はぐれ三匹【恋愛編】 投稿者: YOSHI
住井の場合〜その1〜



「………………」
俺は今とても口が利ける状況ではなかった。ただ人生の大きなミスを心の中で呪うのみだった。
数学が赤点だから、と教師の言った言葉に焦ってしまった俺も悪かった。
「留年したくなければちょっと仕事して欲しいなぁ」
結果がこれだ。図書室からの古い本の運び出し、三階から体育館まで、18往復。
俺以外にも10人近くいたが、終わったのは日も暮れようかとしていたところだった。
邪魔なものにしか感じない、自分の体を必死に動かして教室に向かうと、まだ誰か残っているようで話し声が聞こえる。
「じ、実は長森さん、話があるんだっ」
「なに?」
住井と長森さんか。まあ、ありきたりな組み合わせだな。住井に七瀬さんだったらもう少しびっくりするが。
俺がそんなことを考えていたとき、住井のでかい声が響いた。
「長森さんっ、俺とつきあってくれっ!」
なぬぅ?!住井っ!お前は告白なんてことはしない、告白させてみせるといってたじゃないかぁ!
必死にびびりまくる心を押さえつけようとしている俺は、長森さんのせいでさらに驚くことになった。
「うん、いいよ」
………………………………。
はっ?!………今、長森さん、うんって言ったよな。   
うん=>肯定の意思表示、相づち、または返事等。
つまりはあの住井と?長森さんが?教室の中を覗くと人生の春を迎えた住井にさらに長森さんが続ける。
「私も明日何もないよ。だれか女の子へのプレゼント買いに行くんだよね?どこに行くの?」
へっ?!数秒前まで幸福に満たされていた住井の顔が固まる。なるほど、大いなる勘違いだな。
住井は世にも情けない顔で言う。
「いや、その、そうじゃなくて」
「そうなの?じゃ、妹さんとかに?」
「いや、プレゼントから離れてくれ……」
人生こんなもんだ住井。俺から見ても長森さんは恋愛沙汰にも間違いなく、鈍い。
だからもっとストレートに……って。どうやら期せずしておれと住井は同じ結論に達したようだ。
いきなり住井は長森さんの両手をがしぃっとつかむ。そして長森さんの目を見つめ言う。
「長森さん!」
「はっ、はいっ!」
これにはさすがに長森さんも焦っているようだ。しかし住井はそんなことお構いなしに続ける。
「俺と男と女のつきあいをしてくれっ!」
これで伝わるのだろうか?俺の心配をよそにどうやら今度は伝わったようだ。
「………………………………」
一気に長森さんの顔が赤くなる。さらに頭から湯気でもでそうな勢いだ。
そのまま2秒ほど経つ。ここ間に長森さんの混乱は最高潮に達したようだ。
「えぇ〜〜!! わたしだよ、わたしっ! わたしなんかで!!?」
住井は圧倒されつつもどうにか首を縦に振る、がそれはまずかった。長森さんはさらにヒートアップしたようだ。
「わたしだよっ! わたしなのに、わたしなんかで、わたしなのに、えっと、えっと、…………あうぅ…………」
端から見ている分にはかなりおもしろいが、当事者にとっては切実な問題だろう。
たぶんこのままでは住井は返事ももらえそうにないと思ったが。それは間違いだった。
「長森さん、俺じゃだめなのか?」
住井(シリアスモード)が言う。長森さんも落ち着きは取り戻せたとは言えないが何とか返事をする。
「そんなことはないけど……、でもわたしだよ、わたしなんかで…………」
「俺は長森さんがいいんだっ!」
そこで長森さんも臨海点に達したようだった。これ以上ないというくらい真っ赤な顔になる。
そこで彼女はやおら鞄をつかむと教室からダッシュで逃げる。
「長森さんっ!」
住井の呼びかけも虚しく長森さんは階段に姿を消す。住井は追いかけようと教室から出ようとした。
そこで俺は軽く右手を引く。

びぃぃん。

住井は仕掛けてあったロープに見事に引っかかる。
「うおぉぉっ?」

ぐわしゃあ、がらがらぁ!

積み上げられていたバケツに見事につっこみ沈黙する。
「住井? 何やってんだおまえ?」
「お前が罠を仕掛けるからだろうがっ!」
何とか起きあがりつつ住井が言う。
「違う違う。そうじゃなくてなに告白なんかしてるんだってことだ」
「ぐあ…………」
住井がうめく。よりにもよってこいつに、と言う顔をしている。
「南の失恋したとき、せめて半年はそっとしておこうと言ってたよな?三ヶ月経ってないぞ」
「……今は夏だ」
「それがどうした」
住井は拳を握りしめ力説する。
「すなわち! 恋の季節でもある! 熱い恋を生む季節だ! 男の本能の燃える時期!」
「さらに言うなら一過性のものである確率は高いな」
冷静につっこんでやる。たら、と住井の額に汗が流れる。気温のせいではあるまい。
「南が知ったらどうなるか……。あいつ根にもつしなぁ」
「…………月末まで待ってくれ」
結局、住井の恋の行方はともかく学食3回おごりで口止め料にした。



翌朝、住井にあったとき明らかに浮かれていた。
「どうした住井。何があった?」
住井は一枚の猫の絵封筒を取り出し俺に渡す。
『明日返事をします。 長森』
意味を略すればこれだけだが、この綺麗な字は長森さんのものだろう。幸せそうな住井。
断られることを全く考えていないその表情。
俺が手紙を返すと浮ついた足取りで席に着きそのままニタニタ笑う。
南がそれを見て声をひそめ聞いてくる。
「何か悪いもんでも食べたのか? 住井」
「ああ、周りにとっては悪いもん、不愉快きわまりないものに違いないがな」
俺の答えに南はさらに口を開こうとする、がそこで髭が登場する。
「んあー、席に着けー」
渋々席に戻る南。髭が出席をとる。
「中崎、風邪だったな。おや、長森は、欠席か?」
そこではっと住井がいつもの顔に戻る。確かに長森さんは席に着いていない。
「電話でもするか。七瀬、北川……」
住井は不機嫌な顔になっている。まぁ、仕方あるまい。



一時間目が終わる。長森さんは結局来ておらず住井の顔はとうとう凶悪になってくる。
俺はそっと教室を抜け出すと、職員室に向かう。長森さんのことを聞くためだ。
しかし遅かったか。教科担当の先生と髭がしゃべっている。て、休み時間は残り5分はあるはずだが?
「じゃあ、家を出たのには間違いないんですか?」
「んあー、親御さんの話ではそうだったが」
「おかしいですね」
「そうだなぁー」



俺は教室に戻ると住井、南、それに七瀬さんと里村さんが一緒にいた。不自然なメンツだ。
迷ったあげく俺は住井に話しかける。
「住井、長森さん、朝はいつも通りに学校に行ったそうだ」
「そうか……」
俺がそういうと四人で暗い表情になる。そして俺に一枚の紙を差し出す。
『長森瑞香は預かった。S・S・N 小島町支局にて待つ』
俺は顔も上げずに言う。
「どういう意味だ……。住井」
そういうと順に口を開く。
「こいつを他のクラスの生徒が持ってきた。頼まれたそうだ」
「それをあたしが住井に届けて……」
「俺も偶然一緒に見て……」
「…………わたしもです」
それでこの不自然な取り合わせか……。何となく納得する。
「でもどうしてS・S・Nが?」
「わからん。ただ、俺は小島町に行ってみる」
住井は決意を込めた瞳で静かに言う。
「ばぁか、事情を知ってお前一人行かせるか」
七瀬さんも額に手を当て言う。
「その通りよ、まったく」
里村さんも小さくうなずく。
「お、俺も…………」
南は里村さんの視線を意識しながらうなずく。
「お前ら」
住井が苦笑する。そして俺達は学校を抜け出した。
出席簿に早退の2文字を残して。

+++++++++++++++++++++++
住井救済企画。おそらく5話完結。

住井「間に合うのか、年内」

無理だ、当然な。受験あるし。

住井「じゃあ、いつ終わるんだ?」

三月ごろ(-_-;)。

住井「待てぃ。それに感想はどうなる?」

結構厳しいかと……。そんなわけですみません。感想は少なくなると思いますんで。

住井「書けよ。ちゃんとな」

うう……。ではいつものYOSHIと愉快な仲間達をどうぞ。


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12/13午前八時

それはいつもと変わらぬ朝になるはずだった。
プルルル、プルルル
YOSHI「もしもし、どなたですか?」
友人N「俺だ、Nだ」
YOSHI「おお、どうしたこんな朝から」
友人N「すまん、Kを経由しておまえからかりたMOディスク割ってしまった」

ぱしっ。おれとNとの友情に大きなひびが入った。

YOSHI「……データはテキスト二枚しかとっていないのに(;_;)」
友人N「3週間分のSSがぱあになったなぁ(笑)」
YOSHI「笑い事じゃねぇ!」
と、言うわけで感想です。

偽善者Z様>感想ありがとうございました〜〜。浩平犯科帳もいよいよ不可視の力の正体ですか。      楽しみです。


WILYOU様>感想ありがとうございました〜〜。住井補完計画。ナイスな計画(笑)。思い切り楽しませてもらいました。

友人N「感想くれた人のしかとってなかったのか?」
YOSHI「いいや。最近忙しくてフロッピーに入れて持ってきてもらった分だけなんだ(;_;)」
友人N「人の家からつないでるもんな、お前。ちょっと遊びに行ってつないでこいよ」
YOSHI「仕事で使っている人になぁ、そういつも頼めんだろ」
友人N「ま、書ける分だけ書けば一応の礼儀はO.K.だろ」
YOSHI「お前のせいじゃ、阿呆っ!!」

次こそは必ず、感想をちゃんと書いてやる!うぅっ(T_T)

その日、「塗り仏の宴ー宴の支度ー」をMOの弁償の代わりに買わせたYOSHIだった。

98,12,14