はぐれ三匹【FARGO編】〜その11〜
『ここはどこだろう?』
私はとても変わったところにいた。
見渡す限りの草原。
でも、とても寂しい場所。
『………………』
私は空を見上げる。
綺麗な青に綿菓子みたいな白い雲が浮かんでいる。
『おねえちゃん』
声が聞こえる。
『誰?』
小さな女の子がそこにいる。こちらをにっこりと笑いながら私を見つめていた。
『わたしはみずかだよ』
それは確かに私だった。ただ、十年以上前の私だった。
『嘘、だって私はここにいるんだよ?!』
『みずか』は私の言葉を聞き微笑む。
『やくそくだからだよ』
私の頭の中が一瞬真白くなる。約束……永遠の……。
ヤクソク……エイエンノ……メイヤク。
私は公園にいた。そこでは、少年がずっと泣いていた。
泣いている少年が私に聞く。
『…きみは何を待っているの』
『キミが泣きやむの。いっしょにあそびたいから』
『ぼくは泣きやまない。ずっと泣き続けて、生きるんだ』
『どうして…?』
『悲しいことがあったんだ……ずっと続くと思ってたんだ。楽しい日々が』
少年はそこで言葉を切ると悲しそうに言った。
『でも、永遠なんてなかったんだ』
少年の思いが、言葉なんか必要じゃないように伝わってきた。
だから、私は言った。
『永遠はあるよ』
次の瞬間、少年の両頬は、私の手の中にあった。
『ずっと、わたしがいっしょに居てあげるよ、これからは』
私は言って、ちょんと少年の口に、私の口をあてた。
永遠の盟約。
永遠の盟約だよ。
光を感じて目を開けると、私は草原に横たわっていた。
『おもいだした?』
『みずか』の声が頭に響く。
『やくそくなんだよ』
それきり『みずか』の声が聞こえなくなる。
私は泣いていた。
私は約束なんて忘れていた。
でも、わたしは憶えていたんだ……。
ずっと約束を守ろうとしたんだ。
浩平のために……。
『浩平……』
涙がいつまでも止まらなかった。
・
・
・
<月は死と再生の象徴>
FARGOの教義の一つにそれはある。
己が定めたものとはいえ恐ろしく陳腐。
己の姿がそれであることを思えばさらに陳腐。
最初の始まりは<恐怖・飢餓・絶望>
渇きを癒したのは<安心・飽食・希望>
心にあった欲望。
それを満たすためにFARGOを作り上げた、
だが、<恐怖>はぬぐい去れぬ。
ぬぐい去ること。
それは生き物の本質に逆らうこと。
<死>に抗う。
だから、私は<永遠>が欲しかった。
しかし、<永遠>はなかった。
<永遠>がなければ作ればいい。
そして、<永遠>に近い存在となった己がある。
人の歪みを取り込み肥大化していく己が存在。
<歪み>を取り込むことによって維持される存在。
取り込み続けることによって<永遠>となりうる存在
まだ…足りない
私は完全な<永遠>の存在と成ることを、望んでいる。
だから…私は……。
……永遠……もとめ……。
…も……時間……。
・
・
・
「……終わりか?」
血のにおいの立ちこめる中、住井が口を開く。
部屋の中に転がる累々たる死体。
固い床を濡らす血の赤。
「…………」
さっきの惨劇を思い出すだけで住井も気分が悪くなる。
不可視の力の持ち主も数人はいたが、天沢郁未と巳間晴香、手負いとはいえ少年がいれば問題にはならなかった。
残るは高槻と浩平の母親だけ。
しかし、ふたりはまったく焦りも見せずにいた。
その中で彼女は静かに口を開く。
「高槻……お客様を招待してあげて」
「わかりました」
高槻は返事をすると同時に右手を振り上げる。
ばぢぃっ!!
はぜるような音が響く。
「……住井くん?」
柚木が目の前で起こった光景を信じられずに目をぱちくりさせる。
突然…住井の姿がかき消えたのだ。
「なにをしたの?」
鋭い口調で聞く晴香。対して冷静に口を開く。
「彼氏には待ち人がいるから……ね。少し場所を移動してもらったわよ」
「……それに、自分の心配をするべきだと思うぞ」
高槻の言葉に一同は顔をゆがめる。
そんななかで、彼女だけは静かに笑っていた。
「……みさお……お願いね……」
彼女が言うと同時に大きめの扉が開き子供が……いや、女の子が出てくる。
あはははは。 ふふふふふ。
ふふふふふふ。 あはは。
あははは。 ふふふふ。
ふふふふ。
「……なによ……なんなのよ、これは……」
異様な光景が展開されるなかで笑い声が響く。
その中心で彼女は静かに笑っていた。
「紹介するわ……あいさつしなさい、みさお」
言われてにこりと笑って名乗る。
『こんにちは。おりはらみさおです』
少女たち。
同じ顔をした少女たちは。
みさおたちは皆寸分の変わりのない笑顔を向けた。
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最近は色々と実験的なことばかりやってるな……。
ここ、おかしいな、とか思われたら是非指摘してください(^^;
あと、いつも感想を書いてくださる皆様ありがとうございますm(__)m
非常に励みになっています。
それではーー。
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