想いを言葉へ変えて…(「サフィズムの舷窓」ライアーソフト・SS) 投稿者:あかすり 投稿日:6月9日(土)13時14分

「…あん…り…」

ニキ・バルトレッティは溜息をつくと、愛しいあの人のことを考え始めた。


―杏里・アンリエット
 究極の浮気性
 わたしの気持ちも知らないで…
 そのくせ謝るときは毎回100%誠心誠意…

…憎い……愛してるけど…憎い…

…この気持ち…伝えたい…

わたしが火サスみたいな愛憎劇で悩んでいるって……むしろ土サス?

浮気しないでわたしだけを見てほしい……

どうやって伝えればいいんだろう…


「悩める年頃なのね、ニキ」
アンシャーリー・バンクロフト、華麗にクローゼットから登場。

「…あん…しゃ……り…」
ニキさん、意外と平然。

「大丈夫よ、ニキ。深い悩みもこのクスリで万事解決よ」
両手に溢れんばかりの錠剤の山。
なんだか気分はDr.マ●オ。

「………」
ニキさん、迷ってます。
アンのクスリは飲めば確実、意識がナッシング状態。

…つーか、いきなり出てきてヤバいクスリを人にすすめないでほしい…
そういうのは先ず自分で試してから……いえ、もう試してるからそんなに濁った瞳なのね…

「………」
「迷える年頃なのね、ニキ。安心して、ちゃんと毎日水をあげた葉っぱを使っているから」

なんの葉っぱだ………とは言わない。
聞いたってムダだし。

「………い…や―――」
「スキあり。隙好き」
拒否しようと口を開けたところにアンシャーリーのスーパーコンボ炸裂。
激流のようになだれ込む錠剤の山。
気分はドーピングマン、●ャック・ハンマー。

「………気分はどう、ニキ?逝っちゃった?」
「………」
混濁する意識に抗いながらも『逝っちゃった?』発言にツッコミを入れたい様子。

「安心して、おかわりはタップリあるわ」
「………」
『アンタ、もう帰って』と言えたらどんなに楽だろうか。

「さぁ、ニキ、勇気とクスリの力で声を出してみて」
「………」
『クスリの力』なんていらない…と思った。

「ニキ……エチケット袋が欲しいの?」
「………」
『なんでやねん』と思った。






「なんでやねん」




「………!!?」


…し、喋れた………普通の人みたいに声が出せた…!!
…けど…なんで関西弁…?

「おめでとう、ニキ。これであなたも吉本よ」
「なんでやねん」
「ああ、ニキ、あなたの心にはいつもチャーリー・浜が」
「なんでやねん」
「それとも伸介の方が好みかしら」
「なんでやねん」


………『なんでやねん』以外は喋れないのね…
理不尽だけど、アンシャーリーのクスリなんだから仕方ない。

「なんでやねん(アンシャーリー、わたし…杏里に会ってみる!)」
「そう……明日は曇りのち雨よ」
「なんでやねん(わたし……頑張ってみる!)」
「森田さんはアテにならないわ」
「なんでやねん(ありがとう、アンシャーリー!)」

部屋を駆け出してくニキ。
見送りながらアンシャーリー、再びクローゼットへ帰っていく。




「…あん……り…」(気力100%)
「やあ!ニキ!今日もキミの姿が眩しい、シャイニング!」
「なんでやねん(浮気しないでわたしを見て!杏里!)」(気力95%)
「………ニキ?」
「なんでやねん(杏里!わたしだけを見て!愛して!!)」(気力45%)
「………可哀そうに、ニキ……疲れてるんだね」
「なんでやねん!(杏里!わたしの心に気付いて!わたしの…愛に!!)」(気力20%)
「ゴメンよ、ニキ……今日はもうお休み」
「……なんで…や……ねん(……………)」(気力5%)











「……ううっ…なんでやねん……」

ニキ・バルトレッティ、16歳(胸囲88cm)。
彼女の想いが伝わる日は遠い。