ぱらぱら。 雨かな。 ぱらぱら。 雨だったら嫌だけど。 ぱら、ザーザー。 降って来た…。 窓際に行って外を眺めて見る。 やっぱり降ってる。 私は雨の音から逃げるかのように窓を閉めると部屋を出る。 昔から雨は嫌だった。 まるで空が泣いているかのように感じるから。 空が涙を流しているかのようだから。 隆山という町は昔の面影が残っているけれど雨の日は特に昔を感じてしまう。 私の中のエディフェルが目を覚ましてしまう。 私の中でエディフェルが泣いている。 しくしくと悲しい涙を流している。 雨の日は憂鬱。 そんな時は、お気に入りの部屋に行く事にしている。 本を一冊持ってその部屋に行くと自然に落ち着いて来るから不思議。 走るように茶の間を通りぬけ客間に向かう。 まるで脅えた小犬の様。 いつも後になって笑っちゃうんだけどその時はいつも真剣。 私がいつもの様に客間に逃げ込むと、 「あれ? 楓お姉ちゃん」 「あ、初音…。 私も一緒にいて良いかな」 「うん、もちろん良いよ、楓お姉ちゃん」 笑顔で私に答える。 初音らしい笑顔、まるで太陽に照らされたように感じる。 私の大好きな笑顔、大好きな初音。 初音の笑顔は私の心を照らし何時の間にか癒す。 だから私も出来るだけの笑顔で答える。 「ありがとう、初音」 初音は寝そべってマンガを読んでいる。 その隣で同じ様に寝そべって本を読んでいる私。 何か落ちつく…。 「ねぇ、楓お姉ちゃん…」 「ん? なぁに」 私は本から目をはなさずに答える。 今、良い所だし…。 「…ねぇ、楓お姉ちゃん」 「きゃぁ、や、やめなさい…きゃ、こ、こら」 初音が私をくすぐってくる。 も、もう…子供なんだから。 私も反撃、えい。 「え、や、やだ楓お姉ちゃん。 きゃぁ、くすぐったい」 「は、初音こそやめなさいって、きゃ」 どれくらい時間がたったのだろう。 相変わらず外は雨だけどあまり気にならなくなって来た。 そのうち、くすぐり疲れて肩で息をしている私達。 疲れたけど楽しかった。 こんなに楽しかったのは久しぶり。 「…楓お姉ちゃん」 しばらくして息が整って来た頃。 「うん?」 「…私ね…雨の日って嫌いだったんだよ」 初音がうつむいて話しはじめる。 「昔を思い出すの…遠い昔の私の」 えっ、それって…。 「でもね、今日は別。楓お姉ちゃんと一緒にいたら気にならなくなっちゃった」 私もだよ、初音。 「ありがとう楓お姉ちゃん…」 暖かい気持ちで包まれる感じ、感謝しなければいけないのは私の方。 「初音…」 寝ちゃってる。 「ありがとう、初音」 安心し切って寝ている初音に向かってつぶやく。 初音の寝顔を見ていると私も眠くなってきちゃう。 雨音がまるで子守歌のように心地好い。 …あれ、私…雨音があれほど嫌いだったのに…。 嫌いだったのに…。 ………。 暖かく柔らかい手が私の頭を撫でている。 ぐっすりと寝ていたみたい。 私はゆっくりと目を開ける。 「おはよう、楓」 優しく微笑んでいる千鶴姉さんがいた。 「お帰りなさい、千鶴姉さん」 私はゆっくりと目を閉じる。 千鶴姉さんの暖かさが頭に伝わって来て気持ちが良い。 「それにしても楓、良く寝ていたわねぇ」 私はゆっくりと目を開けた。 「うん、初音のおかげかな…」 微笑みながら初音の方を向くと、安心した顔で眠っている初音が夕焼けに照らされていた。 「本当に気持ちよさそうな顔で眠っているわねぇ…」 千鶴姉さんは優しい微笑みをたたえながら初音の頭を撫でている。 「あ、雨やんでる…」 「奇麗な夕焼けねぇ…」 夕焼けに照らされて真っ赤に染まっている庭。 雨はやんで夕焼けになるし、あけない夜は来ない。 泣きやんだら微笑めば良い。 私には優しい姉や妹がいる。 だから大丈夫。 今度エディフェルが泣いている時には、泣きやむまで待ってあげよう。 だって一人は寂しいもの…。 「梓姉さんは?」 「夕ご飯作っているわよ」 「私…手伝ってくる」 「うん、お願いね」 私は客間を出ると梓姉さんのもとに向かう。 茶の間は良いにおいでいっぱい。 「梓姉さん、手伝うね」 「あ、楓お願い」 キッチンから姉さんの声。 エプロンを羽織るとキッチンに入る。 「何から手伝えば良い?」 「あ、これ千切りに…」 私は大丈夫、だって家族があるもの一人じゃない。 ね、エディフェル。 =================================================================== 始めましてボンドと言います。 雅さんにここの事をお聞きしまして、今回投稿させていただきます。 痕から楓&初音のSSをスケッチのように書いてみました。 上手く姉妹愛が表現できていれば良いのですが・・・。 では失礼いたします。