一方その頃…広瀬(第39投稿)  投稿者:WTTS


人気投票の最終結果が明らかになった。
その内容は以下の通り。

_________________________

    1位 : 七瀬留美  12票
    2位 : 長森瑞佳  10票
    3位 : 里村 茜   8票
    4位 : 稲木佐織   5票
    5位 : 広瀬真希   4票
    6位 : 青井美由紀  1票
    6位 : 早田優子   1票


       (仮入選)

       赤上理恵
       加山淳子
       水野奈緒子
       村田愛美
       山本佳奈
       
__________________________


それでは、今回で「第13話」となります。(礼)


*********************************************************************************


   <12月5日>


 (その3)


広瀬「…………」
住井「ふっ…。広瀬よ、声も出ないようだな」
広瀬「…………」
住井「まあ今回の結果は、このオレでさえも読めなかった部分が
   結構あるしな」
広瀬「…………」
住井「このクラスの野郎連中の奥深さを改めて実感したってとこだな」
広瀬「…………」
住井「おい、どうした。5位に食い込んだのがそんなに嬉しかったか?」
広瀬「…………あのさ」
住井「何だ」
広瀬「『他のクラスは交えなかった』って言ったわよね」
住井「ああ。この住井護に二言は無い」
広瀬「私、疲れてるのかな…。票数の合計が男子の人数を軽く超えて
   いるように見えるのよね」
住井「大変だな、そりゃ」
広瀬「おまけに『仮入選』なんてフザケた幻まで見えるし、ちょっと
   休んだ方がいいかも」
住井「そうか…。一日も早い復帰を願ってるぞ」
広瀬「…………」
住井「…………」
広瀬「…………引っ叩いていい?」
住井「今こそ全てを明かそうじゃないか」

そういうと住井くんはズボンのポケットから一枚の紙キレを
取り出した。

広瀬「それは…?」
住井「これが今回使用した『投票用紙』だ。見せてやろう」
広瀬「ふ〜ん…」

投票用紙を受け取ると、そこにはこんなことが
書かれていた。

__________________________

  本命(必須):
  応援    :
  注目    :

   必ずフルネームで記入すること。
   同じ名前を書かないこと。

   【秘密は絶対に厳守します】
                   住井 護
__________________________


広瀬「…………」
住井「再度、声も出ないようだな」
広瀬「これは……考えたわね……」

住井「見当ついてると思うが、『本命』は1つで1票、『応援』は2つで1票、
  『注目』は3つで1票の扱いだ」
中崎「そして惜しくも『応援』や『注目』で名前を出されつつも1票に
   満たなかったのが『仮入選』ってわけさ」

あら、発案者様のご登場ね。

中崎「いや〜しかし、これほどまでに凝った内容になるとは思わなかったよ。
   さすが住井、感服だね。七瀬さんは一位になるし、言うこと無しだ」
住井「おう! だがまだまだこれからさ!」

そして二人はガッチリと硬い握手を交わした。

広瀬「それにしても…」

暑苦しい友情劇に浸っている男二名から目を逸らし、
私はもう一度投票用紙を眺めた。

本当、コレは凄いわね。
男子のニーズをほぼ完璧に満たしていると思う。

例えば里村さん一筋ならば、本命の欄にバシッと一言「里村 茜」って書いて
提出すればいいわけだし、更に、『佐織が好きなんだけど長森が里村に負けるのは
悔しいし、もちろん七瀬も気になるところだ』なんて場合、もし一人一票制なら
一週間かかっても結論が出ないところでしょうけど、今回の方式なら

__________________________

  本命(必須): 稲木 佐織
  応援    : 長森 瑞佳
  注目    : 七瀬 留美
__________________________


で収まっちゃうもんね。下手に「1位・2位・3位」だなんてあからさまに
ランク付けして余計な混乱を招かないようにしているのも重要なポイントだわね。 

しかもこの投票結果の票の合計数から察するに、ほとんど全員の男子が
『応援』『注目』の欄のお世話になったと見えるわ。
総じて、この人気投票は大成功だったと言えるんでしょうね。

住井「おい」
広瀬「え?」
住井「もういいか? それ」
広瀬「あ、はいはい。ありがと」

投票用紙を住井くんに返した。

広瀬「自己評価で100点満点ってとこかしら?」

ついでに、半ば冗談まじりで総評を訊いてみた。

住井「いや、89点だな」
広瀬「へぇ…。じゃあその減点11は何?」
住井「お前が今見てた、これだよ」

そう言って、例の投票用紙をヒラヒラとさせた。

広瀬「それが、何なの?」
住井「ちゃんと人数分用意したんだが、使い切れなかったんだ」
広瀬「余っちゃったわけ?」
住井「ちょっと、不正を働いた奴がいてな」
広瀬「えっ!?」
住井「本来なら極刑に処すところなんだが、今回だけはオレに免じて
   この程度の権利剥奪で許してやることにした」
広瀬「……そ、そのことを本人は知ってるの?」
住井「知らないし、教えてやろうとも思わん」
広瀬「そうなんだ…」
住井「……………………ん? ちょっと待て! 広瀬、お前…」
広瀬「えっ?」

キーーーーンコーーーー…

住井「い、いや、やっぱりいい。何でもないぞ」
広瀬「…?」
住井「まあとにかく、今回の詳しい内容は他の女子には……な?」
広瀬「ええ、大丈夫よっ」

「安心しなさい」という意味合いをタップリ込めた笑みで
そう返事をして、自分の席に戻った。

 ・
 ・
 ・

授業中。

何はともあれ、住井くんは折原くんのことを知ってたんだ…。
でも私に言わせれば、もっと決定的な処罰を下してもいいと
思うんだけど、そこはもう男同士の問題。私が口を挟むべき
領域じゃあないわね。

ある意味「被害者」とも言える住井くん自身が許したっていうのに、
本来は部外者のはずの私がいつまでも例の不正行為のことを
気にしているわけには行かない。
この瞬間をもって、私は妙なわだかまりを一切捨て去ることにした。

少なくとも、折原くんに対しては…ね。

その彼の前に座る、いまだ嬉しそうな笑みが抜け切っていない
青髪ツインテールの美少女転校生に視線を向けた。

ふっふっふ。そうよ、七瀬さん…。
男子側の不正にそれなりの処分が下された以上、女子側の不正を
このままうやむやにするわけには行かないわよねぇ…。

広瀬(同じ、人気投票に関わった女として…)

私はいわゆる「指ピストル」を、誰にも気づかれないよう
こっそり七瀬さんに狙いを定めた。

広瀬(七瀬さん……あなたは……この私が……)

バンッ

広瀬(裁く!!)

…………。
………。
……。


結構アホよね、私も。




    (つづく)



*********************************************************************************


  <あとがき>

実は、もうちょっと(12月5日が)続きます。
これ以上長くしたくなかったので切ってしまいました。
今週中には書き込みますので、感想はその時に書かせて
いただきたいと思います。(礼)


*********************************************************************************


  『刑事版』

いやホント、読者の皆さんもお気軽にどうぞ。(^^)

http://cgi-space.to/~sin/bbs4/gagaga/denju.html