はぐれ三匹【恋愛編】 投稿者: YOSHI
はぐれ三匹【恋愛編】

乙女チックごーいんぐまいうぇい!〜その2〜


張りつめた空気。それはテストの時の緊張感に通じるところがあると思う。
時間はすでに土曜日の放課後まで5分、とせまっていた。狩りのはじめりまで後、五分……。
俺と南はクラス中からの視線をうけ泣きたい気分だった。
「………………」
そのとき無言で紙が一枚回ってきて渡される。えー……。
『素直に捕まってくれたらうれしいな(*^。^*) 広瀬真希より』
すっと視線を向けると広瀬と取り巻きオプションが一緒ににっこりと笑いかける。
このッ、ばか女はー……。人を何だと思っているんだっ! って、10万円に見えてるんだろうな……きっと。
はぁ、さて、逃げるためにも戦略が必要だ、ここでこのクラスの敵戦力を考えてみるか。
●住井護&長森瑞佳……長森さんは、まあ、どうにかなるとしても問題は住井の能力の高さだ。
●広瀬真希&取り巻き……こいつが今一番恐ろしい。こいつ自体は弱いが取り巻きオプションの能力はファンネル並だろう。
●七瀬留美……今日は休みのようだがどこに隠れているかわからない。油断するわけにはいかない。
●柚木詩子……神出鬼没だ、しかし今回こいつのターゲットは南……と思うので問題はないはず。
よしっ! これならばっ! 逃げ切れ…………。

キーンコーンカーンコーン。

一瞬クラスの中の空気が固まり、そして緊張感が高まる。
「あー、じゃ今日はこ……」
教壇に立った教師の言葉が終わらぬうちに出口に向かう俺、そして南。
「よしっ! 逃げるぞ南森!」
「南っ! すまんっ!」
「へっ?!」
俺は教室の空いているドアに南を突き飛ばす!

ばさっ!

「くっ、かかったのは南か!」
住井が悔しそうに言う。教室のドアが開けっ放しだったので何かあるかと思って南を使ったら……。
「そなえあれば憂いナッシングってな。助かったぜ南」
「南森ぃっ! この、人でなしぃっ!」
俺は網にかかってもがく南に向かって言う。
「お前の屍の上で俺一人だけが幸せになるからな。じゃ、柚木によろしくな南」
「待てッ! いや、待ってくれ! 置いていくなぁっ! 頼む、戻ってこぉぉぉぉぃぃ………………」
南の声が遠くなる。すでに廊下にはバラバラと人間が飛び出してきている。階段も同様に埋まっている。
俺は迷わずに廊下の突き当たりに向かって走る。そして、そこにある鉄の束にしか見えないものを窓の外に投げる。

じゃららららっ!

「あ! 非常用はしご?」
そう、本来火災時に使用するものだ。最近はなかなか見かけない代物だ。生徒もこれが何であるということには気づいていない。
俺はそれをするすると降りてゆく。と人影が現れ、はしごを下りてこようとする。
「待ちなさいよっ!」
「うあ、広瀬か……」
俺は上を見上げ………………。
「広瀬ッ!」
「何よっ!」
「今日はピンクだなっ!」
慌てて広瀬が両手でスカートを押さえにかかる。って、おいっ。
「きぃやぁぁぁぁぁ?!」
あ、足が引っかかって落ちはしないか……よし、この隙に逃げてしまおう。
「このっ、待て、南森っ!」
地上三階からぶら下げられて、わめき続ける広瀬を無視し俺はさっさとはしごを下りる。



「南が捕獲されました」
「ご苦労様。ありがと」
何か男が幸せそうな顔で歩いていく。その胸もとには一枚のバッジがあった。
「ふーん。七瀬親衛隊?」
「あたしは認めてないわよ。念のため」
七瀬が憮然とした表情で言う。
「だいたいこの計画持ち込んだのは柚木さんじゃない」
「まぁ、ね」
柚木は立ち上がると近くにある鞄を手にもつ。
「じゃ、わたしは南くんの所に行って来るね」
「お楽しみ?」
「そうよ。南くんにはわたしの愛をたっぷりと受け取ってもらうわ」
「相手の意志は?」
「関係無しに、ね」
柚木はにっこりと、その笑みは肉食獣が獲物を手に入れたときにそっくりだと七瀬は思った。
そして、柚木が立ち去ってしばらくし、七瀬の前に一人の人間が現れた。
「……出番よっ。頼んだわよ。あなたがわたしの秘密兵器なんだから」
「…………」
コクッ、とうなずくと駆け出す。そして、闇の中には不適に笑う七瀬と直立不動の男達のみが残った。



俺、南森はいよいよ追いつめられていた。校門は全てふさがれ学校の周りには2m間隔で生徒が配備されていた。
学校の中では住井、長森さん。そして、広瀬と取り巻きオプションズ。まさに完全なる包囲網。
人数は減る一方か増えてゆくどうやら校外の人間も混じっているようだ。

ちょんちょん。

そのとき俺はいきなり肩をつつかれおそるおそる振り返った。
「え、お前は……」
そのとき俺の目の前にいたのは…………。


続く

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今回の作品はシリアスにしたくなかったんで学園ものを目指してみました。
しかもッ! 読みやすいことに今回のSSは短い! 
住井「うそこけっ!」
……すんません、二次試験対策が忙しくて……。
住井「2月の最初からだったな」
いやぁ、大学って何でこんなに大変なんだろうなぁ。
住井「浪人するんじゃなかったのか?」
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住井「あっ、逃げた。ま、いいか。では次回、乙女チックごーいんぐまいうぇい!〜その3〜で、お会いしましょう」

990122