偽らない気持ち(イベントSS掲示板 9月のお題「〜にひかれて」サンプル作品) 投稿者:雅 ノボル 投稿日:9月2日(土)13時16分
 朝食の準備が終わって、改めて冷蔵庫の中身を見てみると………
 うーん、冷蔵庫の中身がすっかり空になってる。
 昨日、いきなり耕一の奴がウチに来たもんだから、少し冷蔵庫の中身を奮発しす
ぎて作り過ぎたかな?
 みんなを送り出して掃除とか終わらせたら、商店街で買い物をしないと。でない
と亀ネエの一言で、今日のごはんは全部店屋物にされちまう。
 せっかく耕一がウチに来てるんだ、いっつもぐーたらでコンビニ弁当の多いあい
つだって、家に居る時ぐらいは手料理を食べたいだろうから。

          Leaf Visual Novel Series Vol.2 〜Kizuato〜 Side Story
                                   偽らない気持ち(少しは歯に衣を着せよふ)
                                                 A feeling isn't deceived.

                                                    Wrote By Noboru MIYABI

「じゃぁ悪いけど梓、仕事に行ってきます。耕一さんもお疲れのようだから、そっ
としてあげて下さいね」
 たかが仕事へ行くだけなのに、ワカメ涙を流しつつ、名残惜しげに戸口で未練が
ましく突っ立ってる千鶴姉を、とっととリムジンへ押し込んで鶴来屋に向かわせた
あと、さっさと掃除や洗濯なんかを済まして買い出しにいかないといけない。
 千鶴姉は「耕一の事休ませて」なんて言ってるけど、この家のルール「手の空い
ている人間がなんでもやる」がある以上は、アイツにも手伝ってもらわなきゃ。
「耕一ぃ、いるか? いるんなら手伝えー!」
 耕一にあてがわれた客間の障子を空けると、案の定、大の字になって寝てやがっ
た。全くいい気なもんだよ。大学生ってのはいつもこーなんだか?
 って、あたしも地元の短大生だけどさ。
「おいこーいち、起きろって」
 とりあえず、最初くらいは優しく言ってみる。
「うへへへぇ、ちづるさーん」
 ちぃっ、このお気楽大学生が。夢の中までのんきなもんだよ。
「ほれ耕一、起きろっての」
 うりうりと耕一の鼻をつまむ。
「ふひぇひぇー、はえでひゃん。ほうほ酒はひひよー」
 ………ムカツキ度50%って感じだよ。鼻をつままれても寝てるのか?
「起きろよ耕一ってば」
 左手で鼻をつまんだまま、右手でほっぺたをむぎゅーって引っ張ってやる。
 あー、なんだか耕一の肌って油っぽくってヌルヌルしてるし、おまけにきちんと
ヒゲも剃ってないから、なんかじょりじょりするし。
「はひゅへひゃん、ひゃめへふへー」
 ぶち。
 決定的にムカツキ度100%。
「そろそろ起きてく・れ・な・い・かなぁ? こぉいちぃぃ」
 両手に力を込めるけど、一向に寝てるよ耕一の奴。やっぱり鬼の血を継いでるだ
けあって、容易には起きちゃくれないか。よぉっし。
 耕一の顔から手を離して、耳元でわっかを作って深呼吸。

「起きやがれってんだ耕一ぃぃぃ!!!」

 ふー、はー、ぜいぜい……… 耳元で怒鳴ってみるけど………  お、起きやし
ないし……… くーぬーやーろー! こうなれば。

「おきろぉぉぉぉこぉぉいちぃぃぃ!!!」
 踏み! ぎゅりぎゅりぎゅりりり………

「うぉろぬげわはぁーーーーーー!!!! ギャーーーーース!」
 思いっきり耕一の腹のちょっと水下くさいかもーって所を踏みぬいて思いっきり
踏みにじってやった。ちょっと鬼の力出てたのは、耕一のせいだからな!
「ぐえ、ゲホゲホッ! ぐあっふ!………」
 ちょっと悶絶こいてるけど、まぁ耕一の事だから3分もありゃ復活するだろ。
「おまえねー……… もーちょっと起こし方っつーもんがあるだろう!」
 涙目な奴に言われても、全然説得力のない文句をたれる耕一。
「なにさ、朝ご飯の前にだって起こしに来てやったのに、寝ぼけて飯食ってた人間
が何言うか」
 ジト目で耕一を見る。すると、耕一は涙目の寝ぼけ眼をこすりつつ枕元にあった
腕時計の表示を見る。
「………うぐあ、もう9時すぎかよ……… 本当に飯食ってたのか俺? 記憶にな
いんだけど………」
 寝癖だらけの髪の毛を掻きつつ、大欠伸をかまして座布団の上に胡座をかく耕一。
「食ってたよ、その証拠に腹へってないだろ?」
「ん、そういやそうだな」
 一人納得する耕一。
「あのねぇ……… 一人で納得してる暇があったら、とっとと着替えてあたしの手
伝いしてくんない?」
 もう少しで拳が出そうな所を、どうにかこうにか押さえて、耕一にお願いする。
「やだ、だって俺お客サマだもん」
 ぶち。こ、コイツ即答するし………
「手伝え」
 ごすっ!
「ひゃ、ひゃい………」
 問答無用、耕一を一発殴って朦朧としてる所を、襟の後ろを引っつかんで、その
ままずるずると音を立てながら客間から耕一を引きずり出した。


「で、どこにいくんだよ梓?」
 高校卒業と同時に取得した自動車免許と軽自動車で、あたしと耕一は家を出てた。
「今日のご飯の買い出し」
「あん? それだけのために俺を起こしたのか?」
 助手席で眠そうで眠そうで悪人顔になりかけてる耕一が、ジト目であたしを見る。
「悪い?」
 あたしが平然と言ってのけるのを。
「あのなぁ……… そんなの千鶴さんや楓ちゃんや初音ちゃんが戻って来てからで
も良いだろ?」
 さらにジト目で顔を近づけてくる耕一。
「じゃぁ言わせてもらうけどさ。あたしの手料理と、千鶴姉の庭から採取して来た
訳のわからん物を使った料理と、どっちが良い?」
 決定的な脅し文句の一発で、耕一はがっくりとうなだれる。
「おまえの料理………」
「だろ? 店屋物でもいいけど、千鶴姉のことだから一食参千円もするような高級
仕出し料理を頼むんだぞ? そんなの5人分も頼むより、食材買ってきて料理した
方が安上がりじゃん」
 これが洒落でもなんでも無いのがマジな話だから、本当に千鶴姉には困ったもの
だ。調子に乗って店屋物を取り続けてると、数日後にはウン万単位の請求書が転が
り込んでくるなら、あたしが作った方がマシだっての。
 国道沿いにある大型スーパーを無視して、市街地の方へと車を走らせる。
「あん? 梓、スーパー通り過ぎたけど良いのか?」
「いいんだよ。今日は市場で買い物するから」
 そう、車を買ってもらってから、時々隆山の市場に足を向けるようになった。
 理由は簡単、まず素材が新鮮だから。それにウチが鶴来屋のオーナーだから、
鶴来屋で使うような厳選された良い物を、安く手に入れられると言う利点もある。
 千鶴姉もそれなりに顔は広いから、そう言う所は積極的に活用させてもらってる。
 もっとも、生鮮食料品以外のものは、大型スーパーで買わないとダメなんだけど、
今日はその予定もない。
「市場ね……… あん? じゃぁ俺を付き合せたのは」
「そ、アンタ荷物持ち。まさか楓や初音にやらせるわけにもいかないっしょー?」
 耕一をキッパリと荷物持ちに任命。よしよし。
「う、怨んでやる………」
 耕一がぶつくさ呟くのをほっといて、あたしは構わず市場へと向かった。

「うはー、市場っていってもデカイなぁ」
 隆山の市場はそんじょそこらの市場よりも規模が大きい。なんせウチを始めとす
る旅館が立ち並ぶ温泉街だから、消費する食材の量も半端じゃない。
「まぁ、隆山温泉の食をすべてまとめるだけの容量を持つには、これ位じゃ無いと
ダメだってことさ」
 なんてったって、この市場も鶴来屋グループが投資してるとか千鶴姉がいってた
っけ。あの舌だけ肥えまくってる料理オンチがそれなりに力入れてるだけあって、
市場の中は活気立っている。
「お、こりゃ鶴来屋の若女将じゃねーか」
「若女将ぃ、後で見に来てくださいよー!」
 次々に仲買の人達から声を掛けられる。
「へー、人気者だねぇ、ここじゃ」
 耕一が関心したように言う。
「まぁね、千鶴姉に食材の事言ってもわかんないし」
 そう言って、市場の中に入っていく。
 仕入れで競り落とされた品物が、市場の一角にある小売の店に所狭しと並べられ、
旅館関係者や飲食店の人達が、次々に品物を見定めている。
「お、梓ちゃんじゃねーか! ちーちゃんは元気か? 今日はブリの良いのが入っ
てるから、覗いていかねーか?」
 鶴来屋で馴染みの仕入れ業者のオッチャンに、声を掛けられる。
 ふーんブリか。
「サービスするから、見てくんな!」
 うし。
「見せてもらうよーん」
 オッチャンの声に引かれて、オッチャンの店に並ぶブリの切り身を吟味する。
「どうだい、セリでもなかなかの値がついた一品さね」
 ほうほう、オッチャンが言うだけあって、なかなか身がしまってて、アブラも
のってとろけそうなくらいに良いのが並んでる。値段は……… むぅ?
「オッチャーン、もー少しまかんない?」
「お、買っていくのかい? いいぜぇ、こんくらいでどーだ?」
 オッチャンが値札の値を書きかえる。むむ………
「もう一声!」
「そりゃー無理だぁ!」
 オッチャンが笑って答えるが、既に額から汗が出てる。おかげですでにかなり
ディスカウントされてたのがよーく判った。
「しかたないなぁ。それで手を打っとくよ」
 なんせ、オッチャンがビビるほどの値がついた逸品もんだしね。
「ありがてぇ! ついでにおまけだぁ! このイカ1杯と、宍道湖のシジミももっ
てっちゃってくれや!」
 お、サービス良いじゃん。なんでだろ?
「どしたの? 今日はやたらとサービス良いじゃん」
 ストレートにオッチャンに聞いてみると。
「なぁに、梓ちゃんが彼氏連れて来たからに決まってんだろ!」
 はぁ………? あ! 耕一!? その当の本人は、この戦場にぽつねんと取り残
されて、ほけーッとしている。は、恥い奴。
「コイツはあたしの従兄! 賢治おじさんの息子の耕一だって」
「はぁ!? 賢治さんの息子さん? あぁ! いつ隆山に戻って来たんで?」
 オッチャンが耕一に声を掛けるが、ほけーっとしたまま反応しない。寝てるのか?
「耕一っ!」
 だんっ!
「え? ぬっふぅ〜〜〜〜!!?」
 あたしが踏んだ右足を抱えて、狭い通路を飛び跳ねる耕一。
「………ばか?」
 あたしが恥ずかしさのあまりに下を向いてしまうのと同時に、オッチャンを含め
た周りの人達の爆笑が沸き起こった。
 なお耕一は、オッチャンにたのんで台車に引かれて退場となった。はずい奴。

 それからいろいろと買い物を終わらせると、車の後部座席は食材で一杯だった。
「にしても、買いこむのな」
 まだ踏んだ後が痛いのか、助手席で右足だけ裸足でふーふーとしていた耕一が、
後部座席のありさまを見てあきれて言う。
「きょ、今日は特別だよ!」
 こいつー、まだわかんないのかぁ?
「それにしても、なんで前もって連絡もなく、突然ウチに帰ってくるんだよ!」
 そのせいで、今日だって買い出しに出なきゃならなかったんだよ。判ってるのか
よ耕一。
「あ、おまえ知らないの?」
 あん? てぇことは、千鶴姉……… 知ってたのかぁ?
「実はな梓……… 俺が戻ってきたのは………」
 と、突然、耕一がシリアスな顔して迫ってきた。
「なぁ? な、ななななな、なに!?」
 突然の展開に、あたしはびっくりした。これって、これってもしかしてぇ!?
「………いいのか梓? ここで話しても………」
 相変わらずマジな耕一。
「………話って、なにさ」
 ば、やめ、心臓が勝手にどきどきいってる………
「大事な話だぞ」
 どきっぱりと、真顔で耕一の奴は言った。これって……… これってもしかして、
もしかしてぇ!?
「明後日は、親父の一周忌じゃないか」
 ………はい?
「それで、千鶴さんが呼んでくれたんだよ。知ってたんだろ?」
 ………いっしゅうき? 賢治おじさんの? はい? もうそんな季節だっけ?
「もしかしてオマエ。この場でお前に告白するとか思ってたんじゃねーだろーなぁ?
間違っても、お前に告白する事なんて無いから安心しろって……… おい、梓?」
 ………クッ。こーのーやーろー。千鶴姉も千鶴姉だが、真っ先にこのアホタレを
どーしてくれようかぁ!
 さっきまでの恥ずかしさが、そのまんま100%純粋に怒りへと転換されていく。
 耕一……… その罪は己が身体で受け取るがいい!
「あずささーん、ちょっとまってほしいなぁ……… 何もここで柏木の血を全開に
せんでも………」
 ぶっちーん!
 怒りゲージ120%MAX! アズサ怒りの鬼変化!!
「………こ」
「こ?」
 耕一が助手席のドアを開いてシートベルトを外すのを一瞬で行って、今まさに出
ようとした所で………
「耕一のバカァーーーー! お前なんか車に轢かれて死んじまえーーーーー!!!」
 柏木エルクゥパワー全開で、耕一の事なんかお構いなしに突き飛ばした。
「だから何故こーなるのよ俺わーーーーー!!!!!」
 エルクゥパワーで全開で放った掌打は、耕一の身体を200mほどすっ飛ばし、
丁度そばを結構な速度で通過していたトレーラーの進路上にポテチンと………
「ばか………」
 あたしが呟くその向こう側で、今まさに耕一の命の炎が尽きかけんと………
「するかぁあああああ!!!」
 といっても、トレーラーの進路上にいたからには………
「本日二度目のフライング・ザ・スカーーーーイ! トビマス・トビマス!!」
 エルクゥ耕一、格闘するガ○ダムの如く、無意味に腕を組んだままトレーラーに
激突。そして大地からテイクオフ。そして少し先の海に向かってダイブイン。
 数分後、海底深くまで沈んでいたハズのそれは、イイ感じで波間をたゆたうクラ
ゲの如く、全身をピクつかせて漂っていた。
 ………まぁ、どうせエルクゥだから死なないか。


「………で、ど・う・し・て・耕一さんがいっしょなのかしら? あ・ず・さちゃ
ああああん?」
 口から魂出して呆けてる耕一と、買ってきたものを車に乗せて家に帰ってみると、
どういうわけか亀姉が玄関先で「にこやかキラキランッ☆ミ」と笑みを浮かべつつ、
その手には代々伝わる柏木家伝統の鬼包丁を後ろ手にちらつかせて待っていた。
「だぁッ、って、どどどどどどうして亀ね、もとぉい、千鶴姉が仕事も終わってな
いのにウチにいるんだぁ!?」
 あたしの狼狽しまくった声に、にっこやかな表情で………
「だってぇ、エルクゥ通信で、耕一さんの断末魔がぴぴっと頭にデンパしちゃった
んだモン(きゃるん)」
 えぇ、うかれてます、憂かれまくっとりますこのアマ。しかも声の質だけは零下
273.15度以下の絶対零度入ってるし。それに耕一は死んでねーっつーの。
 視界の端にはすっかりおびえまくって服従のポーズをしている初音と、ワレカン
セズでお茶をすすって様子を見る楓の姿………
 楓ェェぇ! あんたバラしたな! バラしたんだなぁあああ!!
(梓姉さん煩い)
 思考波で返されてしまうと、あたしは打つ手が無いのにこ奴わー!
「なぁに騒いでるのかなぁ? 梓ちゃんはぁ……… と・こ・ろ・でぇ、今日のお
昼なんだけどぉ………」
「昼飯ならいまから作るつもりだけど?」
 イヤな予感がする。とってもイヤぁな予感が。
「もう、鶴来屋の懐石弁当を注文しちゃった。てへ」
「なにーーーーー!!?」
 よりによって、ウチのあの懐石料理のおべんとですか!? 一つ5000円は下
らないアレですか!? 千鶴姉……… アンタ鬼や! ………いや、エルクゥなの
は元からだけどさ。
「で、その代金だけど……… 梓ちゃんのお小遣いから出しといたんでよろしくぅ」
 ぬわにぃぃいい!?
 ち、千鶴姉……… あたしの小遣いいくらだと思ってんだああああ!
「んなもんに全部引かれたら、あたしは今月一文無しだぁぁ!」
「ひ・い・と・く・か・ら・ね(ギヌロ)」
 千鶴姉のメンチで一切の口答え大却下。う、怨んでやるー。呪ってやるー。
「それから……… なんで耕一さんを連れ出したの?」
 今度はそれに言及するかぁ!
「………耕一さんはね、この一年間バイトをする傍ら、普通なら遊んでもいいとき
でも、勉強してたのよ。隆山に戻ってくるために、戻って来てすぐ私達を守ってく
れる為に……… 猛勉強して、お仕事をして……… 辛いのに………」
 ふと、鬼モードを解除して、千鶴姉が魂の抜けたまんまの耕一を見ながら、慈し
むようで、どこか悲しいような表情で言う。
 そっか……… そうだったんだ。全然知らなかった。だから、あんなに疲れてた
んだ。こういち、本当に来年には戻ってくるんだ。
「それなのに、それなのに……… それなのに、あずさ、あなたって子はぁぁ!」
 おおう! 逆ギレ!? シリアスで落とすんじゃないのかぁ!?
「何でだよ千鶴姉! いつもは立ってる者は親兄弟関係無いのに、耕一だけなんで
特別扱いなんだよ!」
 対抗してこちらも逆ギレしてやるぅ!
「だってぇん、耕一さんは特別なんですモン!(はあと)」
 ぴしっ!
 あたしの中で、何かが轟音切ってブチきれた。
「理由になるかああああああ! こぉの、偽善者ああああ!!」

 ギンッ!

 次の瞬間、あたしの目の前にいたのは一匹のケモノだった。
 そのとき初音は、一切の事実の前にただおびえるだけの存在でしかなかった。
 そのとき楓は、外の天気を見ていた。無論中の様子は一切無視していた。
 そして、耕一は相変わらず口から魂を出しつづけたまんまだった。


「あーずーさー、もうお前と一緒に買い物なんかいくかぁ! いだだででで………」
「それはこっちのセリフだ……… 〜〜〜〜〜〜〜〜つぅ〜〜〜〜〜〜」
「ほ、ほらほら。お兄ちゃんも梓お姉ちゃんも喋ると痛みが増すよ?」
「………自業自得」

 その日の午後、柏木家の客間には2つの包帯人間が愚痴を言いまくってた事だけ
追記しておく……… 
 もっとも、その2日後の柏木賢治氏の一回忌には、二人とも何事もなかったかの
ように振舞ってたとか。まぁ得る食ぅな人達だし………
 どっとはらい。