「ふん、思ったよりもたなかったな」 「おまえが乱暴すぎるんや。 まぁ、ここに棄てときゃ誰からも文句はでんやろ」 ぺっと、唾を吐き捨てる。 二人の男が、何かを捨てて立ち去った。 ここはゴミの埋め立て地。 やがてぽつりと雨が落ちだした。 泣けぬロボットの代わりに天が泣くのか。 薄汚れたメイドロボを、雨が洗っていた。 その半身はゴミの中に埋まり。 その目は虚ろに天を見上げていた。 チチ、と僅かにCCDカメラが動いた。 はっと目を覚ます。 そこはいつものベットの上。 メイドロボのために設けられた、メンテナンス・ユニット。 手首には整備用のケーブル。バッテリーの残量は100%。 時刻は5時を少し回った頃。この時期にしては、暗く、気温も低い。 おそらく、今日も天気が悪いのだろう。 物音を立てないように、自分の部屋を抜け出す。 この時間、彼女のご主人様はまだ眠っているはずだ。 そのベットでは、一人の男性が眠っていた。 普段からは想像も付かないような、無防備な表情をして。 彼女の、ご主人様。 「浩之さん、怖い夢を見たんですよ」 そっと、話しかける。 「浩之さんの運転する車が、事故に遭うんです。 わたしは助手席に座っていたんですけど、大破していました。 周りのことが見えてるのに、聞こえてるのにわたしの体は動かないんです。 浩之さんもいっぱい血を出していて、少しも動かないんです。 …浩之さん、わたしをおいて居なくなってしまうのかと思いました。 そしてわたしは、どこか怖いところに連れ去られてしまうんです」 緑の髪をしたメイドロボが、ごそごそとベットの男の横に潜り込む。 「浩之さんの、匂いがします…」 寒さから逃れようとするかのように、ご主人様の腕にしがみついた。 いずれが夢か、幻か。 腕はもげ、胴は千切れ、頭皮は焼け焦げ。 ゴミに埋もれた機械の体は、雨に濡れそぼつ。 すでにその活動は停止しており。 もはやその内に僅かな温もりを残すのみ。