はぐれ三匹【番外編】 投稿者: YOSHI
〜住井の過去〜


「君は死ぬつもりなのかい?」
片腕を吊った氷上が言う。関東圏を牛耳るやくざに中崎が捕まったことを知ってから5時間がたっていた。
「お前がその状態で乗り込むよりはましだと思うけど?」
「だからと言って、JCP862を使うことはないだろう!」
「時間もないし要求をのむこともできない。ハウンドの連中の6割が負傷している状態、残り四割は精鋭とは言えない」
俺は数本の投げナイフを取り出し、とぎ始める。
「複数で行くより単独で言った方がいいに決まっている。でも俺には侵入して見つからず隠密行動をとり続ける自信はない。
十中八九戦闘になるはずだ」
「だけど、S・S・Nの情報ネットワークで中崎の居場所も割れている。なのに…………」
「相手はやくざだ。セキュリティもしっかりしているだろうし、拳銃も所持しているはずだ。危険だ、当然な……」
「いくらJCP862で『能力』が目覚めていても生きて帰れる保証はないよ? それでも行くのかい?」
「そのJCP862を奪ってくるのを許可したのは俺だ。ハウンドの六割もが使いものにならなくなるとは思わなかった」
立ち上がるってゴーグルと覆面を手に取る。
「でも、上に立つから何とかじゃないぜ、別に。俺は友人を見捨てたくないだけだ」
「…………わかった。住井。死んだりはするな」
「いい男は死なないんだよ、覚えとけ」

プァーーーーーーーッ!

巨大な屋敷に警報が鳴り響く。
「畜生、死んでたまるか!」
頭の上すれすれを弾丸が飛び交う。まさに戦場さながらだった。
「住井、俺をおいて行け! お前一人ならどうにでもなるだろっ!」
「けが人は黙ってろよっ!」
侵入した住井をまず歓迎したのはドーベルマンだった。赤外線、監視カメラ、重量センサー、熱感知、警備の人間。
ありとあらゆるセキュリティーシステム。さらには自家発電までやっているからたちが悪すぎる。
しかし、それらをかわして住井が屋敷の地下で見たのは拷問にかけられ、足を折られていた中崎だった。

ドォォーン!

近くで手榴弾が炸裂する。もう隠れておけそうにもない、必死で逃げる。
「待てやぁ! こらぁっ!」
目の前に拳銃をかまえた男が現れる。
「くっ!」
中崎を背負っているので動きは鈍ってしまう。俺がナイフを投げるより男が引き金を引く方がはやい。
と、男が前触れもなくいきなり白目をむき倒れる。
「沢村…………。すまん、助かった」
S・S・Nハウンド一番隊の沢村。しかし沢村はそれに答えず黒光りする拳銃を取り出す。
「何であんたにつかなくちゃならないんだ?」
「なっ!?」
「俺はいいとこだけいただいてドロン、さ。あんたと中崎の首を土産にね」
頭に血が昇ってくる。
「沢村、お前最初からそのつもりでか?」
「S・S・Nなんてばかばかしい。興味なかったしな。もともと俺はやくざの子飼いの身分だ」
目の前が真っ赤になる。感情が制御できない。
「そろそろ死んでもらうか。最後に祈りでも捧げてみるか?」
俺は感情にまかせて力を解放する。世界は白く染まる。

『不発弾の爆発か? 死傷者・・名が出る惨事』

そのことは次の日の新聞の第1面の記事を飾ることになった。


…………それから数ヶ月。
「もって半年だそうだ」
CTスキャン、エコー、MRI等の様々な検査を受けた後、氷上が言った。
「詳しく説明する気はないけど、脳に腫瘍ができている……JCP862は未完成だ、欠陥があったんだよ。たぶん君の力は暴走するんだ」
「だいぶ力を使ったしな………。つけを払わなくちゃいけない訳か」
公園にはそろそろ桜が咲き始めていた。
「中崎。俺はS・S・Nを抜ける」
「お前がやめたらどうなるかも……わかっているんだな? 組織は崩れるぞ」
「……今まで通りには行かないと思う。でも、残り時間は有効に使いたい」
「わかった。好きにしろよ」
「氷上!」
「S・S・Nは俺達でどうにかがんばっていくよ。いいよな、中崎」
「……わかった」
「わるいな、氷上、中崎……自分勝手で……。S・S・Nはまかせたぞ」
俺は2人に背を向け歩き出した。

やがて、新学期が始まった。
前と同じように俺は楽しい日々を過ごしていた。死の恐怖におびえながら。しかし、いつまでもそれが続くわけはなかった。

発作が起こり始めた。

ひどい頭痛に意識の混濁、無意識のうちに発動する力。

俺には時間がないことは痛烈に感じた。そして俺は決心した。

「長森さんっ、俺とつきあってくれっ!」

俺は自分の想いを伝えておきたかった。結果は……どうであっても。

彼女のことを思っていたから。

彼女のことを誰よりも好きだったから。




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今回のSSは住井がS・S・Nを抜けるくだりです。
友人K「住井の場合はどうした?」
いや、ほら、こんなエピソードもあるって知っていてもらった方がいいとうゆうか……。
K「時間がなかったんだろ?センターまで一週間弱だもんな」
………まあ、この短期間で逆転、ってのはできないしな。
K「開き直りだな……そういえば、ONEの小説買い損ねたんだったな」
そう、入荷しますって言う店員にだまされて。店に行ったときには、入荷してません、だったからな。
K「注文したんだよな?」
おうっ!これでしばらくすれば手に入る!
K「友人達は一足先にてに入れていたのにな。おっ!(時計を見る) さて時間もないことですし」
感想をくれたみなさまありがとうございました。受験が終わったら(3月ぐらい)暇ができるのでレスを返せると思います。
えいりさん本当にセンターまでもう少しですね。お互いがんばりましょう!
K「では住井の場合〜その6〜でお会いしましょう」
ではでは〜〜〜〜

98/01/10