嘘・嘘・大嘘・絶対に嘘!(四月のお題「エイプリルフール」サンプルSS) 投稿者:助造 投稿日:4月1日(日)02時24分

このSSのネタは生ものなので高確率で風化していたりするかもしれません。(をい


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 その日は朝から何かが変だった。

 それはいつものようにあかりに起こされて玄関に出たとき…。
「おはよう、浩之ちゃん。」
「………誰だお前。」
 あかりだと言うのは一応わかった。
だが、思わずそう言いたくなった。
髪型…昨日までショートにリボンだったあかりが…
その日は前髪が顔を隠すほど長くなっていた。…というか、腰の辺りくらいまで伸びている。
それは後ろ髪にも言えることで、頭部全体が赤い髪の毛に隠されている状態だった。
肩をかくかくさせて踊ったり、井戸から這い上がったりしてきそうで怖い。
きっと来る〜、来ぅるぅ〜、なんて歌がどこからともなく流れてきそうだ。
ちなみに頭のてっぺんにはリボン。
「…………」
「どうしたの? はやく学校行こ?」
「…あかり…お前今日、何かいつもと違うトコロがあるだろ?」
「え!? どうしてわかるの!?」
 いや、どうしてもくそないだろ…その格好…
「…私がいつも履いてるくまちゃんのパンツを今日履いてないのを何で知ってるの…?」
 あかりはそう言い終わった後、顔を真っ赤に染めている…と思われる。(顔見えないので未確認)
ちなみに俺の言いたいこととは全然違っていたの言うまでもない。

「いや、俺が言ってるのはそんなことじゃ…」
「…今日は…乾いてなかったの…ごめんね、浩之ちゃん。」
 何が、ごめんなんだよ?
 PS版エンディングチックにちょっぴり怒る俺。
ところで、こいつはくまのプリントの入ったやつなんてものをまだ履いているのか?
確かアレは幼稚園の時…
あかりにスカートめくりしたときにそういうのを穿いていたような…
 ……まさか同じ物じゃないよな、流石に。

「う〜ん、十数年履き続けてきたパンツを変えたから…やっぱり履き心地が変だよ…。」

 同じモノですか、あかりさん。
 何てベタな…。
「ちなみに今日はピカチ○ウだよ!」
「いや…もういいから…」

「あ、早く学校に行かないと遅刻しちゃうよ!」
「…とりあえず、急ぐか。」
 こんな某ホラーモノの女顔負けの奴が横にいたらどんな目で見られるかわからんが。
俺は気を取り直し、あかりの横に並んだ…。




「あら、あかりちゃん。おはよう、今日もいい天気ね…」
「あ、おはようございます。」
「…………」
「よお、今日も浩之君と一緒か、あかりちゃん。」
「は、はい…」
「…………」
「こんなにいつも一緒にいるんじゃ、まるで夫婦だな、はっはっは!」
「も、もう…そんなんじゃないですよぉ…」
「はっはっは! 照れるな照れるな!」
「…………」
「あ、神岸さんおはよーっ!」
「あ、おはよう、脇屋久出栖代さん」
「…………」
「やっほぉー! グッモーニン、あっかりぃ〜!!」
「あ、志保…おはよう!」
「…………」
「あんたも毎日大変ねえ…こんな不甲斐ない男の相手ばっかりで。」
「ははは…浩之ちゃんは不甲斐なくなんかないよぅ…」
「…………」
「そーかしら? 私にはコイツがそんなに甲斐性があるとは思わないけどねえ…」
「もう…志保ったら…」
「…………」


 俺は悩んでいた。
 いや、あかりの友達に「わきやくですよ」なんてベタな名前の友達がいたことではない。
何故だ…? 何故あかりにこんなナチュラルに接することが出来る?
こんな異常な格好をしてるようなあかりなのに、近所の人たちのあの対応は何だ?
これじゃまるで「〜変わらない日常〜」って感じじゃないか。
これが日常? 嘘嘘嘘嘘嘘嘘だ

「ちょっと止まりなさい、そこの君達!」
 その時、後ろから声をかけられた。
振り向くと、そこには眼鏡を掛けた刑事がパトカーに乗っていた。
「え? 何でしょうか?」
「何? この人…」
「…………」
 あかりがこんな格好で外を出歩いてるんだから職務質問の一つや二つされるんだろうな…。
まあ、でもやっと普通の人が出てきたということだ。
普通は、こういう頭している奴が道を歩いていたら、即刻鉄格子のついた病院送りなんだと思う。
だって、絶対に精神を病んでるぜ、この髪型は。
さあ、おわまりさんっ! 早くあかりを病院でも収容所へでも連れてってくれっ!


「君達…道路はちゃんと右側を歩かないかっ!!!」


 ………は?

「あ、そうですね…」
 そう言ってあかりはそそくさと道路を挟んで反対側のほうへ向かう。
「はあ〜…かったるいわねえ…」
 そう言いながらも、志保も反対側へと向かう。
俺だけがこっち側に残された。これは住む世界のことも暗示しているのかもしれない。
あかりたちはあっちの世界に行ってしまったんだ…。
「君も早く行け。」
「…いや、あの…」
「どうした? 何か問題があるのか?」
「…あいつを、あの赤髪貞○(もしくは“神の左手悪魔の右手”)みたいな奴見て…何も思わないんですか?」
 俺は刑事の反応を窺う。

「うむ…いいセンスをしているんじゃないか? あの髪とか。」

 ……ダメだこりゃ。
 この人もどうやらあっち側の住人だったようだ。

「おい、柳川。はやく行かねぇと遅れちまうぞ?」
「あ、はい。わかってますよワクさん。」
 その昔、全員集合ーーー!! だとか言っていた人…と思われる人が助手席に乗っていた。
そういや、キャベ2のCMにも出てたか?

「オイ坊主…」
「…………」
 ワクさんと呼ばれた人は柳川という刑事を指さして俺にそっと囁く。

「こいつがいる限り…日本の警察は死なねえぞ?」

 とりあえず意味不明だった。

 

「少年達よ!! 何かあったら湾岸署へ来るんだぞー!!」

 ハーハハハハ、と高笑いを残しつつ、俺達に手を振りながら去っていく柳川刑事。
 俺はいろんな意味でその顔を忘れることはないだろうと思った。




 いろんなことがありすぎて、既に朝からグロッキー状態の俺。
そんな俺に追い討ちをかけるように…

ズンジャカズカズカ♪ ズンジャカズカズカ♪

校門に入った途端、そんな感じの音楽が聞こえてきた。
いや、筆者はリズム感とかないんでこんな風に書いてあるが、サンバっぽい音楽だ。
 前を見てみると、かなり露出度の高い水着のような、金色のキラキラした衣装…
そんなもんを着た肌の黒い(おそらくサロンか何かで焼いたんだろうが)女子生徒が
俺の方に近づいてくる。でっかくて派手派手な御神輿(おみこし)みたいなものに乗って、踊りながら…。
その姿はまるでブラジルの――――

「…………」
 大体のオチがわかってしまったような気がする俺はその横を素通りする。
自分にこれは嘘だと言い聞かせながら。
…いや、しようとしたが、御神輿の上に立っている少女に止められた。

「あっ! 藤田君!! ぼあたるで!!」
 ぼあたるでとはブラジルでおはようございます、とかそんな感じの意味だ。
「よ、よう…理緒ちゃん…」
 御神輿の上に立っているのは、肌を黒く焼いた理緒ちゃんだった。
ナンデスカ? 理緒ちゃんなだけにリオのカーニバルですか?(爆)
単純と言うか。ヒネリが全くないというか…。

「どう!? これで藤田君も一発だよね!」
 嬉しそうに踊ってみせる理緒ちゃん。
「あ〜…この衣装とかどうしたの?」
「借りたの。一年分の食料費使って!!」
 使うなよ。それに一年分って…。
「で、で、どうかな?」
「いや…どう? と言われても……」
「綺麗だよ、とか美しいよ、とか可愛いよ、とか、セクシーだよ、とかでいいんだよ!?」
「………それ以外のことなんだけど…」
「うん、いいから教えて!!」

「…ヘン…だよ?」

 俺の一言で理緒ちゃんの笑顔、そして身体が凍りつく。
ちなみに凍りついた花は簡単に粉々になるんだ。
何処からともなく飛んできたサッカーボールに当たって、理緒ちゃんの身体がバラバラになる。
流石にそこから液状化して復活まではしなかったけど…。





 校門から校舎内に入ると、更に信じられない光景が俺を待っていた。

「Hi! ヒロユキ殿!!」
「………レミィ、か?」
 下駄箱で俺を迎えてくれたのは太陽のような笑みを浮かべたレミィ。
何故か忍び装束を着ている…。
「その服はどうしたんだ…」
「今、私が日本の文化勉強CHU!なのは知っているでゴザルデスか?」
「まあ…知っているけど…」
「昨日、家でDadと一緒に日本の文化の興味深いビデオを観てたんでゴザルデース!」
「ビデオ?」

「その名も世界忍者戦ジライヤ!!!!」
「…………」

 握りこぶしで熱くなり始めるレミィに俺は思わず引いてしまう。

「悪の忍軍妖魔忍軍を叩き潰すジライヤを見て…ああ!これデース!!と私は思ったのでゴザルデス!
 巨大ロボは磁雷神、必殺技は磁光真空剣・真向両断なのでゴザルデース!!! 」

「ジライヤ! 
       かぁぜにな〜れ! 
                ジライヤ!!♪」

終いにゃ歌い始めるレミィ。

 こいつ…吊るし上げて、ギミックハンドで胸揉みしだいたろか?

それはまた別の忍者少女であったりするが、この際気にしない。




取りあえず、熱弁を振るうレミィを置いて俺は二階へ続く階段を…

「―――っざけんなぁ!! このヴァカがぁぁぁぁぁ!!!」

 …上ることは出来そうになかった。

 何処の誰だか知らないが、そんな叫び声が一階廊下に木霊する。
声のした方を振り向くと誰かが誰かを蹴りつけているのがわかる。
「てめぇ、もっぺん言ってみろやコラァ!!!!」
 どごっ、という音と共に、蹴られた女子生徒らしい人物は血を吐いていた。
「ありゃまずいんじゃねーか…?」
「そうだね…」
 こんな格好なのに注目すら集めないあかりがそう言う。
「………げ」
 ボコにされている生徒と、ボコっている生徒の顔を見て、浩之は凍りついた。
何とボコにされているのは校内でもトップレベルの実力を持つと思われる葵ちゃん。
しかも…ボコっているのが校内でもトップレベルのヘボさを持つマルチだった。

「俺は昨日、金持って来いって言ったろーが!!!!」
「そ、そんな…勘弁してください…もう金なんて無いん―――」
「金がねぇだとォ!? だったら、内臓でも売―――(以下、あまりにも不穏な内容なので検閲により削除)だろうがァ!!!!」
 がすっ、という音と共に葵ちゃんの身体が弓状に曲がる。
 ああ…こんなの嘘だ。こんなのマルチじゃない…。

「ま、マルチ様…頼まれたカレーパン買ってきました…」
 そう言っておずおずとマルチの前に出る娘が一人。
 …琴音ちゃんだった。
 マルチを様付けで呼んでいるし。
「おぅ…遅かったじゃねーか、琴音ェ…!」
「は、はい…ちょっと混んでいたんです…す、すみません…」
「チッ…このウスノロが…!」
 そう毒づきながらカレーパンを受け取るマルチ。
 ところで、お前カレーパンなんて食えないんじゃ…

「あ…じ、じゃあ…私はこれで…」
「ああ、ちょっと待て」
 そそくさと立ち去ろうとする琴音をマルチが引き止める。
「代金はちゃんと払わねぇとな。」
「代金?」
「これだ。」
 次の瞬間、マルチのパンチを顔面にくらって吹っ飛ぶ琴音。
仰向けになって気絶している琴音の鼻からは、噴水のように鼻血が噴出していた。

「……見なかったことにしよう…」
 俺は一人、自分に言い聞かせるようにそう言って階段を上がる。




 それからも何かがいつもとは変わっていた。

「何で阪神はあないに弱いんやぁぁぁぁぁ!!!!! 開幕戦で17点も取られるなやぁぁぁぁ!!!」
 授業中にそう叫んで、隣りの席に座っている俺の胸倉を掴む委員長。
もう、授業なんてやってられないんじゃないか? と思ったのだが、俺以外の奴らは
平然と授業を進めている…。先生さえも。
おかしいぞ、こいつら…。
「ああ!! なんでなんや!? 藤田君、答えてみぃ!!!!」
「い、いやぁ…今年は新庄がいないからなんじゃ…」
「新庄!? アホ言うなァ!! あんな奴、大阪を、阪神を捨てた非国民やぞ!!!?」
 俺の胸倉を掴みながら、ゆさゆさと揺らす委員長。
「さ、サードとファーストを得体の知れない外国人に任せている時点で既に―――」
「阪神の外国人選手をバカにするんか、お前!!! 阪神にはバースおるんやぞ?! バース!!!」
 …いつの話なんだよ。



「よう、先輩…」
 昼休み。いつものようにベンチで弁当を食べてる先輩を見つけた。
「よぉ、浩之! 元気してたか!?(CV:クリ○ンor孫 悟○(爆))」
「………………は?」
 先輩は妙に威勢がよくなっていた。
「何だ何だ!? 呆けた顔しやがって…。は?じゃねーよ! 浩之らしくねえぞ!!?」
「いや、先輩…あの…」
「ささ、飯食って力(リキ)付けろ!!! 話はそれからだ!!!」
 そう言って、ご飯をかき込む先輩。
 見る見る間に弁当箱が空になっていく……
「かあー!! うめぇ!! おかわりぃ!!!」
「ははっ!」
 どこからともなく、大量の弁当箱を持った黒服の男が現れる。
それらの弁当を先輩はわんこそばでも食うかのように、おかわりを続ける。
どんどん空の弁当箱が重なっていく…
なんつーか、TVチ○ンピオンでも見ているかのようだ。

 ……ああ、こんなの嘘だ…




 結局その日は…悪夢のような日だった。

 だが、俺は家に帰って気付く。
 そう! 今日はエイプリルフールだったのだ!!

「HAHAHA!! みんなして俺に嘘の世界を創り上げていたんだな!!?
 そりゃそうだ! あんなにキャラなんて変わるもんじゃねえ!!!」
 それに気付いたら途方も無く可笑しかった。
 …ちょっと、無理があるような気もするが、俺は気にしない。

「はははっ! 夢オチならぬ、嘘オチってか? はははははは!!!!」

 実は今までのことは全て嘘だったというオチ。
 みんなで俺を驚かそうと芝居していたのだ!!!

「わはは! そうとわかりゃ寝よ寝よ。」

 俺は照明を消すと、心的疲労があったのかすぐに暗い意識の中に落ちていった―――






「浩之ちゃ〜ん!! 朝だよぉ!! 起きてるぅ!?」
「もう起きてるっ!!!」
 一人そう叫んで、制服と鞄を取って階段を下りる。
そこにはいつものように微笑んでいるあかりの顔が――――

「おはよう、浩之ちゃん。」
「…………」

 ――――なかった。



「さ、さ…貞○ォォォォォォォォォ!!!!!!?????」



                                                        終
        
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このSSは四月のお題「エイプリルフール」のサンプルSSです。

ども、助造です…。

ジライヤのOPの歌詞はうろ覚えです(汗)
必殺技とかは調べたんですが(^^;
貞○とかは…俺自身はリングとか見てないんでテキトーだったりします。(爆)
それにしても…もう貞○とか風化してますかねぇ…(苦笑)