Treasure Hunter (前編) 投稿者:アホリアSS 投稿日:3月22日(木)02時01分
「いくよっ! 祐くん!」
 あたしは祐くんの手を取って早足で歩き出した。他の人達もついてくる気配だ。急がな
きゃ。
 すぐに目的地についた。目の前に5本の観葉植物が等間隔で並んでいた。それぞれの高
さはあたしの身長と同じくらいか。
「沙織ちゃん、ここを探すの?」
 祐くんがきいた。
「そうよ、この中のどれか。『3本目』の木に宝物があるはずよっ」
 あたしは手に持っている紙を見た。こんなふうに書かれている。


           宝のありかをここにしめす
          そこには3本の木が並んでいる
        1本目の木のそばには白色のものがある
       2本目の木は他の2本にくらべてずっと太い
      3本目の木のそばにくると涼やかな風が吹いている 
        みつけるべきものはそこにかくされている


 あたしはの名前は沙織。隣には祐介くんがいる。あたし達は今、このホテルで開催中の
宝さがしのイベントに参加している。ホテルの敷地内にコインが隠されていて、それを見
つけ出した人には豪華商品がもらえるのだ。ふたり一組で探すことになっていて、あたし
と祐くんがペアになっている、
 この紙の文章にコインの隠し場所が書いてある。ようするに、木が3本並んでいるとこ
ろを探せばいいってわけね。
 で、あたしと祐くんはホテルのロビーにある観葉植物の前にきている。
「沙織ちゃん。ここは違うんじゃないかな。木が5本あるよ」
「きっとこの中の3本だよ。いちばん太いのを探してその両隣のどっちかに宝物があるん
だよ」
「ぜんぶ同じ太さに見えるけどなぁ…」
「びみゅーに違うのよ、びみょーに。祐くん、ヒモかなにかもってない?」
「太さを測るんだね。携帯のストラップでいいかな」
 あたしはストラップを木に巻きつけてみた。隣の木でも同じように巻いてみる。最初の
木より少し細いかな? 5本試してみて、真ん中の木がいちばん太いとわかった。
「両側の2本は除外して、真ん中の3本で考えるわけね。最初の木のそばに白いものが…
ないわね…」
 白いもの…白いもの… それらしきものは見当たらない。木の植木鉢は茶色だし、少し
離れた椅子やテーブルも白じゃない。床も違う。しいて言えば天井の照明が白だけど、ち
がうだろうなぁ。
「あったぁ! たしかに白いぞ」
 ちょっと離れたところから声が聞こえた。あ、藤田くんだ。5本の木の、あたし達から
みていちばん右端の木を調べてたみたいだ。
 変ねぇ。あれが1本めだとすると、3本目がいちばん太くなるんだけど。
「浩之、何を見つけたの?」
 祐くんがきいた。あたしも祐くんといっしょに藤田くんのところまで近寄った。藤田く
んは手に何かを握っていた。藤田くんのうしろには神岸さんもいる。
「これだよ。葉の裏にくっついてた」
 藤田くんが手を開いた。そこには白い… イモムシ!?
 あたしと神岸さんは悲鳴をあげた。

 結局、かんじんのコインは見つからなかった。祐くんと藤田くんが他の木も含めて探し
まわったんだけどね。
「ここには無さそうだな。じゃ、俺達は別のところを探すよ」
 そういって、藤田くんと神岸さんはホテルの外へ出ていった。

「祐くん、あたし達も行こ…… どうしたの?」
「……外…にあるのかな? ホテルの屋内って可能性はどうだろう」
 祐くんとあたしはホテルの見取り図をみた。1階部分の図と、屋外の図がある。あたし
は主催者の千鶴さんの話を思い返してみた。たしか、2階以上のフロアには隠してない、
敷地の外でもない、一般のお客さんが入れないような場所にはない、と言ってたっけ。
 屋内には、ここの他にも観葉植物がある。でも3本以上並んでいるのはここだけみたい
ね。
「やっぱり外じゃないかな。風が吹くところだし」
「そうだね。じゃ、行こう」

 あたし達は外に出た。敷地内のあちこちに木が植えられている。で、他の人達が調べま
くってるのが見えた。しまった。出遅れた。
 思わず駆け出そうとしたあたしを祐くんが制した。
「沙織ちゃん、むやみに探してもたぶんみからないよ。条件にあう木を先に見つけないと」
「そ、そうだよね。でも、条件に合う木って…」
「3本の木が並んでいる。たぶん他の木とは離れて3本だけそろっているんだろう。真ん
中の木が太くて、左右の2本は真ん中より細い。その木を探そう」

 早足で敷地内をあるいた。3本セットの木というのはなかなか見つからない。ホテルの
裏手にはいってしばらくすると、ようやくそれらしき3本が見つかった。そこには瑠璃子
ちゃんと月島先輩がいた。
「瑠璃子ちゃん、お宝は見つかった?」
 あたしがきくと、瑠璃子ちゃんは首を横に振る。なかったようだ。
 月島先輩が腕組みしながら口を開く。
「この木のそばには白いものというのが見当たらないな。たぶんここじゃないんだろう。
僕達は他のところを探してみるよ。じゃ、君たちも頑張ってくれたまえ」
「はーい。先輩達もがんばってくださいねー」
 瑠璃子ちゃんと月島先輩はホテルの方に歩いていった。
「どうしよっか。この木を探すだけムダだよね」
「うーん…この木じゃないとすれば…」
 うなりながら、祐くんは手に持った紙をみた。その時、急に祐くんの表情が変わった。
「あれ…? これはまさか…」
「どうしたの? もしかして、宝物のありかがわかった?」
「いや…場所はわからないけど…」
 祐くんは顔を上げ、あたしの方を見る。そしてニコッと笑った。
「何を探せばいいかわかったよ」
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[お題:ミステリ]

ども、アホリアSSです。
この作品は『ミステリー』の範疇からずれてるかもしれませんねぇ。(汗)

さて、前編は解決しないままで終わっています。正解のわかった方、どなたか後編を書い
て頂けないでしょうか。募集期間内に他の方からの後編が出なかった場合は私が書きます。

http://member.nifty.ne.jp/roadist/