永遠の過ごし方 投稿者: YOSHI
永遠の過ごし方〜There is such a thing as forever〜

<Third day>

《〜水曜日〜》




〜屋上〜

まずまずの天気。深山雪見はぼんやりとCDを聞いていた。
「そして世界が終わるとき〜、あなたはどこに……」
何気なく口ずさむ。最初にこの歌詞を聞いたときは陳腐な詩だと思った。
日常に、現在までの生活に終わりがくるなんて思わなかった。
今日に限ってみさきも澪も来ていない。

一人だった。

暇だ。

そう思いつつ私は目を閉じ再びCDを聞こうとしていた。
そのとき階段を上る足音が聞こえてきて、音が止まる。

ぎぃ……

「深山部長……」
呼べれて顔を向けると演劇部員の一人がいた。
またか、と思う。
「で、どこに決まったの?」
「青森です……親類を頼って……」
疎開だった。
すでに航空も船も使えない状況では車で移動することになるのだろう。
長い旅路を思い少しだけ同情する。
「そう、がんばってね」
「はい……」
右手をさしだし握手をする。
「失礼します……」
ペコリ、と一礼して去っていく。
ここ最近でよくある別れの行事だ。
部員が部長にあいさつに来て、握手して、そして別れる。
ここに来るようになってからはその回数が増えたようにも感じる。
雪見は何となくためいきをついて、マットの上に仰向けに転がる。
個人的な意見としては疎開なんかしたところで意味があるとは思えない。
「定められた、運命ならば〜……」
雪見は再び歌を口ずさみ始める。
どれくらいそうしていただろうか?


たったった……ぎぃ……


ドアがきしみ屋上の扉が開かれる。
澪だった。
「上月さん、遅いわよ」
「………………」
彼女はきょとんとした目でこちらを見ていた。
そして、いつものようにスケッチブックにペンを走らせる。
そして、スケッチブックをこちらに向けた。

『誰なの?』

時が止まったように雪見も澪も動かなかった。
雲だけがいつものように流れていた。




〜教室〜

使われていない教室。
そこで南森と中崎は教卓に背中合わせに座っていた。
そのままふたりとも黙っていた。
先に沈黙に耐えきれなくなったのは南森の方だった。
「……おい」
「なんだよ?」
中崎がぶっきらぼうに聞き返す。
よく見ると二人とも顔に青あざだの擦り傷だのが無数にある。
二人が盛大に殴り合いをした証拠である。
「オレは何が何でも告白するからな」
「無駄だって言ってんだろ?」
「てめぇ……いい加減にしろよ」
「じゃあ聞くがな……お前に脈があると思うか? 思えるか?」
「思えるわけねえだろ!」
南森は思わずかっとなり中崎の胸ぐらをつかみあげる。
しかし、すぐに手を離しため息をつくと立ち上がる。
「中崎」
教室を出ようとしたところで足を止め口を開く。
「オレは告白する。おまえがどう思っててもな」
「……それでいいのか?」
「なにがだよ」
「間違いなくふられるんだぜ?」
「………………」
南森は中崎の言葉にしばし考え込む。
「そうだな……ふられるだろうな」
「ならなんでだ? 痛い目に遭うとわかってて挑むのはバカだ」
「そうだよ、バカだから告白しないと収まりがつかないってだけさ」
じゃあな、とだけ言って南森が教室から出ていく。
ため息をつきつつ、中崎は夕方までぼんやりとしていた。


〜夕方、校門〜


中崎は校門に背を預けて立っていた。
誰かと約束した訳じゃない、ただ待っていた。
やがて、中崎は南森の姿を見つけた。
無言で中崎を無視して立ち去ろうとする南森。
中崎はその様子を見てため息をつく。
「そうか、だめだったか」
「……ああ、お前の言ったとおりだったな」
そう言って南森はすたすた去ろうとする。
しかし、中崎は南森の肩をつかんでそれを止める。
「なんだよ?」
「ま、酒でも飲まないか?」
「俺の失恋記念か?」
「違う」
「ああ?」
「俺らの失恋記念だ」
南森は中崎の言葉に惚けたような表情になった。
「お前が告白したとき七瀬さんの言った台詞、俺の言った一字一句と違いなかっただろ?」
「……ああ……そうだな、酒でも飲むか」
お互いに顔を見合わせ、その顔がゆがむ。
そして、二人で馬鹿みたいに笑い出す。
笑いすぎて、腹が痛くなっても、笑って、笑って、そして、笑って……。

そして、赤い夕日の中で二人は泣いていた。




〜折原浩平〜

オレは夢の中にいた
いや、現実で起きるコトじゃないから夢の中だ、と判断していただけだった。
「久しぶりだな」
「そうだね」
「もう会えないかと思っていたけどな」
「うん……」
悲しそうな顔をしてみずかは黙り込む。
そう、確かに目の前の女の子はみずかだったが、瑞佳じゃない。
「もう、時間がないんだな?」
「………………」
「みんな消えるんだろ?」
みずかは本当に小さく、小さくうなずく。
オレはみずかが悲しそうにしているわけもわかっていた。
みんなを永遠の世界に連れていくのはみずかの本意じゃない。
でも、何かしら理由があってどうにも成らない事態になっていることだけは理解できた。
「どうかできないのか?」
「あるよ」
決意を秘めた瞳でオレのことを見るみずか。
そして、みずかは言った。

「わたしを殺せばいいんだよ」


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まだこのシリーズ三日目か(ーー;)
早いうちに仕上げたいなぁ……


ただいま3本目!!
5連続張り付けまで残り二本