おててつないで 投稿者:丹石 緑葉 投稿日:9月30日(土)02時00分
 秋晴れもまぶしい日曜日。
 俺達は繁華街に繰り出していた。
 いつも頑張ってくれているウチの看板娘に、感謝を込めて。ってやつだ。
 実際、スフィーはよくやってくれている。スフィーの魔法のおかげで、五月雨堂は大繁盛だ。
 そのせいで、スフィーはちっとも大きくならないけど…

「けんたろ〜、今日はどこに連れて行ってくれるの?」
「そうだな… デパートにでも行こうか」
「えっ デパート?!」
 とたんに目をきらきらと輝かせるスフィー。
「ねぇん、けんたろ〜。あたし、欲しいものがあるんだけどなぁ…」
 そして、俺にに体をすり寄せてきて、お願いモードに入る。
 ごろごろとのどを鳴らす音が、聞こえてきそうだな…
「いいでしょお?」
「なんだよ、ちゃんとお小遣いはあげてるだろ。それはどうしたんだよ?」
「うぐっ そっ、それは…」
 俺を、恨めしそうに上目遣いで見上げる。
 …ははぁん。さては、使い果たしたか? それとも小遣いじゃ足りないほど高いものなのか…
「…別にいいけど。
 あんまり高いものはダメだぞ」
 まぁ、何かご褒美をあげるつもりだったしな。
「やったぁ。けんたろ、大好き〜☆
 さ、そうと決まればさっそく、れっつらごー!」
「おいおい、落ち着けよ…」
 スフィーに引っ張られて、デパートに向かう。

 さて、スフィーに連れられてやってきたのはデパートの最上階。
 いわゆるレストラン街ってやつで…
「なぁ、ホントにそれを食べる気か?」
「んふふー、一回食べてみたかったんだぁ。
 けんたろも食べる?」
 そんなに嬉しそうに聞かれてもなぁ…
「…いや、オレはコーヒーだけで充分だ」
 スフィーの前には、巨大なパフェが鎮座していた。
 「ウルトラジャンボパフェ」だっけか?
 ちょっとした洗面器ぐらいの大きさの器。
 それに山盛り、フルーツやらクリームやらが…
 うぷっ… 見てるだけで、胸焼けがしてくるぜ…

 で。
「ううっ けんたろ、くるしーよぉ」
 やっぱりそうなる訳ね。
 結局一人で全部食べてしまった。
 さすがのスフィーの4次元胃袋も、万能ではなかったか…
「ううっ、おんなじ苦しいんだったら、結香のホットケーキ食べればよかったよぉ…
 けんたろ、おんぶ〜」
 ううむ、いくら体が小さいからって… こいつホントに俺より年上か?
「ったく、しょうがないなぁ。ほら」

  んしょ

「ごめんね、けんたろ。せっかくのお出かけなのに」
「いいよ、べつに。
 スフィーの嬉しそうな顔見れて、よかったしな」
「ん…」

 スフィーをおんぶして、ゆっくりと街を歩く。
 なんか、背中の重みが心地よい。いつもより間近で会話できるしな…
 こういうのも、いいかも。


「さてと、今日はどうするかな…」
 日暮れ時。俺はいつもの商店街にさしかかっていた。
「う? けんたろ、買い物するの?」
「うん、今日の晩飯の材料を、な…」
「じゃ、あたし歩く」
 俺の背中から飛び下りようとする。
「おいおい、もういいのか?」
「うん、もう楽になったから…
 それに、あたしがおぶさってるとけんたろ買い物の邪魔でしょ?」
 ま、確かにそうだけど…
「いこ、けんたろ。今日の晩ご飯は、あたしが作るよ」
「げ… 今度はだいじょうぶなんだろうな?」
「あー! けんたろ、失礼だよぉ?!
 あたしだって練習して、新しい料理覚えたんだからねっ!」
「へぇ… そりゃ、たのしみたのしみ」
「ぶ〜、けんたろ、本気で言ってる?
 …ま、いいや。
 じゃ、こっちからまわるよ〜」
 ぽてぽてと歩くスフィーに、付いていく。

 よく晴れた日の夕暮れに。
 二人、手をつないで。
 スフィーにひかれて、お買い物。


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