バカ女 (第28投稿) 投稿者: WTTS
(注)

「一方その頃」とはSS的に全く無関係です。
…………………………ホントだよ。(笑)


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<前編…………か?>



「ただ時間が止まっているだけなのよ」
「…え?」
「あの時からさぁ…あたしの中では時間が止まっているだけなのよ」
「…?」
「ずっと、あたしだけは、あの時の中にいたいんだよね…」


やっぱり、七瀬は変わってしまった。

まあいろいろあって、私たち二人はこうやって一緒に下校するまでの仲になっている。
私だけじゃない。 私の仲間も、七瀬を一人の友達として認識するようになった。
七瀬が私たちのグループの中に入ってワイワイやっているという光景も
そう珍しいものではなかった。

七瀬が髪型を変えたとき、最初は単なるイメチェンかと思った。
クラス内でも「大人っぽくなったね」とか「慎ましい感じがするよ」とか
いろいろ評価が出されていたけど、やっぱりみんな、『前の方が可愛かったのに…』
という声を押し殺しているようだった。

それからしばらくの後に、七瀬は本当に変わってしまった。
生気が感じられないというか何というか。
休み時間も一人でぼ〜っと窓の外を眺めて過ごすだけのことが多くなって。

それに、人と接する気が全く失せてしまったようにも見える。
加えて、あのウワサ。
これまでに幾度となく七瀬にモーションをかけてきた男子連中も、
まったく興味を示さなくなっていた。
それこそ、「関わり合いになりたくない」と言わんばかりに。

女子だって例外じゃない。
きっと周りの友達に促されたんでしょう。あの長森さんでさえ距離を置いている。
私たちのグループに至っては、「今の留美ちゃん、キライ」なんて
歯に衣着せぬコもいる。

私はというと………………もちろん昔の七瀬の方が良かったに決まってる。
他愛ないことですぐに口論しては住井くんあたりに「相変わらず仲いいな、お前ら」
なんてからかわれて、カラオケではデュオを組んで、一緒に下校すれば寄り道を
しない日なんて無かった、あの頃の七瀬の方が。

だから、私は悲しかった。
七瀬は全然気づいてなさそうだけど。
実際にはそんなことを全然思ってなかったとはいえ、この私が
『もし私なんかに気使ってるんだったら、やめてよね?』
…なんて、自分を卑下するような発言をしたことを怒ってくれなかったことが。

そりゃあ七瀬を刺激しようと思って敢えて言ったことなんだけど、
我ながらこの発言内容はヒドいと思う。 七瀬のことを全く信用してないみたいじゃないの。
もし、以前の七瀬に対してこんなことを言ったら、まず平手が一発飛んできて、
目に涙を浮かべられながら、いや、あるいは怒り心頭に達しながら、
『見損なったわ。そういうコトを言うヤツだとは思わなかった…!』
…とか、きっとこんなドラマじみた展開になっていたと思う。

とはいえ、「一緒に帰ろっか」という私の誘いに応えてくれるだけ
まだマシなのかも知れない。 それでももう七瀬とどこかへ寄り道する
なんてことは叶わない。 このコには行くべき場所があるから。

「あ…じゃあね、広瀬」

だから、今日もここでお別れ。

「…………待って」
「え…?」

烏滸がましいのは十分わかってる。

「明日さ…、朝からいるんでしょ? 創立記念日だもんね」
「うん……」

あの場所にいる以上、七瀬にとっては誰もが邪魔者なんだってこともわかってる。
でも…

「付き合っても…………いいかな?」

やっぱり、私は七瀬ともっと話がしたい…。

「…………」
「…………あ、駄目ならいいんだ。ごめんね、バカなこと言って」
「ううん、いいわよ……」
「え、本当…?」
「うん」

どういう理由でOKしてくれたのかは分からないけど、
とにかく私にとってはありがたいことだった。

「よし! じゃあ何か差入れ持ってくわね。私の手作りのっ」
「あはは、期待はしないでおくわ」
「前はちょくちょくクッキーもらってたしね。まあ大した物は作れないけど」
「どうでもいいけど、完食できる程度の味にはしてよね。最低でも」
「ふふん、見てなさいよ〜。『失礼なことを言ったあたしを許してください真希さま』
って言わせてあげるわ」
「やれるもんならねっ」


本当に、楽しみにしてなさいよ。
あんたのクッキーに感化されて、私も少しは料理の勉強したんだからねっ。



(後編につづく………………………………………………………………かも)



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<感想>

…は、また明日の投稿(替え歌です)にてと思ったのですが、まぁ、
「初めまして」ということで…。(礼)


→→[Kim]様・・・・【永遠の中で … Visions】

これは…永遠の世界ですか。
茜EDにおける、「あの1年」の真っ最中ですね。
向こうの世界に行っている間、自分が築いたはずの絆の記憶も
曖昧になっているというわけですか…。
最後の「この街に戻って来れるかも知れない」というところ、
こいうことが分かりかけてきただけでも、きっといつか
本当に戻って来れるキッカケみたいなものになってほしいものです…。


→→[楓鳥 瑠留]様・・・・【そして輝かなかった季節へ】

「ドミノ倒し」みたいですね。展開が。(笑)
個人的に一番気に入ったのは瑞佳の反応です。
「虹を描きながら」…爆笑。
これSS、もしアニメ化されたら相当笑えるものになると思うんですけど…。(笑)
そして最後の七瀬、何事も無かったかのように平然としているのがイイ感じです♪


→→[ヴラド]様・・・・【三本立てなの】

>1

いちいちペラペラめくってカウント…実に澪らしくって良いです♪
でも椎名、なぜにそれほどまでに格闘に強いんだろうか…?
あの七瀬をギブアップさせたくらいだから、「力」も相当なんだろうし。(笑)
何はともあれ七瀬、ご愁傷さまっ。

>2

澪のサングラス姿というのも一度拝見したいですね。
それはそれはもう、絵にも描けないくらい魅惑的そうですね〜。
そして最後…やっぱり澪はいい子ですね。だから可愛いんだ、澪は☆

>3

これを読んで「ギクッ」となったのは俺だけじゃないはず…。(苦笑)
だから、ノーコメントです。(笑)


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<あとがき>

要するに『出来心SS』です。(苦笑)
「あのシーンのあの二人」をどうしても書きたくなったものでして。
この展開については、内心「待てや、こら」と思われる方もいらっしゃるでしょうが
まぁ、これも一つの『解釈』ってコトで大目に見て下さいませ。(礼)

後で自分で読み返してみたら、これで一つの物語が完結してるんじゃないか?って
思えてきまして、後編を書くかどうかは本当に思案中だったりします。(苦笑)

それでは、失礼いたします★

http://cgi-space.to/~sin/bbs4/gagaga/denju.html