「さて、ここで不連続ドラマの時間でーす」 「うわぁー、ギリギリじゃない」 「今月は忙しかったらしいです」 「アルバイトに、風邪に・・・」 「特にアルバイトは初売りと新モデル発売」 「風邪は年末から今だっ、完治していないらしいわね」 「不健康な生活していますからね」 「そんな事言ってたらこれ読んでいる人ほとんどそうでしょ」 「・・・、ではどうぞー」 「うわっ、逃げたぁ」 1月1日 「ねむい・・・」 「あと3時間ほどの辛抱です」 「さっ。3時間ー。うにゅう、もうだめだよ。おやすみなさい・・・」 「お嬢様、起きてください」 「だいじょうぶ、おきてるよ。イチゴジャムがあれば三杯はたべれるよ」 「寝てますね。微妙にキャラが違いますよ」 「だいじょうぶ、さくしゃさん、私のキャラかくていしてないから」 「起きてくださいー」 「だいたいむちゃすぎるよ。深夜に鐘を素手で108回叩いて、そのままランニングで海まで行って初日の出見て、その上、人があふれている神社に分け入って初詣で。それも途中でごろつき、酔っ払いをどついて」 「毎年の事ではないですか」 「普通の小学生は元日にそんな事しないよ」 「元日でなくてもしないと思いますが」 「でしょ、セリオお姉ちゃんからも言ってよ」 「十数年ずっとやっていますから、いまさら言っても無駄だと思います」 「私が生まれる前から?」 「はい、そうです・・・ さすような寒気の参道を歩いている。 「っだめだ、もう、眠い」 目つきの悪い少年がさも眠そうな目をこする。 「まだ本殿も見えてないじゃない」 少女が少年のほうを向く。 「頼む、寝かせてくれ」 懇願するように少年−浩之−が言う。 「駄目よ、浩之がいやだと言うからニューイヤーパーティすっぽかしたのに」 「確かに俺は『そんなもん日本らしくねえ。日本人なら紅白見て、除夜の鐘聞いて、二年参りして、初日の出見て、初詣でに行ってその後は・・・」 途中で言いよどむ。 「その後は、ってその後何するつもり?」 少女、いや、格闘女−綾香−が睨み付けるように詰問する。 「いや、別に。ああ、そうそう新年会だ」 「そう? ともかく、その通りにしてるだけじゃない」 「だからってな、人寂れた廃寺で除夜の鐘を素手でついて、そのまま近くの山の祠かなんかに二年参りして、そのうえ、ヘリで海岸まで乗り入れて初日の出見て、そして今度は伊勢神宮までか」 それだけやればえらいはずだろう。眠いはずだろう。 「初詣でといったら大神宮でしょ」 「・・・」 もう一人の少女−芹香−が肯きながら周りにも聞こえないような声で言う。 「その通りです。って先輩誰にそんな事吹き込まれたんだよ?」 「・・・」 芹香が本を差し出す。あっ、これは例の・・・。 「『正しい日本の正月の過ごし方』民明書房刊か・・・。おい、セリオ」 呆れつつ。後の来栖川電工のXナンバー付メイドロボを呼ぶ。 「はいなんでしょう」 背中に彼女の姉を背負いながら進行方向に向いていた顔をこちらに向ける。 どうやら彼女の姉−マルチ−は初ブレーカー落ちを体験しているようだ。 「これはお前か?」 件の本をかざして浩之は聞く。 「いえ、違います」 「じゃあ、馬軍団か?」 確かに、彼女でなければ、彼女らの製作者、通称『長瀬主任と馬軍団』の可能性が高いであろう。 「それでもないかと思われます」 馬軍団の関与を否定する。 「主任たちは右翼でも左翼でもありません。あの人たちは好きな事ができれば政治形態など気にしていません」 「そりゃそうよね」 綾香が相槌を打つ。確かに研究ができて、それが自分たちを満足できれば良いって感じだ。 「まぁ、ともかく。俺達は皇族や小泉さんじゃないんだからわざわざ伊勢まで・・・」 「それじゃ、皇居?」 「いえ、熱田神宮では」 「・・・」 「姉さん。高野山は違うと思うわ。むしろ山篭りがてらなら熊野三社や出羽三山でしょ」 「靖国神社ですか?」 何時の間にかマルチまで復活したようだ。 「もういい、それにしてもこんな田舎によくもまあ、こんなに人が来るもんだな」 辺りを見回す。人、人、人でいっぱいだ。 「当然よ。日本の神様の総元締めだもの」 「総元締めって、全ての神様が高天原系の神様じゃないだろ」 「そうですね。出雲大社をはじめ結構ありますね」 「所詮、今の世の中じゃ、そんな事気にする人なんかごく少数よ」 「まあ、そうだろうな」 「神の国って言ったくらいで叩かれるくらいだもの、何もわかってないわ」 「綾香様、問題発言です」 「いいの、いいの」 「おっ、そろそろだぞ」 階段を登り、本殿前に出る。 「2000年近く建っているのに、まだ新しく見えますね」 社殿を見て、マルチが言う。 「これが神のご加護です。ここの杜は外界の時の流れを遮断し、独自の時を保っています」 セリオが答える。 「そうなんですか。でもそうならば外に出たとき」 「はい、数年は経っているでしょう」 マルチ、何かを考えて。困惑顔になる。 「こらこら、嘘を教えない」 マルチ、混乱状態に成りかけていたが、ほっとして、落ち着く。 「・・・」 「ここは20年おきに建替えているのですか」 「ほら、そこに空き地があるだろ」 左側の空地を指差す。 「はい」 「前はあそこに建っていたんだ」 「そうですか」 参拝が終わって。 「何か願い事した?」 参道を下りながら綾香が聞く。 「別に良いだろ。そういうお前は?」 「べ、別に何も」 「先輩は?」 「・・・」 微笑みながら答える。 「人に言ったらかなわなくなりますから、か。そう言えばそんな事言ってたな」 「それじゃあ、何で私のを聞いたのよ」 「そういう綾香こそ」 「私は多分かないませんから、別に言ってもいいです」」 セリオがいきなりそんな事を言い出す。 「思ってればいつかはかなうと思いますよ」 「いいえ、『綾香様が今年こそはおとなしくなりますように』なんて無理でしょう」 「そうだな」 浩之も同意する。 「ふーん、そう、そんな事思ってたの?」 あっ、綾香の後ろからオーラが燃え盛るように出ている。 「あ、ははは。冗談だよ、冗談」 「そうですよ。そんな些細な冗談で怒るから・・・」 「ばっ、馬鹿。それ以上言うなセリオ」 「覚悟は良いかしら」 6時間後 来栖川電工HM研 「何でこんな正月から出勤しなくちゃならんだ」 「何か言った?」 「いいえ、何も」 ・ ・・てな感じでしたね」 「海岸までランニングが無いじゃない」 「正月太り対策では?」 「そんなぁ、食べる前に走ったってしょうがないじゃない」 「では忘年会太り」 「なるほ・・・」 「どうしたのですか」 「うしろ」 「セリオちゃ−ん」 「どうしましたか綾香様」 「何言ってるかな」 「別に、事実を脚色無く簡潔に言っただけですか」 「そう、正月草々、長瀬さんにまた迷惑かけるわね」 「ほんと、迷惑な方ですね」 「覚悟は言いかしら?」 「いいえ、こんなところで・・・」 「問答無用」 「こんなところで・・・、あっ、栗きんとんまだ残ってる」 「おーい、お嬢ちゃん、そのままそこにいたら危ないんじゃないか?」 「いいえ、なれてますから」 「作者さんからAIAUSさんに弱気な事言ってすみませんということです」 「・・・」 「それではまた次回に」 「・・・」 -----------------------------------------------------------------------