部屋を明るくしてディスプレイから離れてみてネ。良い子とお姉さんとの約束ヨ 「まだかなぁ」 少女が一人、雨宿りをしています。 「朝言われたのに忘れるなんて・・・」 彼女の家の方角から誰か来ます。 「セリオお姉ちゃん、とマルチちゃん?」 歩いてきたのは仲良く傘を寄せ合って歩く姉妹みたいです。 小学生の妹を迎えに行った帰りでしょうか? 「ナレーターさん?」 はい、なんでしょう? 「もう誰か言ったけど」 あっ、本当だ。 「私、小学生では無いですけど」 あっ、マルチまで。 「ともかく訂正してください」 わかしました。 やってきたのは来栖川のおとぼけ、おさがわせHM姉妹。 「後で覚えておいてください」 いや事実を・・・。 「お姉ちゃん、脱線してるよ」 そうそう、話を本線に戻すよ。 「命拾いしましたね」 「ありがとう、お姉ちゃん』 「今日は雨が降ると言ったはずですが?」 「うっ、うぐぅ」 「セリオさん、話しは歩きながらでも良いと思いますけど」 「そうですね。はい、どうぞ」 左手に持っていた和傘みたいな傘を渡す。 「珍しい傘だね。ありがっ」 ゴキッ、ゴンッ。 「ぅぅぅぅ」 「どうしました?」 「お姉ちゃん、この傘・・・」 「あっ、私拾います」 マルチが落ちた傘を拾おうとする。 「はわわわ、重くて持ち上がらないですぅ」 両手で抱え込むようにしているが一向に動かない。 「あっ、間違えました。これは綾香様の鉄傘でした」 「お母さんの傘?」 「はい、そうです」 右手の開いた傘を渡し、鉄傘を拾って広げる。 「これはかの豊臣秀吉が戦場にて茶会を催すときに使ったと言われる由緒正しいものでして」 「よほど手入れがよかったんでしょうか? 錆一つ無いですね」 マルチが感心して傘を見る。 「・・・そうですね」 「うそでしょ。そんな大昔の傘が錆びなくて残ってるわけ無いもん」 セリオ、罰の悪そうな顔している。 「さすがですね。そう、これは私の初のボーナスで作ってもらった綾香様特訓用の特注品です」 「お母さん、喜んだの?』 「綾香さんは声が出ないくらい感動してました。そうですよね」 「はい、それはもう涙を流して使っていただきました」 「絶対違うと思う」 うん、そんなの普通に使えるのは前田慶治ぐらいのもんだと思う。綾香ならそのうち使える気がするけど。 「拳銃の弾も跳ね返しますし、車が突っ込んできても潰れません」 「それはすごいね」 「綾香さんがこれを最初に使ったのはいつでしたでしょうか?」 「あれは確か、高三の梅雨の時でした・・・。 『まったく、冗談じゃないわよ』 『どうしたんですか?』 『あっ、セリオ聞いてよ』 『聞きたくなくても無理やり聞かせるつもりだと思いますのでおとなしく聞きましょう』 『何か余分な事いったような気がするけど?』 『気のせいでしょう』 「実はね』 要約すると、お気に入りの傘は盗られ、ほかの傘も傘差し運転の自転車に引っ掛けられ壊れてしまったという事でした 『それならあの傘を使えばよろしいかと』 『あれを使うの?』 『はい。あれならば好き好んで盗む人はいないでしょうし、自転車どころか車さえ耐えることができます』 『けど,待てるの?』 『綾香様の怪力なら十分可能です』 『・・・セリオ、ありがとうね。頭なでてあげるわ。私の怪力で』 『いえ,今から浩之さんにやってもらいにいきますので結構です』 『遠慮しなくてもいいのよ』 『いえ,お忙しそうですし』 『セリオさーん,そろそろ行きま・・・』 『ごめーん,マルチ。セリオこれから私と用事あるから』 『いえ,そんな約束はありません。マルチさん、お待たせしてはいけないのでさっさと行きましょう』 『はわわわ、なんか怖いです。ふぅ』(バタン) 翌日から使うことになったのですが、あまりに重過ぎて傘立て突き越して床に刺さるわ、エレベーターは動かないわ。大変でした」 いつもながらあきれながら聞いてますね。 「で、どうしてこんな傘が出てきたの?」 「綾香様,今日は忘れたようですね」 「まだ使ってるんですかぁ?」 「はい,テロ防止のためだと思います」 「お母さんなら傘もってない時のほうが強いと思うけど」 「そうですよね」 梅雨の日の一時でした。 「あれ,傘忘れたかしら」 「・・・」 「そう,あの傘。まぁ、途中コンビニで買っていけばいいか」 「・・・」 「私の傘を貸しましょうか、って。いいわ。姉さんの傘何か怖いもん」 「・・・」 (あれは由緒正しい唐傘お化けなのですが。綾香にはわかりませんか) ----------------------------------------------------------------------- 雨はいやだよ。家の隣の川崩れてきてるし。