Tears In Rain 投稿者:たろすけ 投稿日:6月30日(金)06時39分
 藤田君…ここ通るんやろか…。
 住所も電話番号も調べんで飛び出してきてしまったからなあ。あほやな私も。
 

 …ほんま、あほやな…。

 
 絶対向こうに戻ろうって、また三人で昔みたいに馬鹿やろう思うて、頑張って勉強したのに…。
 結局…私の一人相撲だった訳か…。 

 
  『拓と里伽子、付きおうとるんよ。…智子、知らんかったん?』

 
 何で…何で私に黙ってたんやろ…。
 別に私は、拓と里伽子が付きおうてても気になんかしないのに…。
 そないに…私が邪魔やったのかな…。


  『智子…お前、もっとそいつと仲良うせなあかんて』

 
 拓があないな事言うたのも…私のこと、心配してくれたからやなかったんやな…。


  『智子! お願い、話を聞いて!』
  『話なんか聞きとうない! 里伽子なんか…里伽子なんか、もう友達なんかやない!』


 …でも…本当は判ってた。
 二人が黙っていたのは私が邪魔やったからやないこと。
 向こうも、今までの関係を壊したくないから、言い出せなかったってこと…。
 こっちが向こうを責めるのは筋違いや言うことは判ってる。
 …判ってるのに…。

 …もう…神戸に帰っても私の居場所はあらへん…。
 でも…ここも私の居場所やない…。
 もう…私にはこれからどうしたらええのか分からんようになってしまったわ…。


 …藤田君なら…こんな時、なんて言うてくれるんやろな…。 


  『本当にそんなでいいのかよ? 本当にひとりが好きなのかよ?』
  『オレ多分、また明日も話し掛けると思う』
  『だって、委員長のこと、友達だと思ってっからさ』

 
 …友達…か…。
 こっちに来てからそんな事言うてくれたの藤田君だけやったな…。
 …友達って…一体なんなんやろ?

 …あかん、色々くだらん事考えとったら涙が出てきそうになってきたわ…。
 もう泣かんって…こっちに来たときから決めてたのに…また…破って…しまい…そう…。



 ……あ……雨……。



  『うっわ〜! なんや急に降り出してきおったなあ〜』
  『ほんとやな〜! もうびしょびしょやわ! はい、里伽子、このハンカチ使って』
  『あ、ありがと智子。でも、どうする〜? しばらく止みそうにないよ〜?』
  『う〜ん、そやな…。傘もあらへんし、このまましばらく雨宿りするしかないか…』
  『…よっしゃ! 俺にええ考えがある!』
  『え…って、うわあっ! 拓! あんたなに人のことまた雨ん中に引っぱり出しとんのや! せっかく体拭いたの
  に、またびしょ濡れやないか!』
  『まあまあ。ほら、里伽子もそんな所におらんで、さあっ!』
  『あっ、拓ちゃん、ちょっと待ってってば…きゃあ! …ああもう、うちまでびしょびしょやあ…』 
  『…で、拓…これのどこがええ考えなのかな…?』
  『ん? だってどうせ濡れてない所なんて半分も無かったやろ? だったら潔く思いっきり濡れた方がええやろと
  思ってな…』
  『拓ちゃん…それ無茶苦茶…』
  『ほんま…余りにも馬鹿らしゅうて怒る気力も失せたわ…』
  『…それに、この方が制服がぴったりと体にくっついて目の保養にもなるしな…』
  『え…って、きゃあっ! もうっ! 拓ちゃんのエッチ!』
  『…拓…あんた最初からそれが目的やったんやな! 待たんかい、こらあっ!』
  『待てと言われて誰が待つかいっ! わはははははっ!』
  『こらあっ! 待てと言うとるやろがあっ!』
  『…ぷっ、あはははははっ!』
  『…里伽子、あんた、なに笑うとんのや?』
  『え? …だって、今どき小学生でも雨ぐらいではしゃいだりせえへんのになあって考えてたら、なんや可笑しく
  なってきて…ふふふっ、あはははっ!』
  『…確かに…私ら、ええ歳して、何やってんやろ?』
  『…でも…智子も里伽子も、黙って雨宿りしてるより楽しいやろ?』
  『…ま、そういう事にしといたるわ。…ふふふっ』
  『…うふふふっ』
  『…くっくっくっくっ』
  『あはははははははははははは〜っ!!』
  


 …出来ることなら…もう一度あの頃に戻りたい…。
 …でも…それはもう…無理な話や…。

 …このまま…この雨が嫌なこと、みんな洗い流してくれたらええのに…。
 

 



 ……それにしても……藤田君……なかなか……来ぃへんな……。
 ……なにしてんやろ……。







 ……ほんま……なにしてんやろ……。