お菓子を作ろう 投稿者:雅 ノボル 投稿日:9月30日(土)23時53分
 外の暑さも大分落ちついた、9月も終わりのある日のお昼前。
 ちょっとした用事で大学まで行って、用事を済ませてすぐにお家に帰ってみると、
私がいない間に誰か来ていたのか、果物がいっぱい入った箱がリビングに置かれて
いた。
 箱の横には、お母さんから私宛ての書き置きが添えられていたので、それを手に
取って見る。

 「遠方の叔父様から、今年も果物を頂きました。いくつか選んでお食べなさい。
余るようでしたら、お友達におすそ分けしても構いませんから 母」

 箱の中の果物を見てみると、りんごやイチゴ、桃にグレープフルーツにオレンジ、
そして、梨に栗にキゥイフルーツ、いろとりどりの果物が大きい箱いっぱいに詰め
られていた。
 お家の人だけじゃ、食べきれなさそう。
 でも……… そのまま他の人にお裾分けと言うのも、なんだが味気ないな。
 どうしようかな………?

         Leaf presents "WHITE ALBUM" Misaki Sawakura's Side Story
                              お菓子を作ろう
                             Let's make sweets

                          Wrote By Noboru MIYABI

 しばらく、箱いっぱいの果物を目の前にして、悩んでしまう。
 決めた。お菓子にしてしまおう。このフルーツを生かしたお菓子を作るのも悪く
なさそう。
 これだけいっぱい果物があるなら、結構バリエーションが作れて面白そうだし、
なにより作りがい有る。
 でも、これだけの果物、どうしようかな? ちょっと品物の味見をしてみよう。
 紅く熟れたりんごは、ちょっと洗ってから半分に割ったあと、薄く切って食べて
みる。
 ちょっと酸味が強いけど、これくらいのほうがお菓子を作るにはちょうど良いか
な。
 イチゴはちょっと小粒だけど、なかなか甘味も酸味もよかったし、桃もオレンジ
もグレープフルーツもちょうど食べごろ。
 梨は日本の梨だけど、これはこれでどう使おうかな? ちょっと悩んでしまう。
 栗もちょっと見た感じでは、虫食いのあともなさそう。けれど、栗を使うとする
なら栗だけ使って、マロンケーキも悪くなさそう。
 最後にキゥイ。箱から一つ取り出して、半分に切った片方をスプーンですくって
食べてみる。うん、まだ酸味が残ってるけど、なかなか甘くて美味しい。
 全てを味見してみて、また悩む。どうせなら、この果物を前面に出したいな。
 生地の中に混ぜたりしないで、果物で着飾ったお菓子も良いかもしれない。
 それなら、タルトが良いかな?
 タルト生地のサクサクした歯ざわりに、フルーツの甘味、酸味と水気に、生クリ
ームの口当たりで、タルトの歯ざわりをこわさない程度に潤いを与えてあげる。
 お茶と一緒に食べると一番良いような、そんなイメージのタルト。
 うん、出来あがった。一口サイズよりもちょっと大きめのタルトに、生クリーム
と、いくつかの果物を乗せよう。果物のトッピングもいくつか用意して、数個づつ
選んで食べるのも良いかな。
 残念だけど、栗は甘露煮から作ると丸1日かかっちゃうから、あとで近くで市販
品を買ってくるしかないけれど、それ以外は全て使っちゃおう。
 果物を使った贅沢なタルト、作る前から出来あがるのが楽しいな。

 台所のあちこちからお菓子作りの器具を取り出して、冷蔵庫からタルトの生地の
材料をテーブルに並べて、何があって何が足りないかをチェックする。
 栗の甘露煮とホイップの生クリーム、他には飾りつけの食材以外は、材料は全て
そろっていた。たリないものは、あとで買い足すとして………
 果物の下ごしらえは、先にタルト生地を作ってからにしよう。
 まずタルト生地。
 先に小麦粉を分量分ふるっておいてから、バターを溶かしてちょっと泡立てる。
 そして卵を割って黄身と白身を分けてから、黄身だけをお鍋に入れて軽く暖める。
軽く暖めるのは今から入れるお砂糖が溶けやすくするため。
 温まった卵黄にお砂糖を加えてかき混ぜて、お砂糖が溶けきったら、先に溶かし
たバターを少しづつ加えて伸ばしたあと、ふるった小麦粉を入れて、練り過ぎない
ように注意しながら小麦粉とバターで伸ばした黄身を合わせていく。
 リズム良く動いているうちに、つい由綺ちゃんの歌をハミングしてしまうのは、
お菓子作りに夢中になって楽しいからかな?
 生地がまとまるぐらいになったら、大きなラップの上に生地を乗せて広げてから
冷蔵庫へ入れて生地を休ませる。
 これをしないと、タルト生地は違うものになってしまう。
 冷蔵庫の中で生地が熟成するまで、しばらくまっててね。

 生地を冷蔵庫で休ませている間、今度はトッピングの果物の味付け。
 りんごは赤ワインとお砂糖とちょっとレモンを足して、軽く煮付けちゃおう。
 ぶどうの香りとレモンの香りと酸味が、酸っぱいりんごの隠された甘味と香りを
引き出してくれる。
 イチゴはシロップで軽く煮て、シロップにイチゴの色が移って、イチゴがつやや
かになるくらいに。
 桃もシロップで軽く煮ちゃおう。このまま切ってタルトに乗せるのも良いけれど、
まだちょっと実が固いから、シロップで煮て柔らかくしちゃおう。
 オレンジとグレープフルーツは、皮をむいて房ごとに分けてから、身だけを取り
出して種は除いておく。
 梨とキゥイはタルト台に乗せるときに切って乗せよう。いま切っちゃうと、色が
変わってしまいそう。
 果物の下ごしらえを終えても、まだタルト生地が落ちつくまで時間は掛かりそう。
 近くのスーパーに行って帰ってくるくらいの余裕もありそうだから、いまの内に
買い物に行ってこよう。

 買い物から帰って来て、すぐに冷蔵庫のタルト生地を見てみると、ちょうど良い
具合に生地が出来ていた。
 これをこのままタルト型に当てて、形を整えたあとに型ごと抜いて、重石を載せ
て焼けば、タルト台の出来あがり。
 ちょっと大きめのタルト台をいくつも作っておいて、タルト台の底にフォークで
ちょっと穴をあけてから、アルミホイルとタルトストーンをタルトの器の中に敷く。
 さぁ、このままオーブンで焼き上げちゃおう。あらかじめオーブンを暖めてから、
170度で10分ほど焼いて、アルミホイルとタルトストーンを取り外してから、
また10分。
 焼いている間に、お台所の中いっぱいにバターの焼ける良い香りが立ちこめる。
 うん、いいにおい。

 タルトを焼いている間に、今度は生クリームを泡立てちゃおう。
 ハンドミキサーで、少し柔らかめに泡立てる。余り固くすると、クリームの味が
立ち過ぎちゃう。
 七分ぐらいに泡立てておいてから、粉砂糖を混ぜて、ちょっと甘味をつけてから
また軽く泡立てておく。
 出来たてのクリームを舐めてみる。うん、良い感じ。あとは、タルトが焼きあが
って、冷めてから。

 焼けて充分に冷えたタルト台に、クリームを軽く落として、下ごしらえした果物
と、トッピングにミントの葉や、溶かしたチョコレートを盛り合わせていく。
 乗せる果物は一つのタルト台に2、3個づつ。
 あんまりごてごてと乗せても、見栄えがよくない。
 赤ワインで紅くなったりんごと、シロップでつややかなイチゴに、キゥイの小片
をトッピング。
 うん、紅いりんごとイチゴに、対照的な緑のキゥイがカラーのワンポイント。
 オレンジにグレープフルーツ、それから梨を一つのタルト台にのせて、ミントを
あしらってみる。これは食べた瞬間に果汁の滴るようなタルトをイメージして。
 飾り付けのミントは、柑橘系とは別の、さわやかな香りを出す為に。
 いくつかは、トッピングの果物を変えてみよう。グレープフルーツを桃に変えた
り、オレンジをキゥイにしてみたり。
 栗は栗で、贅沢にクリームを多くして、キゥイの輪切りを添えて、溶かしたチョ
コレートでトッピング。
 こんな感じでどんどん作っちゃおう。

 出来たてのタルトで、お茶にしようかと思ったけれど、私がいない間の来客に、
お母さんが使ってしまって、切らしてしまっていた。
 なんだか、最後の最後で残念な感じ。
 でも、調子にのって、タルトを少し作り過ぎたかも。家族の分や私の分を除いて
も、結構多く残ってしまっている。
 うーん、どうしようか……… うちの家族って、あんまりこういうの食べない方
だし………
 そういえば、今日は冬弥君も彰君もエコーズに居るって聞いてたっけ。
 これだけのタルトを一人で食べるのももったいないし、どうせなら大勢でお話し
ながら食べるのも悪くないかな?

 出来たてのタルトを、取っておいたお菓子のお店の箱にそっと入れて。
 綺麗な色紙とリボンで、タルトの入った箱をラッピングして。
 ちょっと見栄えの良くなった箱を大事に袋に入れて。
 みんなの居るエコーズへいこう。
 ちょっと遅いお茶の時間になるだろうけど、みんなで一緒のお茶の時間の方が、
何倍も楽しいから。
 みんなの笑顔の中に、このタルト達が添えられていると、もっと嬉しいから………