住井の場合〜その2〜 小島町。人口1万人程度。特色としては避暑地として利用されている。 よってホテルなどの宿泊施設、レジャー施設などが充実。 おれは部屋の片隅にあった観光案内に目を通す。これを取り出したため部屋では 大規模な地滑りが起こり被害は甚大。復旧のめどは立っていない。 ため息をついて部屋を出る。一週間もあればどうにかなるだろう。 今日はかなり天気もいい。俺はバイクに乗ると待ち合わせの場所に向かう。 ・ ・ ・ 待ち合わせ場所は駅。小島町までは電車で30分ほどだ。 「全員いるな?」 俺に住井、南に里村、七瀬に柚木。確認完了。 「さて、小島町に行くか」 「なあ…………なんか一人多くないか?」 南が自信なさげに言う。 「南、それは座敷童だ。誰も知らない奴はいないはずなのになぜか一人多いという……」 「わたしがいるでしょ?」 「……………………」 柚木と俺はお互いに顔を見合わせる。俺は意図的に無視していたのだが。 「住井ぃ……」 「違う。俺じゃない」 「七瀬さんよぉ……」 「あたしじゃないわよ」 「じゃあ南、お前が犯人だ!」 「…………そうなのか?」 何故に聞き返す、お前は。 「………わたしです。偶然に会ってしまって…………」 里村さんが言う。俺と七瀬さんは柚木を見もせずに言う。 「無理矢理」 「ついてきたのね」 そういうと制服姿の柚木は頬をふくらませる。 「無理矢理じゃないよ。ただどんなに茜が走っていこうとしても追いかけていっただけで」 それを無理矢理というのだがあえてつっこむ愚行はおかさない。 今11時を過ぎた。俺達は学校を出た後、とりあえず私服に着替えるためいったん帰宅し、駅に集合することに決めた。 「ちょっと荒事になるかもしれない」 住井の言葉がいつになく真剣だったのでおれも幾つか武器を持っている。 南、里村、柚木、住井に俺。たぶんその中の何人かは見た目は目立たない、携帯できるモノを持っているはずだ。 「……………………」 そこで俺は目の前の竹刀袋に目をやる。七瀬さんの持ち物ではっきり言って死ぬほど目立つ。 元剣道部、とは聞いていたがまさかこんなものを持ってくるとは思わなかった。 そんなことを考えていると電車がくる。 「行くか」 乗り込んで席に着く。30分、貴重な睡眠時間をとるため目を閉じる。 ・ ・ ・ 電車で三十分、バスで十五分。S・S・N 小島町支部に着く。 「おお………………」 「ぐあ…………」 「…………」 順に俺、七瀬さん、そして里村さんだ。南にいたっては声も出ないらしい。 冗談ではない。尋常ではない敷地だ。俺らの高校が6つは入りそうだ。 「さ、行きましょ」 「そうだな」 冷静なのは柚木に住井だけである。そういえば柚木はお嬢様らしいし、住井は来たことがあったのだろう。 二人はさっさと門の開いた屋敷に入っていき、俺達も慌ててついていく。 ・・・・・・・・・。 五十メートルは歩いた気がする。先頭を行っていた住井が突然ナイフを取り出しそれを振る。 びぃぃぃぃん。 何かが切れる音がする。住井は何事もなかったかのようにナイフをしまう。 「住井、今のは何だ?」 「鋼線だ。ピアノ線だな、ようするに。髪の毛ぐらいの奴だ」 そういわれ南が慌てる。 「そんな危険な罠を仕掛けているのか?S・S・Nは?」 「いや、違うんだ」 住井はそういうと南と俺を軽く突き飛ばす。当然俺達は一歩後ろに下がる 「きぃぃぃゃやぁぁぁぁっ!!?」 「おおおおおおぉぉぉぉぉ??!」 南が絹を裂くような悲鳴を上げる。俺は何とか穴の縁で耐え、南は見事に穴の底に落ちていた。 「何すんだ、お前はっ!」 「まったくだ!痛いぞっ!」 俺達がはい上がってきた落とし穴を見ていた住井は悪びれることなく言う。 「なに、無事だったんだし。ほら、見てみろよ」 言われて俺の落ちた穴をのぞき込む一同。 「何よこれ…………」 確かに七瀬さんの言うとおり危険なものだ。穴の底からは斜めに切られた竹が幾つも天を向いて立っていた。 「後少しで命を失うところだったな……」 南がおそれを含んだ声で言う。確かに住井は殺意を持ってやったとしか思えない。 俺の灰色の脳細胞が動き出す。はっ! まさか!? 謎はすべて解けた!! 「住井! 貴様俺の口を封じて学食3回おごりをちゃらにするつもりだったな!」 「2000円程度の命なのか? おまえは」 そう言えばそうだ。じゃあ何故? 「なに、ここに昔仕掛けてあった罠以外のもあったんで実験してみたんだ」 「人を実験台に使うなっ! あほっ!」 ・ ・ ・ 俺達は洋館の前で立ち止まった。立て札がある。 『3組に分かれてどうぞ』 ふざけた立て札である。しかも、入り口も三つある。 「昭和の終わりにどこかの変人がたてたらしい」 住井のいうにはこの館は俺達の校舎の2倍程度はあり、しかもこの入り口からの通路は全て独立していて、 どれも最後に大ホールに行き着くのだそうだ。 「3組に分けるか?」 「人質もいることだしな、従うしかないか…………」 「わたしは住井と」 柚木が言う。俺が口を開くより七瀬さんが俺の腕をつかむ。 ということは。 「……嫌です」 「里村さん、偶然ですね。決まっちゃいましたよ」 至福の表情で言う南を見る里村さんの表情は冷たい。慌てて住井が口を開く。 「戦力差を考えるとこれが一番いいと思う。南は柔道、七瀬さんは剣道、そして俺はK−1マニア」 K−1マニアだからといって強いかどうかはおいておくが。 「でも、連絡とれないのが痛いな」 「はい、これ」 七瀬はバックからトランシーバーを取り出す。何故に持っている。 「これで連絡は可能よ」 乙女の必需品なのだろうか? やっぱり。 「さて、と。みんな、無事でな」 「また後でね〜〜」 住井と柚木が出発する。 「里村さん……」 「嫌です」 こいつらは放っておこう。 「じゃあ、…………」 「いきますか」 そして俺は重い扉を開け中に踏み込む。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 12/15職員室にて YOSHI「くっくっくっくっく」 担任「壊れたか。とうとう」 YOSHI「はっはっはっは」 担任「判定はCだ」 YOSHI「ふっっふっっふっふ」 担任「北海道なんかはBなんだが」 YOSHI「はう…………」 担任「後少し数学がなぁ」 YOSHI「……………………」 担任「ま、がんばれ」 YOSHI「……………………」 とぼとぼと職員室を後にするYOSHIであった。 *++++++++++++++++++++++++* 以上!受験直前!センタ−試験まで一ヶ月をお送りしました。 部長「大変だな。俺決まったし、代アニ。おや? なに時間がない? 後書き任せる?」 仕方ない。ここは部長の腕の見せ所だな。 さて、今回の話でいかにして戦力を分断するかと言うのがYOSHIの 最初の悩みだったようで苦労していたようです。つり天井とかいろいろ。 パーティーの分け方も悩んだあげく結局こうなりました。 そして、俺、の正体はもうばれてるかな? ばれてるよな。 そう、もと七瀬派の南森君です。何故、元なのかというと、それはまた次回のお楽しみ! では、若輩者の稚拙な文章ですがお楽しみいただければ光栄です。 感想をくださった方々ありがとうございました。今の時期は忙しいので落ち着いたら感想も 書きということなのでよろしくお願いいたします。 YOSHI代理 文芸部部長