セリオファイル14 投稿者:ジーク・リーフ 投稿日:12月30日(日)13時09分
 「明けましておめでとうございます」
 「今年はよい年になるといいですね」
 「あれ、ちょっと投稿日見てよ」
 「あれ、12月30日ですね」
 「まだ新年じゃないわね」
 「そうですね」
 「こんなぎりぎりに」
 「そうですね」
 「で、今回は?」
 「落し物、だそうですよ」
 「落し物か。あんたはとろいからしょっちゅうありそうね」
 「そんなことないですよ」
 「ほんとぅ?」
 「そういえば、この前判子落としたとか言ってませんでしたか?」
 「そ、そんなこと・・・。それよりさっさと始めましょ」
  


 12月30日
 広い部屋、多分居間だろう。にて掃除をしている二人。
 「しまったぁー」
 「どうしました?」
 「学校で落としちゃったかな」
 「何を落としたんですか?」
 「カッターナイフ。お気に入りだったのに」
 「綾香様の娘でありながらなんと情けない」
 「お母さんは忘れ物とかしなかったの?」
 「いえ、よくやってましたが。例えば・・・

 
 「なんで私がこんなことを・・・」
 呟いてみてもなんともならないことはわかっています。
 「関節ユニットの負荷がかなり大変な数値になってます」
 どうしてこんな事になったんでしょうか。
 「ごめんなさいね、セリオちゃん。綾香の落し物持ってもらって」
 「皆さんのお役に立てることが私にとっての喜びですから」 
 「本当に大丈夫? 無理しなくてもいいのよ。悪いのは綾香だし」
 そうです。悪いのはすべて綾香様です。トラップを張って執事長に怒られたのもそうですし。
 「それにしてもこんなもの持ってくるなんて、綾香らしいわよね」
 「はい、そうですね」
 まったく綾香様らしいです。学校にダンベルなんて。
 「授業中にこんなことやってても私よりも成績が良いなんて・・・」
 「まったくです」
 綾香様の頭の構造を一回見てみたいものです。それを次の妹たちに・・・。
って、そんなのを参考にしたらみんな格闘用ロボットになります。そうしたらリュウケン様もできるかも。
 「セリオちゃん?」
 「あっ、はい、なんでしょうか」
 「いきなりぼーとしちゃって。まさか今流行のニムダとかメリッサとかに罹ったのかと思っちゃった」
 「大丈夫です。そんなものに罹るほど軟なOSではありません」
 ゲイツ窓なんか軟なOSなんかと一緒にしないでください。
 「私、ここで向こうに渡らないといけないけど」
 「私は向こうのバス停で待ち合わせしていますので」
 「本当にごめんなさいね。本当なら私が持っていきたいけど、いや、綾香に取りに来させるべきかな」
 「私からちゃんと渡しておきますので」
 「お願いね。また今度何かおごるから」
 「お気持ちだけでうれしいです」
 「それじゃぁ」
 「お気をつけて」
  
 さて、待っている間何所に置いておきましょう。
 「セリオさん」
 「マルチさん」
 「それはどうしたのですか?」
 「綾香様の落し物です」
 「そうなんですか。で、これは何ですか?」
 「ダンベルといって、筋力を鍛えるための道具です」
 「わぁ、それはすごいですね。で、どうやって鍛えるのでしょうか?」
 「これは重い金属塊で、これを持上げたり、戻したりを繰り返すことで鍛えるそうです」
 「セリオさん、そんな重い物を二つも持って大丈夫ですか? 私が一つ持ちましょう」
 「いえ、大丈夫です」
 「たまには私にお姉さんらしいことをさせてください」
 いまさらお姉さんぶってもしょうがないと思いますが。多分無理だと思いますけど。
 「それでは、はい。気を付けてくださいね」
 「こ、これは重いですね。あっ」
 バキ、ゴーン
 「て、手が外れてしまいました」
 「だから気をつけてと」
 「ど、どうしましょう」
 「とりあえずバスを待ちましょう」
 「そ、そうですね。こういう時こそ落ち着いて行動しないといけないですね」


 ・・・それから後が大変でした。本当ならその日、七研大クリスマスパーティのはずだったのですが」
 「ちょっとまって。それじゃあ何が、お母さんの娘のくせに情けない。なの?」
 「カッターを使うことです」
 「やっぱりそうきたか」
 「綾香様の娘なら手刀でスパスパと」
 「それじゃあ私なら」
 「素早い拳によるかまいたち現象でスパパと」
 「そんなのできるか!」
 「あっ、綾香様。障子紙はちゃんと買ってきましたか」
 「はい、これでいいんでしょ」
 「お母さん」
 「学校にダンベル持っていってたの?」
 「セリオ。あんた言ったわね」
 「私だって、あのときまで知りませんでしたから」
 「それについては何度も謝ってるじゃない」
 「あの時、私やマルチさん、馬軍団が苦労しているときに綾香様は」
 「それ以上は言わないで」
 「えっ、なになに。教えてよ」
 「ちょっと、恥ずかしいからやめてよね」
 「恥ずかしいようなことしたのかぁ」
 「さぞ楽しかったのでしょうね」
 「もう! やめてよね」
 「教えてよぉ」
 「どうしましょうか」
 
  

 「で、ちゃんと年末の生活費は確保していますか?」
 「あっ、忘れてた。だって銀行に行くひまもないもん」
 「今の全財産は?」
 「ハンバーガー50個分」
 「七千円強ですか。一応銀行が開くまで生活できますね」
 「平日半額の」
 「・・・」
 「貸して」
 「いやです」
 「貸して」
 「いやです」
 「私が飢え死にしても良いの?」
 「パンの耳でもパスタでも買えます」
 「ひどい」
 「知りません」
   
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