3月の花嫁(ウエディングマーチ) (「3月のお題:マーチ」サンプルSS) 投稿者:夏樹 投稿日:3月3日(土)00時59分
 3月、それは別れの季節。新しい場所に向かうための、準備のための別れだが、それを
悲しむのは悪いことではない。いや、悪いことだと言われても別れる者達は悲しむしかな
いだろうが。
 別れを悲しむ、先輩と後輩。それが付き合っていたりしたらなおさらだ。だが、それは
3月の学校ではよくある事情、よくある風景。
 そしてそこも、そんなありふれた風景だった。
 時期はもう3月の半ば、3年生はすでに卒業式を終らせて、今は校舎内には3年生は一
人もいないはずだったが、たった一人だけいた。
「で、今日は部室に残った機材を運び出すんだろ?」
 こくん
 来栖川芹香。来栖川グループの会長の孫であり、4月からは一流国立大学への進学が決
まっている。つまりもう学校は卒業しているので、ここの学校の生徒ではない。
 が、芹香は律儀にも今までの通りの制服で学校に来ていた。確かに私服だと目立つので
制服で来るのが楽なのかもしれないが、芹香には学校に私服で、という概念がなかったの
かもしれない。
「もちろん俺は手伝うつもりだけどいいよな、先輩」
 こくん
「…」
 芹香は一度頷いてからいつもの小声で何かを言った。
「へえ、俺にあげたいものねえ」
 こくん
 正直、芹香が浩之のためにすることは往々においてあまり良い結果を生んだことはない
のだが、浩之はそれでも嬉しかった。
 2人は見慣れた部室の前まで来た。芹香が卒業して、オカルト研究会は廃部となる。部
員が芹香しかいなかった上、芹香は自分がいなくなった後まで部活を存続させることにこ
だわらなかったのだ。だから浩之もそれについては何も言わなかった。
 4月からは、このわずか1年ばかりの思いでのつまった部室は、違う部活の部室となっ
て、おそらくにぎわうことだろう。しかし、それはまた当然のことなのだ。
「でも、そんなに持って帰るものが沢山あるのか?」
「…」
「あ、やっぱりあそこにあったものってほとんど先輩の私物だったんだ」
 こくん
 部員が一人しかいないのだから、部費どころかまず部室があること自体がおかしいのだ
が、そこは来栖川のお嬢様ということを活用したらしい。
 部屋の中は、騒然としていた。だいたのものは片付けられて、ダンボールの中につめら
れている。オカ研の部室だったという面影はもうそこにはない。
「荷物って後これだけ?」
 こくん
 芹香はほとんどの荷物はもう運び終えた後だと浩之に説明して、残りの荷物を片付け始
めた。
「あ、先輩。俺も手伝うよ」
 浩之はゆっくりと動く芹香のかわりにてきぱきと片付けていく。もうほとんど片付けて
あるので、終るまでにさして時間はかからなかった。
 終ってみればダンボール二つ。それがこの部室の最後に残った思い出の量だった。
「…」
「ああ、気にしないでくれよ、先輩。手伝うって言ったのは俺だし、それに…」
 浩之は、まじまじと芹香の姿を見た。
「もう一度、先輩の制服姿を目に焼き付けときたいしな」
 そう浩之に言われて、かすかにではあるが芹香はぽっと顔を赤らめた。
「本当はもう見ることはないと思ってたんだけどな、先輩の制服姿を見れただけでも今日
学校に来たかいがあるってもんさ」
 浩之は芹香と付き合っている。他人には秘密にはしているので、芹香が卒業してしまう
といつも会うというわけにはいかなくなる。まして、制服姿の芹香は、二度と見ることは
ないだろうと思っていたのだ。
「…」
「え? ならまた着ます? はは、いや、そこまでしてくれなくっていいって。俺は先輩
と一緒にいられるだけでも幸せなんだから」
 本当に、この時が止まってくれれば、と浩之は思っていた。このまま、ずっと芹香と一
緒にいれたら。
「このまま、ずっと先輩と一緒にいたいな…」
 ごく純粋な気持ちだった。声に出したのも、別にそれでどうしようと思ったわけではな
かった。
 芹香は、浩之のその言葉を聞くと、どこからともなく一本の怪しげな小瓶を取り出した。
「…」
「え? 一生離ればなれにならない薬?」
 こくん
 芹香の愛情表現を浩之はよく知っている。この薬を浩之に渡そうとしているということ
は、つまり…
 先輩は、俺とずっと一緒にいたい…
「先輩…」
 浩之は思わず芹香を抱きしめた。芹香は、それに体をゆだねる。
「この薬、俺が飲んでいいのか?」
 こくん
「俺は一生、先輩を束縛するぜ。それでも?」
 こくん
「…浩之さんと、いつも一緒にいたい…」
「先輩…俺も、ずっと一緒にいたい」
 浩之は自分の胸から芹香を解放すると、手を出した。芹香もそっとその小瓶を持った手
を出す。浩之は、泣き笑いのような顔をして小瓶を受け取り、一気にそれを飲み干した。
 それは、儀式だった。神聖な、愛する者と愛する者が誓いをたてる、神聖な結婚式。
「…」
「…」
 これと言った変化はなかった。しかし、2人の気持ちは十分伝わっていた。それで2人
には十分なのだ。
「さあて、ならさっさとこの荷物を外のじじいの所に持っていこうぜ」
 そう言って荷物に手を伸ばそうとした浩之の腕に、芹香が腕をからめるように抱きつく。
「…」
「いや、確かに一緒にいたいって言ったけどさあ。片手じゃあこのダンボール箱運べない
んだけど…」
 芹香は残念そうな表情をしながらも、浩之から手を離そうとした。
「…」
「ん? どうしたんだ、先輩?」
「…」
「は?」
 浩之は、芹香の言葉の意味が瞬間には理解できなかった。
「手が離れない?」
 こくん
 それでも芹香はかあくまで落ちついていた。


「ぬかった、まさか薬の効果がコレとは…」
 きっとおまじないの薬だと思っていたのが大きな間違いだった。それは本当に「離れら
れなく」なる薬だったのだ。
 浩之は何とか外そうと試みるが、いくらやっても無理だった。芹香の悪ふざけかとも思
ったが、芹香の非力さではどんなにがんばっても浩之が外せないということはなかろう。
「…」
「いや、もちろんこれはこれでうれしいんだけどさ…どうやってダンボール箱運ぼう?」
「…」
「じじいを使うのはいいが、この状況はどうやっても俺の命が危ないのだが…それに、こ
のままだと、ほら、トイレとか、お風呂とか…」
 それを聞いて芹香は顔を真っ赤にした。もしこの薬を芹香が故意に作っていたとしたら
マヌケな話ではある。
「だから、さ。この薬の効果を消す方法とか教えてくれるとありがたいな、先輩」
「…」
「何だ、解毒薬は家にあるんだ…解毒薬!?」
 浩之はあわててあいている手の方で口を押さえた。解毒薬ということは、浩之が飲んだ
のは毒ということになるが、それについては関わらない方が賢明だと判断したのだ。
「い、いや、まあいいか。そうか、家に解毒薬…おいおい…」
 その言葉が意味するものは、芹香と腕を組んだまま少なくとも学校の中を通り抜け、セ
バスチャンの脅威を一度は受けなければならないということだった。
「…先輩、携帯電話持ってるか?」
 ふるふる
「…まあ、そうだろうなあ」
 浩之も最近の高校生にしては珍しく、携帯電話を持っていない。つまり、電話をして助
けを呼ぶということができないのだ。
 となると、覚悟をきめるしかなかった。幸い、芹香は卒業しているし、見られてもそこ
まで変な噂が流れることもないと浩之も思っているが、問題はセバスチャンだった。
 まあ、一発ぐらいは殴られてやるか。浩之は覚悟をきめた。
「じゃあ、先輩。このままのかっこで校門まで行かなくちゃいけないが、かまわないよな?」
 こくん
「よし、じゃあ行こうか、先輩」
 浩之は、別に悲観そうな様子もなく扉に手をかけた。
 むしろ芹香に腕を絡められているのはうれしい状況であったので、反応としては普通だ
ったのだが、これから起こる問題に、まだ浩之が気がついていない証拠だった。


「ひ、浩之ちゃん何やってるの!?」
 第一発見者となったのはあかりだった。
 あかりはその光景にかなり驚いているようだったが、浩之にとっては一番この場合扱い
やすい人物でもあった。
「ひ、浩之ちゃんのフケツ〜ッ!」
「待て、あかり!」
 よく分からないことを言って走り去ろうとするあかりを、浩之は呼び止めた。
「落ちついて深呼吸しろ!」
「え? あ、うん、す〜、は〜、す〜、は〜」
「落ちついたか?」
「う、うん、一応」
「とりあえず今俺はこまっている。あかりに助けて欲しいんだ」
 浩之は手早く今までの状況をあかりに説明した。
「えーと、芹香先輩が私の浩之ちゃんを放してくれなんだね」
「どこをどーやったらそう理解できるのかは分からんが、とにかく困っている。あかり、
携帯とか持って…ないよなあ」
「うん、でも、とりあえず浩之ちゃんと芹香先輩を引き離せばいいんだよね」
 そう言うとあかりは後ろから浩之と芹香の体を引き離そうと手をかけた。
「うーんっ!」
 あかりは力のかぎり2人を引き剥がそうとしたが、どんなに力を入れてもまったく外れ
る様子はなかった。
「俺でもできなかったんだぜ、あかりの非力な腕力でどうにかなるわけねーだろ」
「ほら、浩之ちゃん女の子に甘いから」
「…それは先輩が故意に俺にひっついて離れないように聞こえるが」
「私はそう思ってたんだけど…ほんとに外れないね」
「何かお前性格変わってねえか? まあ、無理なら仕方ない、誰か助けを呼んできてくれ」
「うん、それがいいみたいだね…て…あれ?」
「どうした?」
 あかりがいつまでたっても助けを呼びに行こうとしないので、浩之は不信がってあかり
に訊ねた。
「何か、手が離れないんだけど…」
「なにぃ!?」
 浩之と芹香の肩に手をかけた状況から、あかりの手はうんともすんとも動かないらしい。
あかりが嘘をついていないのは、長年の付き合いにかけて間違いなかった。
「つまり、あの薬は不特定多数にも効くってことか」
「…」
 そうなりますね。と芹香はやはりとても落ちついた様子で言った。
「勘弁してくれ…だいたい、俺は非常に嫌な予感がするんだが…」
 悪い予感はほぼ必ず的中するものである、それが世の中と言うものだった。


 仕方なくひょこひょこと3人で歩いていると、次に目の前に現れたのは志保だった。
「あははははっ、ヒロ〜、その格好何やってんの〜?」
 志保はそのおかしな格好でひっついた3人を見て大笑いをする。
「よりにもよって次に会うのがこいつとは…」
 笑われるのもむかつくが、とりあえずこんなやつでも何かの役にはたつかもしれないと
思って、浩之は言い返すのを抑えた。
「あれ、あかりも一緒なんだ。そんな格好で何やってるのよ」
「うう、手が離れないの」
「へ? 手が離れない?」
 浩之はそこでピンときた。
「志保、ちょっと後ろからあかりをひっぱってくれねえか?」
「何よ、手に瞬間接着剤でもつけたの?」
「あ…」
 あかりが何かを言おうとする前に、志保はそこまで疑問にも思わずにあかりの肩に手を
かけて、後ろに引っ張る。
「あれっ? あかり、力入れてない?」
「入れてないけど。ねえ志保、志保ももしかして離れなくなってない?」
「へ?」
 志保はあかりの肩から手を離そうとして、そして失敗した。
「あれ、ちょっと、ねえ、手が取れないんだけど」
「ひっかかりやがったな、志保! お前もあきらめて学校中に恥をさらすんだな!」
「ちょ、ちょっと、ほんとに外れないじゃない、何よこれ!」
「ふふん、人の不幸を笑った罰だ、とくと思いしれ!」
 浩之はまだがんばってあかりの肩から手を外そうとしている志保の姿を見てせせら笑っ
た。
「ねえ、浩之ちゃん。志保って携帯電話持ってたと思うけど…」
 志保はがんばって手を外そうとしているが、やはりどうやっても外れない。それを後ろ
目に見ながらあかりはつっこんだ。
「まだ俺の片手は開いている。志保、離れたかったら携帯を貸せ」
「でも、志保の携帯を借りるのはいいけど、誰に助けを求めるの?」
「…あ」
 どうも浩之は助けを呼ぶ相手を思いつかなかったようだった。
「先輩の家に入れて薬を持ってこれるやつ…そうか、綾香なら」
「…」
「へ? 綾香は今日は旅行?」
「…」
「武者修業って、あいついつの時代の人間だあ? てことは後は役にたちそうなのは…セ
リオとか?」
「…」
「ってセリオもついて行った? かんべんしてくれよ〜」
「…」
「いや、先輩を責めているわけじゃないんだよ。それどころかこうやって腕を組んでるの
はとても嬉しいぐらいだ」
 ギュッ!
「いてててっ、あかり、肩痛てえ!」
「どうかした、浩之ちゃん?」
「…いや、何でもない」
 あかりの後ろからの圧迫に、浩之は恐怖を感じてやはり文句を言うのをやめた。
「…仕方ねえ、このままじじいの所まで行くしかねえようだな」
「ちょっと、私もこのかっこのままで行けっての!?」
「当たり前だろ、ほら、行くぞ」
「ちょっと、引っ張らないでよ!」
 後ろでギャーギャーとさわぐ志保を無視して、浩之は歩きはじめた。

「藤田君、何やっとるん?」

「はわわ、浩之さん、どうかしたんですかあ?」

「センパイ、どうしたんですか?」

「藤田さん、どうしたんですか?」

「ハァイ、ヒロユキ。楽しそうだね!」

「あれ、藤田君どうしたの?」


「…」
 浩之は、無言で校舎内を歩いていた。
「…ねえ、浩之ちゃん、恥ずかしくないの?」
「…言うな、今更どうしろってんだ」
 浩之の腕には芹香、その後ろには8人。まるで電車ごっこのようにつながっている。
 もちろん生徒達は何があったのかと遠目から見物している。というか浩之としては4人
目あたりからいいかげんこれを見て他人のふりでもしてくれと思っていたのだが、あいに
くと浩之の知り合いはみな見て見ぬふりはしない人達ばっかりだったようだ。
「…どうしてこうなったんだろうなあ」
 浩之は頭を痛めながらもやっと下駄箱で全員靴を履き替えた。もちろん、手の空いてい
るのは浩之しかいないので無理な体勢をしながら全員の靴を履かせたのだ。
「うう、早くじじいのところまで行って頼めれば…てちょっと待て。先輩、もしかしてじ
じい、セバスチャンに殴られたらセバスチャンも離れられなくなるのか?」
「…」
「この状況から考えるとそうなりますって、それはかなりやばくねえか?」
 この状況だ、もしセバスチャンに見られれば殴られるのは必至。しかし、それでセバス
チャンが離れられなくなると、芹香の家までこの行進を続けなくてはいけなくなる。
「…ていうか決まったも同然じゃねえか!」
「落ちついて、浩之ちゃん」
「そうよ、落ちつきなさいよ、ヒロ」
「これが落ちついてられるかってんだこの…」
 と、そこで遠くから何かが近づいてくる大きな音が響いてきた。
 ドドドドドドドドドッ!!
「お嬢様〜っ!!」
「…来たか」
 巨躯の老人が、浩之と芹香に向かって土煙を上げながら突進してくる。
「待ってくれ、話を…」
「問答無用、このお嬢様に近づく害虫がぁ!」
 浩之は、無駄だと分かりながらも一応セバスチャンを止めるが、セバスチャンはそれに
はまったく耳をかさずに、浩之に突撃してくる。
「死ねぇぇぇぇっ!」
 ズガゴッ!
 派手な音をたてて、浩之の体が放射線状に宙を舞う。
 俺、ここで死ぬのかな?
 途切れる意識の中、浩之はそうのん気に考えていた。


 浩之が目を開けると、複数の女の子達が浩之を囲んで見下ろしていた。
「あ、浩之ちゃん気がついたんだね」
「いてて、あれ、俺何でこんなところで…」
 浩之は今まで何があったのか思い出しながら立ちあがった。
「ええと、確か先輩と体が離れなくなって…ってあれ?」
 自分を取り囲んだ中に、芹香も混ざっていた。もちろん、自分の腕とも離れている。
「…」
「セバスチャンが殴ったら外れたって?」
 そう言えばその芹香の後ろでセバスチャンが殺気をはらんだ目で浩之を睨んでいた。
「薬の効果が切れたのか?」
「…」
 芹香は多分としか答えなかった。彼女にもどうして外れたのかが分からないようだった。
「てことは…」
 ひょいっと浩之は芹香の手を握る。そして、しばらくそのスベスベした手を堪能してか
ら、離す。
「お、離れるようになってるな」
 これであの行進を街中でも続けなくてもよくなったということで、浩之は安堵のため息
をついた。
「小僧、気安くお嬢様の御肌にふれるでない!」
「いや、じいさん助かったよ。あのまま街中を行進するのは嫌だったからな」
「ぬう、感謝するならもう少し誠意というものを見せんか。それにわしはじいさんではな
い。セバスチャンというれっきとしたお嬢様からいただいた名前があるわ!」
「分かったって、セバスチャン。今回はまじで感謝してるんだぜ」
 薬が切れたのかセバスチャンが殴ったショックだったのかは別にして、浩之は一応この
おかしな行進からは抜け出せたのだ。
「でも先輩、ほんとはどういう効果の薬作ろうとしたんだ?」
「…」
「へえ、薬を飲んだ人が好きな子と一生離れられなくなる薬か…」
 浩之は、その言葉を口にしてから、まわりを見渡した。みなよく知っている女の子ばか
りだ。囲まれていて、今からダッシュして逃げる場所はなさそうだった。
「先輩、ちょっと用事思い出したから、帰っていいか?」
 浩之は、ここの場所で一番自分の頭のめぐりが早いことを祈った。
 芹香は、自分の言った言葉をはんすうして、あっと小さく声をあげた。
「…浩之さん…」
「ちょ、ちょっと、誤解だって、先輩!」
 いつもは穏やかな芹香の表情が、珍しく険しくなっているのを見て、他の女の子達も気
がつきはじめたようだった。
「薬を飲んだ人が好きな子…」
 つまり、浩之が好きな女の子は…
 浩之は神に祈った、祈らずにはおれなかった。もちろん、願いは聞き届けられそうにな
かったが。
「…」
「浩之ちゃん…」
「ヒロ…」
「藤田君…」
「浩之さん…」
「センパイ…」
「藤田さん…」
「ヒロユキ…」
「藤田君…」
 じりっじりっと女の子達の輪が狭まっていく。
「ご、誤解だ!」
 浩之はどう見ても自分の言葉が受け入れられないのを感じると、素早く女の子の間をす
り抜け、逃げ始めた。
「「「「「「「「「待て〜っ!!」」」」」」」」」
「誤解だって言ってるだろ〜っ!」
 しかし、浩之は身の潔白を証明するよりも、自分の命の安全をはかるために逃げるしか
なかった。その後を、9人の女の子達が追う。
 行進は、追跡という形で引き継がれたようだった。


 元オカルト研究会の部室にあるダンボールの上に、一冊の魔術書が置いてある。
 その魔術書は、風もないのにパラパラとページがめくれ、しおりのはさんであるページ
で止まった。
 そのページの見だしはこうだった。
『飲んだ者を好きな人が、一生離れたくなくなる薬』

終り

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どうも、織原夏樹です。
AIAUSさんに頼まれて、お題「マーチ」のサンプルSSとして書き上げました。
いや、こんな難しいお題選ぶなよ。私も含めて(笑)
正直いまいちのできのような気がします。
感想、文句などはこちらのHPか、メールに
それでは、またいつかどこかで。
『なつのき会』
http://www.geocities.co.jp/Bookend-Soseki/4362/index.html
メールアドレスnatsukio@sage.ocn.ne.jp

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