はぐれ3匹【FARGO編】 投稿者: YOSHI
はぐれ3匹【FARGO編】〜その6〜



ベッドとシャワーと、ドア。それ以外は何もない部屋だった。。
『時間です、ミンメスにどうぞ』
無機質な放送が聞こえてくる。茜とここに連れてこられて来たのが数日前。
そして、黒服の説明では毎日午前中にMINMESというものに入らなくてはいけいらしい。
オレも命令には従わないと危険と言うことも承知していたので、とりあえず立ち上がりMINMESを目指す。
「へやを出て廊下を左に、二部屋め……」
なんの変哲もない扉。プレートにはMINMESと書いてある。オレはゆっくりと扉を開ける。・
「なんだ? この部屋は」
妙な……魔法陣だろうか? その中心に大きな椅子があった。
『椅子に座ってください』
また誰のものともわからない放送が聞こえてきて、仕方なくオレは椅子に座る。すると上の方から頭にすっぽりかぶるような
ヘルメットのようなものが降りてきた。これをかぶれと言うことだろう。
『それを着用してください』
ほらな。オレはヘルメットらしきもの、と言うのも何かわからないケーブルなんかが大量に繋がっていたからだ。
とりあえずオレはそのメットらしきものをかぶる。
「真っ暗だぞ」
メットは中から外を見ることができなかった。しかし俺のつぶやきは無視される。
『MINMES開始します』
その声の直後、闇の中でオレはふっと体が浮き上がる感覚がした。






最高に気分が悪かった。


国語的にはおかしいのかもしれないが、それが今の私の心の何もかもを表していた。シャワーを浴びてベッドに倒れ込む。


MINMESとELPOD。


この二つの場所にはいるようになってから数日が過ぎていた。と、同時に浩平と離れてから数日が建っていた。
「魂の精錬……」
食堂で出会った女性が漏らした言葉。おそらく40代後半だろうが、ずいぶん長い間ここにいるらしい。


「魂の精錬、とはなんですか?」
「言うなれば自分を見極めること。刀を研ぐのにも似ているんじゃないかしら」
「それによって……なにか得るものがあるんですか?」
「人によるわ……能力を得る人も、狂う人も、壊れる人もね。ただ……」
「ただ?」
「ただ、私は失うものが多すぎたわ」


哀しい目をした女性の漏らした、失うものが多すぎた、と言う言葉には嘘はないように思えた。
その女性から得た情報を総合して考えるとここはFARGOの訓練施設であり、また実験施設らしい。


「ここ人間はクラスによって分けられてるの。ここはA棟。B、C棟は別の場所にあるみたいよ」
「じゃあ、S棟はどこにあるんですか?」
「隣よ。でも、途中にオートロックがあるわ。6桁の暗証番号を打ち込まないと開かないわ」
「その番号は……」
「さぁ? わからないわ」
「もう一人ここに連れてこられてるんです」
「……でも、わたしは知らないから、ね」


コンコン。

出し抜けにドアがノックされる。
「はい」
「…………」
無言でドアの下から紙が一枚差し入れられる。そして足音は去っていった。私はベッドから立ち上がるとその紙を拾い上げる。

『713188』

おそらくあの女性だろう。わたしは知らないから、か。暗唱番号の書かれた紙を靴の中底の下に隠す。
とりあえずは明日の夜だ。明日の夜に行動を開始しよう。ならやらなくてはいけないことは決まっている。
「今は、寝ることだけを考えないと……」
自分に言い聞かせて明かりを消す。


全ては明日だ。





どこにでもあるような研究室の中、若い男が女にくってかかっていた。

「最初から深度10で何ともないなんて……化け物ですか、折原浩平は?!」
「能力者だもの。それぐらいは当然の結果よ」
「しかし前のS−1は……」
「仕方ないわ。経験、記憶自体が少ないんだもの。ね、みさお」

そう言って椅子で眠っているみさおを抱きかかえる。その右手にはS−1という文字を見ることができた。

「さて、彼女の方は餌はまいておいたから食いついてくるはずよ。明日、実行するわ」
「折原浩平の能力は『世界』ではなかったんですね」
「城島司が消えたから彼が当たりかと思ったんだけど、間違いだったみたいだわ。彼からはデータ取りだけを行うわよ」
「では……」

女は机の引き出しを開けそこから黒光りする一丁の拳銃を取り出してみせる。


「里村茜を殺すわ」





白く、無機質に感じる病室の中で俺達は顔をつきあわせていた。。
「さて、どうする?」
長い沈黙のあとに俺は口を開いた。でも、誰も答えはしなかった。状況が把握できないとしか言いようがないのだ。
俺は、とりあえず状況の整理をしたくてみんなに確認する。
「まずは七瀬がおそわれたんだよな、南森」
無言で頷く南森と七瀬。
「んでもって、里村さんと折原が行方不明。もう、一週間になるか」
「黒服についていったという目撃証言はあるけど……FARGOの人間らしい、としかわからないわ」
詩子が独自のネットワークで手に入れた情報を教えてくれる。


ガチャリ。


「悪い、遅れた」
ドアを開けて住井と見知らぬ女性数人と一人の少年が入ってくる。その女性の一人を見て長森さんが口を開く。
「由起子さん……」
「お久しぶりね。長森さん」
「紹介しておく。、まず、小坂由起子さん……折原の伯母さんだ。そして天沢郁美さん、鹿沼葉子さん、んでもって謎の少年だ」
「なんだよ謎って?」
「気にするな。ま、FARGO関連の情報を持つ人間と思ってもらえばいい」

その言葉に一瞬場が静まる。

「住井……」
「折原と里村さんを連れていったのはFARGOで間違いない。だからFARGOのことを調べてもらっていたんだ」
「相手がFARGOなら、私を襲ったのは誰?」

七瀬さんが住井に聞く。南森も隣で頷いている。まあ、当然の疑問だろう。

「それについてはS・S・Nの人間……というかS・S・Nは解体されて再編成してるからな。今は違う」
「氷上の下で再編成されているそうね」

詩子の言葉に小さく頷くと住井は続ける。

「氷上はどうもFARGOと繋がっているらしい。ま、ここから先は俺も知らないことが多いから……」
そう言って長い髪の女性、鹿沼葉子さんに続けてもらうように促す。彼女はすっと、前に出ると話し始める。
「まず何から話しましょうか……みなさん『不可視の力』というのはご存じですか?」
頷く一同。『不可視の力』については知らない人間の方が少ないだろう。数年前に話題になったFARGO教団のそれである。
「あれは別の生き物から取り出した能力を植え付けるというものでした。しかし、いまFARGOは違う方法で能力者を創り出しています」
「お前らも知っているだろうがJCP862……あれに近いものを使っているらしい」
住井が横から口を挟む。
「MINMESにELPODだそうだ。昔も同じ名称のものがあったそうだが……」
郁美さんと葉子さんが頷く。
「今はまったく違うものになっているそうですが、それよりも折原浩平さんと里村茜さんのことです」

バサッ。

葉子さんがファイルを置いた音である。俺はそれを開いてぱらぱらとめくってみる。

「これに里村茜さん、折原浩平さん、そして南明義さん、長森瑞佳さん……あなた方全ての名前がリストされていました」
「…………どういう意味ですか?」
「このファイルはFARGOのある施設にあったものなんだ。FARGOの計画の一つ、というか実験らしい」
「まさか、冗談だろ?」
「JCP862によって目覚めた能力者の子供……つまるところお前らがだなリストされてるんだ。そしてその中に特に珍しい能力の持ち主が一人」
「この世界から消えることのできた……永遠といえる存在になることのできた人間」


「それが折原浩平だ」


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うむ、全部書き直した。

住井「どうしてまた」

ネタかぶってそうだったからさっさと終わらせよう、って思ってな。

早くすることに越したことはないし。大幅に削ったんだ。

住井「ま、次回は里村さんが…………逃げたか」

住井「では、また次回はぐれ3匹【FARGO編】〜その7〜で」


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