一方その頃…広瀬(第15投稿) 投稿者: WTTS
(注)

聞きなれない名前の女子4名は、全員広瀬の友人、すなわち
本編で折原が言うところの「取り巻き」ということでご了承
願います。
第1話で、一応性格付けとかしてしまったんですけど、近いうちに
また改めて書いた方が良いかな……?

それでは、今回で「第5話」となります。(礼)


***********************************************************************

<12月2日>


ジリリリリ………!

朝。

広瀬「う…う〜ん…」

けたたましい目覚し時計の音で目を覚ました。

ジリリリリ…………カチッ
とりあえず、うるさいので止める。

広瀬「も…もうそんな時間なの…?」

半分閉じかけた瞳を懸命にこらし、枕元の時計に焦点を合わせた。

広瀬「………嘘でしょ?」

…6時ちょうど。
いつもより1時間以上も早いわ。

広瀬「う〜…一体どこのバカよ!? こんな時間にセットしたのは…!」

いくら怒っても、起きてしまったものは仕方ないので、二度寝することにした。

(とんだ目覚めね……もう、お休み!)

勢いよく再び横になり、瞳を閉じた5秒後に、そのことを思い出した。

ガバッ!!

広瀬「そうよ……日直…!」

こんな時間に目覚ましをセットしたバカというのは、
他でもない私自身の事だった。

(昨日、確か髭先生は「普段の日直よりも早くに来てくれ」って言ってたわよね…)

その『早く』というのがどの程度のものなのかを聞いておくべきだった。

(とにかく、ここは素直に起きた方が利口のようね)

一度大きく伸びをして、カーテンを開ける。

ザーーーーーーーーーーーー!

広瀬「…………ま、覚悟はしてたけどね」

中崎町を豪雨が襲っていた。
稲光と轟音が、そう長くはない間隔で繰り返されている。

広瀬「これは……ちょっと止まないわね」

窓越しに見える黒い雲と激しい雨に見切りをつけ、部屋を出た。

さすがにこの時間では家族の誰も起きてはいないので自分で適当に
朝食を摂った後、洗顔、歯磨き、朝シャンなどを一気に済ませ、再び
自分の部屋に戻って制服に着替えた。

広瀬「準備完了!……っと」

ふと時計を見ると、7時だった。

(うん、いい時間だわ。 さすがに今日は教室一番乗りね)

これくらい早ければ、髭先生も文句は言えないだろう。
早速出発しようと靴を履き替えたところで、起きたばかりの
母から声がかかった。

母親「真希、どうしたのこんな早くに…」
広瀬「あら、おはよう。 今日は日直なのよ」
母親「日直にしても、早すぎるんじゃない?」
広瀬「何だかわからないけど髭先生のご要望なの。 それじゃ私はもう行くからね」
母親「はいはい、気をつけてね…」

家を出ると同時に、急いで傘をさす。
それでも少し、髪の毛が濡れてしまった。

広瀬「う〜…こんな時ばっかりは、この制服を怨むわ…」

我が校の制服のスカートは何故か、まるで真下から風でも吹いているかのように
『膨らんで』いるため、どうやっても傘からはみ出てしまい、雨の日には必ず
どこかしら濡れてしまう。

広瀬「こんな形のスカート、ウチだけよね。 誰かのシュミかしら…?」

などと独り言を言いながら、早歩きで学校へと向かう。
歩きなれた町並みを傘の下から眺めながら、私はあることを思い出して
ふと足を止めた。

住宅が立ち並ぶ中にポッカリと空いた空間が、今私の目の前にある。

(今日も、きっといるのよね……あの子)

あの子……クラスメート、里村 茜。

(せっかくだから…ちょっと立ち寄ってみましょうか)

仮にも周りから「クラスの女子を仕切っている」と評価されている以上、
私は私なりに出来る限り、女子の皆とは友好的に接するようにしている。
淳子・佳恵・麻実・佳奈の4人とは特別仲が良いわけで、他の女子と仲良く
してないわけじゃない。 現に2名を例外として、クラスの女子は全員、私を
それなりに慕ってくれているという自信はあるし、実際そうなのよ。

その例外2名というのは、転入してきたばかりの七瀬さん、そして……
今、まさに私の目の前にいる彼女。

広瀬「今日も朝から精が出るわね」
里村「……」
広瀬「でもね、ラジオ体操の時間はとっくに終わっているのよ」
里村「……」

雨の中、この場所で、里村さんに話しかけるのは今日が初めてじゃない。
初めて話しかけたのは去年の夏、里村さんとは別のクラスだった頃よ。
登校中不意に、子供の頃よく遊んだこの場所が懐かしくなり、久しぶりに
入ってみたところで、自分と同じ制服を着た彼女に出逢った。

その時は、話しかけたのは良いものの、とても冷たく素っ気無い対応を
されて、「バカみたい。話しかけるんじゃなかった」なんて捨てゼリフ
を残してその場を去ったのよね、確か。
もちろんその時も、今日ほどはひどくなかったけど、雨の日だった。

そして2年生の今、里村さんと私はクラスメートとなり、彼女は私にとって
全くの他人というわけではなくなってしまった。
麻実からの情報で、里村さんが雨の日には必ず、なおかつ朝早くからこの場所で
遅刻ギリギリまで佇んでいるということが判って以来、私は気が向いたら
この場所で里村さんに挨拶をすることにしている。
どうせ登校の時は一人きりだから…。

広瀬「過去最高の豪雨じゃないかしらね」
里村「……」

里村さんがゆっくりとした動作で振り返る。

里村「…それで?」

相変わらずの素っ気無い反応だけど、別に気にはならない。
彼女がそういう性格の子だというのは承知の上の行動だし、それに別に彼女と
友達になりたくてこういうことをしているわけじゃないから。
でも、もし友達になれたのなら、それはそれで良いと思うけどね。

里村「私に用があるの?」
広瀬「……笑わせないで!」

里村さんのその言葉がカンに障り、つい声を荒げてしまった。
私は彼女の目を見据えながら続けた。

広瀬「『用があるの?』とはよく言ったもんだわ! そういう反応しか
してくれない人に用なんかあるわけないでしょ! これはただの挨拶よ!!」
里村「……」
広瀬「私はあなたと違ってバカじゃないの! 朝に出会ったクラスメートに
挨拶することくらい簡単なのよ!」
里村「……」

雨の空き地に緊迫したムードが流れる。
しばらくお互いの目を見据え合ったけど、里村さんの方が先に目を逸らし、
彼女はそのまま私に背を向けてしまった。

広瀬「ふぅ…。 じゃあね。 私はもう行くわ。 せいぜい遅刻しないようにね」
里村「……」

道路の方へ出るため、私は彼女に背を向けた。

広瀬「それと、言っておくけど……」
里村「……」

お互いに背を向けている。

広瀬「あなたがどう思っていようと、私はまた気が向いたら挨拶に来るからね」
里村「……」
広瀬「…それだけよ。 余計なお世話だけど、風邪ひかないようにね」
里村「…本当に……余計なお世話です……」
広瀬「もっとも、あなたが本当にバカだっていうなら、風邪なんか
ひくわけ無いんでしょうけどね」

その言葉を最後に、私は空き地を出て学校へと向かった。




7時45分(※1)、職員室…

広瀬「おはようございます」
髭「んあ〜、おはよう広瀬。 早速ですまんが、やってくれ」
広瀬「はい。それで、仕事って何なんですか?」
髭「んあ〜、言ってなかったか。 ガリ切り(※2)だ」
広瀬「……はい?」

……結局、最後の印刷にまで付き合わされてしまい、本来の日直の仕事も合わせ、
作業が完全に終了したのは 8時28分頃のことだった。




昼休み、教室…

山本「今日は久々に、5人全員揃って学食だね」
広瀬「本当、いつ以来かしら…?」
加山「確か、1ヵ月以上前のはずだわ」
細田「それよりさぁ…席…」
稲川「そうよ。急がないと!」
広瀬「そうだったわね。 淳子、佳恵、麻実、頼んだわよ!」
加山「OK! 私はカツカレーね」
細田「私はトンコツラーメンよ」
稲川「チャーシューメンがいいわ」
広瀬「任せといて!」

直後、3人は学食に向かって走った。
5人ともなると、さすがに席の確保が困難になるため、
大抵あの3人に「席取り」をしてもらう。 そして残りの私達2人で5人分の
メニューを運び、あらかじめ確保してもらった席で再び集合するという寸法ね。
その際、メニューの運搬を一回で済ませるため、『5人の時は、定食系は厳禁』
なんていう暗黙の了解まであるのよ。

広瀬「さて、それじゃ私達も……ん?」

佳奈の方を見た私の目に、ある光景が映った。

折原「…よお、奇遇だな。 せっかくだから一緒に食べないか?」
里村「……」

(あら? あの二人って、そんな仲だったかしら…?)

でもよく見てみると、折原くんが一方的に
里村さんに言い寄っているだけらしい。

山本「真希、どうしたの?」
広瀬「ううん、ちょっとボーッとしちゃっただけよ。 さ、私達も急ぎましょ」
山本「うんっ!」



学食へ向かう途中…

広瀬「ねぇ、佳奈…」
山本「ん、何?」
広瀬「折原くんって、女の子に手が速いタイプだったっけ?」
山本「う〜ん、よくわかんないな〜。 七瀬さんには、よく話しかけてるみたいだけど…」
広瀬「…確かにね。 あ、ごめんね、変なこと聞いて」
山本「ううん、気にしないで」



……その後私達は、『久々に5人全員で学食』という時間を大いに満喫した。



[<12月3日> へ続く]



***********************************************************************


(※1) 7時45分

珍しく早起きしてしまった浩平が、今まさに家を出たところである。


(※2) ガリ切り

僕らの担任、大物髭先生は、実はガリ版愛好者なのであった。
普段ならいつも自分でガリ切りをしていて、生徒にやらせる
などということは無いのだが、昨日の放課後、一世一代の急用が
入ってしまい、翌日配るはずのプリントを刷れなかった。
結局、今日の日直の生徒(広瀬)に任せるという手段を選んで
しまったわけだが、彼女にとっては迷惑千万なだけである。
内心、広瀬も頭に来てはいるが、

「ま、髭先生だもんね……」

などと半ば諦めの気持ちも交えて、鉄筆を走らせた。


***********************************************************************


ちょっと間が開いてしまった…すみません。
少なくて恐縮ですが感想は明日にでも書き込みます。
この場で書くと宣言しておいて申し訳ありません。(深礼)

…さて、次回は『御堂(男)』を出します。
御堂のファンはお楽しみに。(笑)


それでは、本日はこの辺りで★


……と思ったら何か、感想へのレスがある…。

>北一色さん

「百万石」……ワンズの清一色で、牌に書かれている漢数字の合計が
『百』を超えているもの。ワンズは「○萬」だから、【百万石】というわけです。
はっきり言って一般的にはあまり認められていません。 ま、雑学の一つとして。(笑)
あ、これへのレスは結構ですよ〜♪


***********************************************************************


…といったところで、「刑事版」へ、ズーム・インッ!!!!(指)

http://cgi-space.to/~sin/bbs4/gagaga/denju.html