部屋を明るくしてディスプレイから離れてみてネ。良い子とお姉さんとの約束ヨ 「スポーツの飽きですか?」 「スポーツの秋だよ!」 「スポーツの秋ですか。スポーツの秋と言うと綾香様の独占状態でしたからね。 食欲はそれに伴いあったようなものですし、 あの人に芸術や読書なんか似合いませんでしたからね」 「あはは、私もそうだよ」 「いえ、ご謙遜を。あの人に比べればかなり読書や芸術の秋も満喫してますよ」 「けど、なんか難しい本この前読んでたけど」 「今は、というよりお嬢様が生まれる数ヶ月前くらいから読むようになったんです」 「へぇ、どうして?」 「妊娠中に激しい動きをすべきでない。と皆で止めたんです」 「は、は、は、おかあさんらしいね」 「それまでは読書といってもスポーツ関係の本しか読まないし、 芸術鑑賞でも確かダビデ像を見たときですかね。 その時も筋肉の作りにえらく関心していましたし」 「お母さんらしいと言えばお母さんらしいね」 「それでスポーツの秋でしたね。確か話は?」 「そーだけど」 「一時期、綾香様もある壁にぶち当たったんです。 綾香様は基本は空手でしたので、対戦相手によっては苦戦を強いるのもしばしば。 そのため世界中のスポーツをひとまず研究し、試合に生かす努力をしたんです」 「それで本を読んで研究していたの?」 「それもありましたけど、もっと良い方法があるのでそれを利用していました」 「それって道場破りで実戦習得。てなわけないよね?」 「それは仕上げ段階で、覆面してやってました」 「おかあさんって・・・。それじゃあ何やったの?」 「私達の姉妹はいろいろな事をやる事ができます。それがヒントです」 「そーか、サテライトサービスか」 「その通りです。私にいろいろなスポーツのデータをダウンロードさせ、 それを実行させる、と言うよりエミュレートさせて、それを研究なさってたんです」 「そうなのかぁ、知らなかったなぁ」 「そのプログラミングのために世界中にスタッフの方を派遣させました。 そのおかげで私の妹たちは万能機と呼ばれ、多くの方々にご愛顧を賜る事ができました」 「道理でスポーツのデータは多いはずだね」 「他にも修行中に教わった事から、各国の習慣や地方料理等もデータベース化する事もできました」 「これもお母さんのおかげなの?」 「そうとも言えますね。 しかし我々は忘れてはなりません、その偉業のために草葉の陰に倒れる事になった方々を」 「草葉の陰? うそだよね、せりおおねえちゃん」 「何人か消息を絶っている方もいます。 中には門外不出と言う事で出れず連絡の取れない方もいるかもしれませんが、確認のしようがありません。 今のお母様の仕事は知ってますか?」 「うん、一応聞いた事はあるけど」 「この方々の捜索もその仕事に入ってます。よくある出張は捜索活動のためなんです」 「お母さん大変だね。まぁ、自業自得かもしれないけど」 「ただいまー」 「あっ、お母さん帰ってきた」 「そのようですね」 (トタトタ) 「お帰りなさいませ」 「おかえり―、今日もお仕事大変だったでしょ。今お茶もって来るから」 「珍しいじゃない。どうしたの、なにかあったの?」 「セリオお姉ちゃんからお母さんの仕事の話を聞いてね。自業自得だと思うけど大変だろな―って」 「セリオ、まさかあの話したんじゃないわよね?」 「えっ、どういうこと?」 「どうせ私が消息不明のHM開発スタッフを捜索するって話でしょ」 「うん、そうだけど」 「やってないわよ、そんな仕事(今は)」 「そうでした。2、3年前に終了したんですよね」 「2、3年前って、確かワールドツァーとか言って世界中回ったときぐらい?」 「その時ですかね。文字通り無差別格闘ツァーだったそうですね」 「何で知ってるかなぁ。あっ、そうかあのときセリオタイプ連れてたからか」 「はい、妹から教えてもらいました」 「そうかぁ。あの時は大変だったからね。砂漠の古代格闘技の王とか密林に潜む狩猟者とか、 いずれも一子相伝でスタッフを手放してくれそうに無い人達だったわね。 ほんと、文字通り死闘だったわ」 「そのおかげで私達のレパートリーも増えましたし」 「・・・」 深夜 「あっ、肝心な事忘れてた。 スポーツの秋だから何かスポーツやりたいから教えて、と言うつもりだったのに」 ----------------------------------------------------------------------- うーん。スポーツの秋と言う感じじゃないかな。これじゃぁ。