賛辞のおやつ?(お題『午後三時』) 投稿者:アホリアSS 投稿日:8月31日(土)23時09分
「蝉丸〜〜 おやつにしよーー♪」
「わかった。先に行っててくれ」
 蝉丸の私室のドアの外で月代が呼んだ。一心不乱でラジカセを解体していた蝉丸は作業
の手を止めて汗をぬぐった。
 リビングに入ると、高子が紅茶の用意をしていた。
「蝉丸さん。3時のおやつですよ」
「? ……ああ」
 蝉丸は小首をかしげながらソファーに座った。
 その様子を見て、月代がきいた。
「どしたの? 変な顔して」
「ああ、3時のおやつと聞いたのでな。おやつというのは2時じゃないのか?」
「何言ってんのよ。おやつは3時に決まってんじゃない」
 月代があきれたように言った。
 高子がケーキと紅茶を運んできた。
「そういえば…昔は2時だったそうですよ。時計がなかった時代、午後2時ごろに鐘を八
つ鳴らしていたらしいですね。その時に食べた軽食がおやつの始まりだそうです」
「そうなの? じゃ、蝉丸は昔は2時に食べてたの」
「いや、俺はそういうものを食べる習慣がなかったからなぁ… そうか、今はおやつは3
時なんだな」
「くすくす… 蝉丸さんって、時々変なこと言うんですね」
 高子はケーキを載せた皿を月代と蝉丸、それに高子自身の前に置いた。
「ところで蝉丸さん。ラジカセの仕組みはわかりました。」
「うむ。とりあえずバラバラにしてみた。機械的なしくみはだいたいはわかったがな…」
 そういいながら、1枚のCDを取り出した。表も裏もあちこち引掻きキズが入っている。
「レコードと同じしくみだと思うのだが、針を当てる溝がないんだ。いったいどうなって
いるのか」
「えーと、レーザー光線という光を当てて、その反射で読み取ってるってききましたよ。
私も詳しいしくみはよく知らないのですけど」
 そう言って高子は困ったように笑う。
 月代もニコニコ笑いながら蝉丸をみていたが、当然その目が見開かれた。
「あーーーーー! それ。買ったばかりの森川由綺のCDじゃない! なんてことすんの
よ!」
「む? ラジカセに入っていた。解体するついでに一緒に調べたのだが、いけなかったか?」
「こらー!! 限定販売のレアアイテムだったのにぃ! ばかーーー!!」
「お、おい。落ち着け。俺が悪かった。おいっ」
 怒り心頭の月代はケーキを蝉丸の顔面にたたきつけ、拳でぽかぽかなぐりだす。
 高子はぼそっとつぶやく。
「これじゃ、惨事のおやつですね」


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