅぅぅ、せっかくのチャンスだったのにぃ………」
「まぁ、抜け駆けは厳禁ってことや」
「あんたねー、だからおホモ達とか言われるの、判ってる?」
「僕は浩之と一緒に食べたかっただけなんだぁああああ!」

「「「「「やかましい! それになぜこんなに美味しいのよ!」」」」」

「あぁ、僕の弁当が心ない女の子に汚されていくよぉ………」


「みんなおまたせー、浩之ちゃん連れてきたよー」
「わりぃ、なんか遅れちまったな。雅史もいたのか」
「うぅぅ……… 浩之ィ」
「どこほっつき歩いてたのよヒロ!」
「みんな藤田君の事、待っとったんやで」
「………どうしたんだ、みんな? 雅史、弁当は?」
「それが……… みん(ボクッ)げふぅ!?」
「マサシ、来る際にお弁当落として台無しだそーデス」
「うぅ………(ホントはみんなが食べたくせに………)」
「なんだ、仕方ねえなぁ」
「やっほー、浩之」
「あ、綾香が何故ここに?」
「なによ、あたしがここに居ちゃいけないわけ? あたしは姉さんの家族で、応援
しに来たんだけど?」
「なんだそっか」
「そろそろお弁当を食べません? 藤田さんの事を待ってたから、おなかが空いて
しまって………」
「あはは、琴音ちゃんも? 私もおなかが空き過ぎてペコペコだよ」
「わたしも、お弁当作ったのは良いけど、朝ご飯、お弁当のお握り一個だけだった
んだ、さっきっからおなか空き過ぎてて………」
「………」
「姉さんもおなかが空きましたって」
「じゃぁ、早い所食っちまおうぜ。実はおれも腹ペコなんだよな。そっか、みんな
の料理、ありがたく頂くとするか」


                                 おわり