デカ話 投稿者:あかすり 投稿日:7月19日(水)23時53分
―ある日の事だった。

いつものように愚痴っぽい長瀬刑事の世間話の相手をしている時に
彼がぽつりぽつりと話し始めたのだ。



…いやね、俺の若い頃の話なんだけどさ。
警官殺しのホシを追ってる最中にさ、ちょっとしたドジ踏んじまってね…、

…盗られちゃったんだよ。

…え?何を盗られたって?
おいおい、ヤボなコト聞きなさんなって。
警官を殺す様な奴がその警官から盗むモノといえば、だいたい想像がつくだろ?
…そう、その『まさか』だよ。
俺にとっちゃあ、正に進退窮まっちゃってね。
うん、死活問題ってヤツかな?
まさか、あんなモン盗ってくなんてなぁ…。


ずずっ…〜

話を一旦区切り、茶を飲み干すと長瀬さんは話を続けた。


そんでね、その後さ、先輩の老刑事に手伝ってもらってな、
ホシを追っかけまわしたんだよ。
警察官としても個人的な問題としてもこれ以上、
ホシを放っておくワケにはいかないやな。


そんでさ、とうとうホシを追い詰めて、だ、
手痛い犠牲を払って逮捕したワケだ。
そんでもってオレの大事なモノも戻って来たワケだ。

…ま、もっとも無事ってワケにはいかなかったが…。



ま、普通、中身は使うよなぁ。
当時はただでさえ安月給だったのに…。


…え?被害者は何人だったって?
何人って…一人だよ、一人。
最初に殺されちまった警官一人。


…は?手痛い犠牲?中身は全部使った?
いったい何を…?


拳銃?
はは、何言ってるんだ?
そんな危なっかしいモノ、盗られるワケにはいかないだろ。


サイフだよ、サイフ。
当時の俺の全財産が詰まったサイフ!
まっさかなぁ〜、警官殺す様な奴がよりによって警察官のサイフ盗るなんてな?


ん?
どこ行くんだ、柳川?
お〜い、柳川ぁ?
お〜〜い?




これだから………長瀬さんの話は真面目に聞く気にならない。