そして、葵ちゃんは行く!! (十一月のお題『スポーツ』サンプルSS) 投稿者:助造 投稿日:11月1日(水)00時06分

「葵ちゃん」
「はい、何でしょう?先輩。」

風も少しずつ心地良い秋風になってきた今、
秋のエクストリーム間であと僅か。
勿論、俺達はエクストリームに向けて猛練習中だ。


「ちょっと提案があるんだけど・・・」
「提案?」
「そ、提案。」

俺は前々から葵ちゃんの体型が気になっていた。
あ、別にやましい意味じゃないぞ。

葵ちゃんの身体は、なんつーか小さいのだ。
女の子ならこれ位なのかもしれないが、
格闘技をやる身体にしてはやはり小さい。
身体が小さいと、どうしても不利になってしまう事がある。
技のリーチや、攻撃の威力の重さも身体が
大きい方が有利だ。

「そこでだな、今からエクストリームまでの一ヶ月間、 
 肉体強化をしていこうと思うんだ。」
「肉体強化・・・ですか?」
「そうだ、まずは筋トレの数を増やしたりして・・・」

葵ちゃんは初めはあまり乗り気じゃなかったみたいだが、
俺が色々説明している内にやる気になってくれた。

「よし、やる気になってくれたか!?」
「ハイ!がんばります!!」

「よ〜し!!じゃあ、まずは腕立て伏せを三分で
 120回以上こなすんだ!!」
「へ?」
何処かで聞いたことのあるような競技である。
そう、目指すはケ○ン・コスギだ!!

葵ちゃんは暫くそれが何だったかを考えていたようだが、
それを思い出すと、
「さ、三分で120回!?先輩!!そ、そんなのムチャです!?」
と言った。

「無茶・・・・?」
「そ、そうです!私にそんなの無――――

バチーン!!

無理です、と言おうとした葵ちゃんの口は
俺の平手打ちで塞がれた。

「馬鹿野郎!!」
「せ、先輩・・・?」
「先輩ではない!!コーチと呼べ!!今日から俺は君のコーチだ!!」
「へ?」

葵ちゃんは口を開けたまま俺を見ている。

「コーチだ!!コーチ!返事は!!?」
「・・・は、ハイ!コーチ!!?」

う〜ん、これだよこれ。
一度、女の子にコーチって呼ばれてみたかったんだよな〜!!


それから暫く俺と葵ちゃんの特訓の日々が続いた・・・


(ここから先はBGM:巨人の星でお楽しみください)

「よ〜し、松原!今から腕立て伏せ120回を
 三分以内で出来なければ、罰として腕立て10000回をさせるぞ!!」
「は、はいぃ!?」
「出来なかったら腕立て10000回するまで家には帰さん!!」
「そ、そんな・・・ムチャクチャです!!」
「よ〜い・・・始めっ!!」
「・・・って、わあ〜!!」

ある日は夜遅くまで腕立てをし、腕力をつけた・・・


「オラオラ〜!!さっさと登らんか〜!!」

びしぃっ!!(竹刀でたたいた音)

「あうっ!!す、すみませんコーチ!!」
「ほら、さっさとこの5kmの階段坂をうさぎ跳び(背中に米俵のトッピング)
 で登るんだぁ〜!!」
「は、はい〜!!」

また、ある日うさぎ跳びで足腰を鍛え・・・


「よ〜し!今日はプールで50000m泳ぐんだ!!」
「えぇ〜〜!!?」
「え〜?、じゃない!!さっさと泳がんか〜!!」
「ひえ〜!!」

また、ある日はプールで肺活量、忍耐力を鍛えたり・・・


「よし!今日は100mダッシュ1000本だ!!」
「ひ、ひえ〜!!」
「よ〜し・・・スタートだ!!」
「いやあぁぁぁぁ!!」

また、ある日は走りこんでスタミナを養ったりもした・・・

そんなこんなで、俺と葵ちゃんとの特訓は続いた・・・



そんなある日、俺は一人考えていた。
「むぅ・・・何故だ!!?何故あれだけやって筋肉が付かない!!」

結局、葵ちゃんの身体は大きくなるどころか
なんつーか、少しずつやつれて来ている様にも見えないこともなかった・・・

「う〜む・・・これはどうした事か・・・」

俺が一人考えていると、ふと、後ろから誰かに制服の裾を引っ張られる感触。

「ん?・・・なんだ先輩か・・・」
そこには来栖川先輩が立っていた。

「・・・・・・」
「え?筋肉を付けたいのですか?だって?ふむ・・・
 まあ、そうなんだけど・・・」
「・・・・・・」
「えっ!?筋肉を増強するいい薬があります、だって!?
 マジかよ先輩!!」
こくん。
先輩は頷いた。
「えっ?因みに今回の薬は綾香で効果が実証済みです、だって?
 そうか!それなら安心だな!!」

先輩の薬では今まで結構痛いめに遭ってきたからなぁ・・・
しかし、今回は綾香で効果は実証済みらしいし・・・
(先輩の話では綾香はその薬のおかげで筋力が付いたらしい・・・)
・・・今回は先輩を信用してみるか!


「先輩!どうもありがとうよ!!」

俺は先輩から薬の入った瓶を受け取り、
葵ちゃんの元へ向かった。


しかし、俺は薬の効果が実証されている事で、安心したこともあり、
大事な事を見落としてしまっていた・・・

瓶の裏に『注意:1000分の1に薄めて使用する事!』という
注意書きが書かれていることを・・・



「葵ちゃ〜ん!!」
「はっ!?な、何でしょうかコーチ!!?」

俺は急いで葵ちゃんにさっきの薬を丸々一本、ジュースに混ぜて飲ませた。
途中、何故かいきなり葵ちゃんの顔が苦渋に満ちた表情になったが、
なんとか飲み終え、
「あ、ありがとふごらいまふ・・・こ、こーち・・・」
と、俺に感謝の言葉までくれた。


「どうだ!?何か変わった事はないか・・・?」
俺は薬の効果を期待しながら葵ちゃんに訊いた。

「か、身体が・・・熱い・・・」
「へ?」
「力が・・・漲る!!!」

ゴゴゴゴゴゴ・・・・

「げっ!!」
葵ちゃんの身体が変貌していく。

ピカァーーーー!!!

裏山は葵ちゃんの身体から放たれた激しい光によって包まれた。
その光は目を開けている事すらできないほどの眩しさだった。

「お、おい!葵ちゃん!?何があったんだー!」

暫くしてようやく光が消えた・・・

俺が目を開けるとそこには・・・!!

「・・・・・・・」

「あの〜・・・先輩?」

「ひ、ひぃっ!?け、拳王さま〜!!!??」




今日はエクストリーム決勝戦の日。

私は難なく決勝戦に進む事が出来た。

決勝の相手はなんとあの葵!
よっぽど練習を積んできたようね!
流石は私の後輩だけはある。

葵とエクストリームの決勝の舞台で闘えるなんて
きっと燃えるに違いないわ!!

でも、いきなり決勝に来るなんて・・・
私は今大回の葵の戦いを見ることは出来なかった。
だから、葵がどれだけ強くなっているのかは知らない。
一体、昔の葵と何が変わっているのか・・・
私はそれを知りたくもなった。


「え〜、長らくお待たせしました!只今より、
 エクストリーム高校生女子の部、決勝戦を行いたいと思います!」

アナウンスが入る。
会場の盛り上がりは最高潮に達した!

「赤コーナー・・・前年度エクストリーム女子チャンプ、
 そのプレッシャーにも屈することなく、再び彼女はこの
 決勝のリングに帰ってきました!
 日本高校女子格闘界、いや、日本女子格闘界の歴史を変えた女!
 くる〜すがわ〜、あや〜〜か〜〜〜!!!!」

会場に綾香コールが起こる!
綾香はコーナーに背をかけながら
葵の姿を待つ。
「さぁ、葵・・・どれだけ強くなったのか
 見せてもらうわよ・・・!」
そう言って綾香は舌なめずりをした。

しかし、そんな綾香の好戦的な考えも
長くは続かなかった・・・

「青コーナー・・・今大会でエクストリーム初出場、
 数々の強者達を薙ぎ倒し、決勝まで登りつめて来た
 正に、今大会の台風の目!
 まつ〜ばら〜、あお〜〜い〜〜〜!!!!」

葵がゆっくりと会場に入って来る。
私はその姿を見て唖然とした。

「ら、ラ○ウ!!?」

私の第一印象はそれだった。
あの可愛い葵がどう見ても
いかつい世紀末覇王にしか見えなかったのだ!
ただし、顔は昔の葵のそれなのだが・・・

この前まで、ただでさえ体が小さかった葵が・・・
どうやったらあんなイカれた体つきになるのよ!!?

私はパニくっていた。
試合前なのにレフェリーに「来栖川、やれるのか!?」と、言われたほどだ。
勿論、私はダウンなどしてはいない。
一応、「や、やれます」と答えておいたが、
私の心の過半数は、葵と闘うのを拒んでいた。


カァーン!

第一ラウンドのゴングが鳴り響く。

「・・・綾香さん・・・」

今まで一言も口を開かなかった葵が私に話しかけてきた。
これだけのごつい体つきをしていながら
声は昔の葵の可愛い声という事が、
私をさらに恐怖の底に陥れた。

「な、何?」
「ラオウは愛するユリアを自らの手で殺すことによって
 無想転生を習得しました・・・」
「??!?!」
「私はあの日、藤田先輩を滅殺しました・・・そのことによって
 手に入れたこの無想転生・・・」

「綾香さん・・・あなたの生命の炎はどんな輝き
 を見せてくれるのでしょうね?」

葵が北斗七星の形を描くように動き始める。


その日、

私は星になった―――――

 
                          完   
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今回、イベントSS初挑戦ながら、サンプルSSを
書かせていただいた、助造です。

お題は「スポーツ」なのですが・・・どこがスポーツなんだ?(爆)
え〜っと・・・こんなんでサンプルになるんでしょうか?(汗)
初めはシリアスで行こうかな、とも思っていましたが、
自分はシリアスが書けない事に気付き、ギャグになりました。

どうぞこれからもよろしくお願いします。
最後になりましたが、こんな拙い作品を最後まで読んでくださり、
ありがとうございますです。