一方その頃…広瀬(第12投稿) 投稿者: WTTS
(補足)

聞き慣れない名前(女子4名)は全て広瀬真希の友人、すなわち
本編で折原が言うところの「取り巻き」ということでご了承願います。(礼)
ちなみに、この投稿で第3話となります。


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<12月1日>

(前編)


結局、昨日家に帰った後も七瀬さんのことが頭から離れなかった。
どうしてこうまで彼女を意識してしまうのか、自分でもわからない。

(…ふぅ、どうかしてるわ、私)

よくよく考えてみれば、私は七瀬さんとまだ一度も話をしていない。
それなのに、猫を被っているだのそんなことはないだの勝手に推察するなんて
あまりにバカげているわ。

(そうよ。 こんな消極的にウジウジ悩んでいるなんて私らしくなかったわね。
七瀬さんと実際に話をしてみれば分かることじゃないの…)

広瀬「そう思わない? 住井くん!」
住井「だから俺は以前からそうだと言っているだろう」
広瀬「いい加減な返事しないでよ。バカ」
住井「そうか? お前とは以心伝心だと思ったんだが」
広瀬「どうして?」
住井「2年連続で同じクラスだしな」
広瀬「…………」
住井「ほ…ほら、席も隣の隣だしな」
広瀬「…………」
住井「………………すまん」

とりあえず、ウォーミングアップはこんなもんね。
問題の七瀬さんはというと……自分の席で窓の外を眺めている。
とっくにチャイムは鳴ったけど、髭先生が来る気配はない。
更にラッキーなことに現在、七瀬さんの周りには誰一人として群がっていない。
今がチャンスだわ。
私が七瀬さんの席に向かって歩き出したその時、

折原「よっ、おはよう、七瀬っ」
七瀬「んっ…うん…おはよ」

…先を越された。

今の勢いなら折原くんを押しのけてでも話しかけることが出来そうだけど、
何故かそんな気は起きなかった。

(ま…いいわ。 別に急いでるわけじゃないしね)

私が席に戻ったのと同時に、髭先生が現れた。




………。
……。
………。
…眠いわ。
特に嫌いな科目ってわけじゃないんだけど、どうも私はこの先生の授業と
相性が悪い。 眠いのは毎回のことなんだけど、今日のは特にひどい。

(仕方ないわね。 ノートは後で淳子にでも見せてもらおう)

私は机に伏せ、目を閉じた。 それと同時にどこからともなく

『ちょきちょき…ちょきちょき…』

という音が聞こえてくる。

(誰か紙工作でもやってんのかしら? でも…何か……
心地よい音だわ…………すぅ……)




キ−−−−ンコ−−−−…

あ〜あ、すっきりした。
思い切って寝たのは大英断だったようね。

「あれ、七瀬さん、なんかスッキリしたね」

…佳奈だ。 七瀬さんに話しかけている。

山本「なんかお下げが短くなったみたい」
七瀬「そんなことあるわけっ…あ…」

七瀬さんは自分の席の真下を見て目を丸くしている。
そこには、おそらく彼女のものであったはずの髪の毛が
無数に散乱していた。

(なるほど。 あの「ちょきちょき」っていう音はこれだったのね…)

折原「実に気持ち悪かったぞ。見ていたら、おまえの髪の毛が途中から、
ぷちぷちと千切れ落ちてゆくんだからな」
山本「な、七瀬さん、病気…?」

……あの子の感性も結構ぶっ飛んでるわよね。
あんなあからさまな出まかせを本気で信じてるのかしら。

(それはそうと、このパターンはひょっとして……)

どすどすどすどす…!
案の定、折原くんは七瀬さんに連行された。
私はもはや興味半分で二人の後をつけた。(…って言っても廊下までだけど)

七瀬「妖怪かぁっ、あたしはぁっっ!!」
折原「オレも初めて見たぞ」
七瀬「あんたが切ったんでしょっ! いつからあたしの席は床屋になったのよっ!!」



やっぱり彼女、折原くんにだけは大声を出すのね。
でもホントどうしてなのかしら。 もしかしてあの二人は
旧知の仲だとか…?

稲川「何見てんの?」
広瀬「ひっ…!」

後ろから不意に話しかけられた。

稲川「ちょ…ちょっと、何驚いてんのよ」
広瀬「え? あ…ちょっと考えごとをしててね」
稲川「考えごとって真希、さっきからそんな覗くような格好で何を見つめて………あ」
広瀬「………(マズいわ。 何か勘付かれたかしら…)」
稲川「……ねぇ真希、よく聞いて。 友達として言わせてもらうわ」
広瀬「な、何よ。改まって…」
稲川「折原くんだけは好きになっちゃダメなのよ」
広瀬「はあ?」
稲川「真希がそんな趣味だとは知らなかったけど、彼には長森さんがいるわ!」
広瀬「………………麻実」
稲川「真希! わかってくれたのね!?」
広瀬「…殴るわ」
稲川「冗談に決まってるでしょ。 でも、あの二人を見てたんじゃないの?
…って、もういないけど」
広瀬「まあね。 単に『よく二人でいるなー』って思ってただけよ」
稲川「確かにね。もう一部の男子からは妬みの声もあがってるって話だし」
広瀬「まだ二日目だというのに……まったく呆れるわ」

などと話してるうちに、次の授業の先生がやって来た。

…危ない危ない。何とかごまかしたわ。
まさか「七瀬さんが気になる」(変な意味じゃなく)なんて言えないわよね。

とにかく、次にこういうことをする時には もっと周りを警戒する
ようにした方が良さそうね…。


(つづく)


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あ、千乃幸さん 復帰おめでとうございますっ!!(祝)

ポン太さんは・・・・【仮復帰】ですか?(笑)
完全に復活なさる日をお待ちしています♪


それでは、本日はこれにて失礼いたします★