おこた 投稿者:丹石 緑葉 投稿日:12月2日(土)00時16分
 冬の休日。
 くつろぎのひとときと言えば、コタツだろう。
 テレビを見ながら、ミカンを剥いてみたりする。
 日本人なら定番とも言える、冬の一コマだ。
 こうやって座っているだけで、収まるところに収まったような…
 そんな充足感がある。
「ほんと、コタツって落ち着くのよねぇ…」
 オレの反対側では、綾香が寝転がって漫画を読んでいた。
 …およそお嬢様らしくねぇ。

「人ん家のコタツに入って、ナニやってんだよ」
 ミカンを一房、口に放り込みながら聞いてみる。
「いーじゃん、減るもんじゃなし。
 …ミカン、あたしにもちょーだい?」
「まぁ、確かに減らねぇし、別にいいけど…
 ミカン、コタツの上で食えよ?}
「えー、ケチぃ
 いーもん…」 
 そう答えると、コタツの中に潜り込んでしまった。
「はぁ〜、コタツっていいわぁ」
 やっぱり、さっきの言葉は却下だ。
 減る減らないの問題じゃない。
「減る! っつーか、狭いんだよ。
 せめて足だけにしろ」
 首までコタツに潜り込むもんじゃありません。

「だいたい、なんで人ん家のコタツに入るんだよ。
 自分の家のコタツに入れ!」
「だってぇ、うちにはないんだもん。
 洋間にコタツは、合わないわよ?」
 ちょっと想像してみる。
「…いいんじゃねぇか? 暖炉の前にコタツ置いたり」
「やめてよ… 電熱カーペットならともかく。
 それとも浩之は、こんな可愛い女の子が訪ねてくるのが嫌なの?」
「コタツが目当てじゃ、素直に喜べん」
「むー。姉さん、浩之、こんなこと言ってるわよ?」

 ん? 姉さん?
 芹香先輩も来てたっけ?

 首を傾げていると、オレの足元で何かがもそもそと動く気配があった。
「おい、綾香、おとなしくしてろ」
  にょ
 なんか、とろんとした目つき、ぽーっとした雰囲気。
「……」
 オレに膝枕する感じ…ちょうどオレの股間のあたりに顔を出したのは…
「…せりかさん?」
 思わず、しばらく見つめ合ってしまった。
「綾香?」
「んー?」
 反対側で声がする。
 綾香は、向こうにいるし…?
「……芹香先輩…
 そこで、なに…やってるんすか?」
「……」
 何かささやくと、また潜り込んでしまった。
「あ、芹香さん、どうかしたんですかぁ?」
 マルチ?!

 ??
 うちのコタツは、そんなに大きくないぞ?
 いったいこの中には、何人、入っているんだ?
「綾香、おまえ、1人でうちに来たよな?」
「ん? うん、1人だったわよ」
「コタツの中に、何か入ってるぞ?」
 そっと、こちら側をめくってみる。
「こら! 覗くな!」

  ゴスッ

 綾香の蹴りが飛んできた。
「い…いま… おまえっ」
「乙女が入っているコタツをめくろうとするからよ」
 急所に入った。
 悶絶するオレを、綾香は冷たい目で見ていた。

 結局、コタツの中がどうなっているのか、謎だった。


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