一方その頃…広瀬 (第10投稿) 投稿者: WTTS
<11月30日>

(前編)

「行ってきまーす」
いつもと大して変わらない時間に家を出て、学校へ向かう。
親しい友人が近所にいるわけではない私は、登校も下校も大抵一人である。
もちろん放課後の寄り道は毎日のように友達と過ごしているけど。

「そういえば、今日は転入生が来るんだったわね。 それも女の子の」
そんな独り言を言ってみる。
転入生なんて、この時期にしては珍しい。 きっと親の転勤か何かだわ。
「ぷっ、それにしても………」
よりによってウチのクラスとはね。
『騒がしいクラス ワースト3』と悪名高いこのクラスに転入してくる
なんて、その子も運が良いんだか悪いんだか…。
ま、確かに退屈だけはしないわね。「騒がしい」といっても治安が悪い
わけじゃないし。 私はどちらかというとこのクラスを気に入っている。
だから新メンバー…つまり転入生がどんな子なのかは、
何気に楽しみだったりするのよ。

校門に差しかかったところで声をかけられた。

??「おはよう、真希」
広瀬「あ、おはよう。 今日も一段と寒いわね。 嫌になるくらいに」
??「う〜ん、明日からもう12月だもんね」

この子は【山本 佳奈】
私の友達のうちの一人ね。
親切で、何かとよく気がきく子よ。 いわゆる良妻賢母タイプだわ。

山本「今日の転入生、どんな人なんだろうね」
広瀬「私も今、それを考えていたところよ」

登校者で賑わう中庭と下駄箱を抜け、他愛のない雑談をしながら
教室に到着した。 HRまでにはまだ余裕がある。
既に登校していた同じクラスのある三人の女生徒が、私達二人の姿を
確認するなりそばに駆け寄ってきた。

??「あー来た来た♪ ねぇ聞いて二人とも! 例の転入生ってかなり
かわいいコなんですって!」
??「そうそう! 何か一部の男子連中は既に今から歓迎パーティー
の企画も練っているみたいよ。 相変わらず賑やかな人たちよね」
??「かわいいのは別にいいんだけど。 おとなしいタイプの子
だったらちょっとかわいそうね。 物静かな子にはこのクラスの
雰囲気はキツいかも。 …って、これは考え過ぎね」

……発言した順に紹介するわね。

最初の子は【細田 佳恵】
とにかくよくしゃべる。 良く言えば明るくて気さくで、
悪く言えば騒がしいといったところね。
次の子は【稲川 麻実】
佳恵に負けず劣らずよくしゃべる。実はかなりの「情報通」でも
あったりするのよ。
そして最後に【加山 淳子】
いつも冷静沈着で成績は上位クラス。部活先では時期部長らしく、
なかなか人望のあるタイプだわ。 ちなみに、この私とは互いに
認め合う親友同士でもある。

以上の三人に、さっきの佳奈、そして私の五人で、
一つの『グループ(悪く言えば派閥)』が出来上がっている。
こんなこと自分で言うのも何だけど、私にはそれなりのカリスマ
みたいなものが備わっているようで、事実上私がこの五人組の
リーダー的存在となっている。

まぁクラスの中では比較的キャーキャーうるさい方ね。
だからなのかも知れないけど、クラスの全男子は私たちのことを
『広瀬と その取り巻き』なんていう表現をしているわ。
まったく失礼な話よね。 もちろんあの四人は自分たちがこの私の
取り巻き…つまり手下だなんて微塵も思っていないし、
それ以前に、もし私があの子たちを「取り巻き」だなんて目で
見ていたのなら、彼女たちがこの私を友達、そしてリーダー的存在
として慕ってくれるわけがないのよ。
わかってないわね、まったく……。 だいたい、一昔前の少女マンガ
のイジメッ娘とか、どっかの大金持の高飛車なお嬢様じゃあるまいし、
「取り巻き」はないでしょ、「取り巻き」は!!

稲川「真希!!!」
広瀬「わっ!!!!!」

……驚いた。 冗談抜きで驚いた。

山本「さっきから呼んでんのに、どうしたの? 考えごと?」
加山「何か悩みがあるんだったら遠慮なく私達に相談してよね。
何せこの五人、入学以来の付き合いなんだから……」
細田「そうそう♪ それに、真希がしっかりしてくれないと
私ら路頭に迷っちゃうじゃないの☆ なーんてね」
稲川「つまらない冗談でわけのわかんないプレッシャー与えて
どうすんのよ、まったく……」
山本「あははは……」
広瀬「ごめんごめん。 実は、もし佳恵が今度こそ本当に落第した
ときのための救済署名運動の段取りを練ってたのよ」
稲川「あーあー、それはかなり重要かもねー♪」
加山「なるほどね。 わかった、協力するわ、真希」
細田「………わ、笑えないんだけど」

………とまぁ、こういう子たちなのよ。

それからしばらく転入生などの話題で雑談が続き…

細田「あ、『遅刻デッドライン幼なじみコンビ』のご登場だわ」

折原くんと長森さんだ。 何か言い合っているけど、決してケンカ
しているわけじゃない。 既に見慣れた光景だわ。

山本「ということは、そろそろ席に戻った方がいいね」
加山「じゃあ真希、また後で」

私たちはそれぞれ自分の席について、
担任…髭先生を待つことにした。


[<11月30日>の後編へつづく]



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(ヒント)

この少し後、折原はユーザーの皆さんに対し、担任の「髭」について
説明する。 この「髭」に関するチップから、広瀬のこの後のシーン
へとザッピングできる。




みさき「……冗談だよ」

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<あとがき>

投稿10回目にして初の「正規SS(笑)」です。
いつかのおまけSSの続きを書こうとしてアイデアもそこそこ
あったんですけど、「この機会だ! 最初から創作しちゃれ!!」
という心境の変化(砕)でこういう結果になりました。(礼)
よろしければ、しばらくお付き合い下さいませ。

ちなみに今のところ、椎名を登場させる方向で構想を練ってます。

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少量で誠に申し訳ないですが明日にでもできる限り感想を書いてみます。
わけの分からん「おまけSS」も出来心で書いてしまいますかも……。

それでは、失礼いたします★