| 【16】 蛍…その天然（第46投稿） |
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「…で、どうするんですか？ 岡田先生！」 「う、うむ…」 借り物競走の審判員である私は今、決断を迫られている。 いや、それにしても参った。普通、「光るモノ」を持って来いと言われて、 校長先生を引っ張って来るだろうか？ 「先生、何度も言いますけど、やっぱり失格にした方が…」 「まあ待て。すぐに結論を出す」 可否を決めあぐねている理由は二つある。 一つは、校長を連れて来た生徒が月城だということだ。 担任でもある私は、彼女がどういう生徒なのかをよく知っている。 この子は決して、悪意から校長を連れて来たわけではない。保証してもいい。 純粋に…そう、ただ純粋に、「光るモノ」を持って来ただけに過ぎないのだ。 その証拠に…見ろ、月城のあの顔を。自分が一体何をやらかしたのか、 まるで分かってないといった表情じゃないか。 正直なところ、私はこの月城の“健闘”を認めてやりたいのだ。 …もっとも、これが例えば私の甥の正栄とかだったりしたら、即失格にした後に ゲンコツの一発でもお見舞いしてやるところなのだが。 もう一つの理由とは、当然のことながら校長ご本人だ。 お約束と言うか何と言うか、自分がハゲであることをそれはもう たいそう気にしておられる。必然的に、この「光るモノ」と書かれた紙を お見せすることになるだろう。実際、ゴールなされた時、 「その紙には何と書かれておったのかね？」 などと興味津々のご様子であったし。そして今も、我々係員の方を チラチラと見ている。よっぽど、何故自分が抜擢されたのかを お知りになりたいのだろう。 「でも、どっちにしたって校長、怒るッスよねぇ…」 「それは、まあな…」 ウチの校長、普段は温厚で、なかなかの人格者として知られていて、 生徒達からも大変慕われているのだが、自分の頭髪のことに触れられると ムードが豹変する。しかも怒り方がクドイんだ、これが。 一般生徒、つまり月城から光りモノ扱いされたということだけでも マズいのに、しかもそれを我々係員が“審議の結果”認めてしまったとあらば、 一体どういうことになるのか。はっきり言って、想像したくもない。 「岡田先生、タイムリミットです…」 「あ、ああ。分かった」 …よし。私は覚悟を決めた。度合いが大きかれ小さかれ、結局は校長に 嫌な顔をされるのであれば、月城の頑張りを讃える方を選択しようじゃないか。 「みんな、待たせたな。月…いや、あの生徒の着順に変更は無しだ」 「えっ？ でも、それじゃ…」 「それと、もう一つ。この結論は私の独断だ。お前らは何も関与していない」 「先生…」 「お咎めを受けるのは…私一人で十分だ」 「ううっ、先生っ…！」 「岡田先生！」 「お前らのことは、決して忘れないからな」 「先生、いつまでもお元気で！」 「先生！ 行くなーっ！」 「先生、時間が押してるんですが」 「分かってるって」 数名のノリの良い連中のおかげで、どうにか心の準備は整った。 まあ、何とかなってくれることを期待するか…。 「月城、よく頑張ったな」 「あっ、先生。はいっ、ありがとうございます」 「おお岡田君、早く教えてくれ。一体その紙には何と書かれておったのかね？」 「ああ、それは……これです！」 私は例の紙を、校長の眼前に突き出した。 「…『光るモノ』だって？」 「ええ、そうですとも！」 月城…お前は何も悪くない。 たまたま、校長が太陽の真下にいただけなんだ…。 「……」 「……」 「っふぁ〜〜〜〜っはっはっはっはっ！ こりゃ面白いわい！」 「い！？」 「キミ、月城君と言ったかね。なかなかいいセンスしとるよ。うん」 「えっ？ そ、そうですか？ あ、あははは…」 これは一体どういうことだ？ 思わず、「校長！ お気を確かに！」とか言いかけてしまったじゃないか！ 「うむ。確かにワシの姓は『小羽田（コハダ）』だからな。 まあ“光る物”と言えなくもないが…。はっはっはっ！ それにしてもこりゃ傑作だ！ わーっはっはっはっはっ」 校長はひとしきり笑った後、自分の席へ戻って行った。 「……」 「……」 「なあ、月城」 「は、はいっ」 「…そういうことだったのか？」 「えっ？ い、いえ…。あのぅ…」 「…頭、だよな？」 「はい…」 ＜完＞ *********************************************************************** ＜感想＞ →→[いちのせみやこ]様・・・・【お・も・い・で】 …後書き見るまで、何のことやらさっぱり分かりませんでした。（＾＾；； そう言えば本編で、そんな名前も書いてあったっけなぁ…。（＾＾；； 全然関係ないですけど、おそらくこれは「放課後、教室でやっちゃった」ゆえに バッドエンドになった設定でしょう。（笑） →→[から丸＆からす]様・・・・【水車小屋】 またも「御伽話」な短編ですね。 あの妖精は「座敷童子」の一種みたいなものだったんでしょうね。 →→[スライム]様・・・・【多重人格少女 - MIORIN -】 あの「澪りん」は、かようにして誕生したんですね。（＾＾；； いつぞやのＳＳの、「このＳＳの主人公は『澪りん』であって、『澪』ではない」 という記述は、これを意味していたんですね。（笑） それにしても、“堂々と喋ってる、澪と全く同じ容姿の少女”というのも 何だか萌えちゃいますね。（爆） →→[変身動物ポン太]様・・・・【温泉ばとるろいやる！（１３）】 …まさか本当に七瀬以外のヒロイン全員が布団に潜り込んでいたとは。（笑） 俺が今後の活躍に注目してるのは繭かな。なんてったって、アドバイザーが “オトナの女”だし。（爆） これはいずれ、長森や茜にとって 大きな壁となるでしょう。（笑） →→[神凪了]様・・・・【ＯＮＥｙｅａｒｓ Ｄｒｅａｍ】 最初の４行、「長かった」と「短かった」の対比が印象深かったです。 あと個人的に、浩平が帰ってきたことが意外でした。（＾＾；； 途中まで読んでて、絶対にバッドエンド後だと思ってたもので。（笑） →→[みのりふ]様・・・・【清水なつき人気向上計画】 身も蓋も無いこと言ってるなぁ。（笑） なつきね。俺は結構好きなんですけどね。 何か…（ユーザーに）人気が無いというより、嫌われてますね。（爆） ＫＩＤへの不満が全て彼女にぶつけられているような感じで。 それだけは、本当にお門違いってやつですよね。…って、脱線脱線。（＾＾；； ＞人気向上 …というより、“今”支持してくれているファンを大事にして、 もっと自分を好きになってもらいなさい。 なつきの場合、まずはそれから。（＾＾） …って俺、どこかのプロダクションの手先みたいだな。（笑） →→[ＰＥＬＳＯＮＡ]様・・・・【虹（第１話）】 「徐々に忘れられていく」という事実に直面して、それに 対してどうしていいのか分からないといった雰囲気が 感じられます。これから浩平はどうなるんでしょうか。 *********************************************************************** ＜あとがき＞ よく分からなかった方、すみません。（＾＾；； いや、分からなくて結構です。（爆） しょーもないし。（笑） 蛍が身内（桑原とか七海とか）以外の者に対して、その天然ぶりを 発揮するエピソードって、他にありましたっけ？ いや、あったとしても、これのインパクトが強すぎて、 忘れちゃってるんだろうなぁ…。（笑） ＞（女） 案外、誰もやらないものなんですね。（笑） ＜宣伝１＞ 作家、読者を問わずSS掲示板関係者の交流を目的とした掲示板です。 ちょっとＳＳコーナーには書き辛い私的なあとがき、特定の作家さんや ＳＳに対する意見など、その他何でも気楽に書き込んで下さい。（＾＾） ↓ 【刑事版】 http://www67.tcup.com/6717/denju.html ＜宣伝２＞ 自分のホームページです。（＾＾；； ９５％、「ＳＳコーナー」というサイトで占めているような ページですが、よろしければどうぞ〜。 ↓ http://www1.ocn.ne.jp/~chanki/ |