あなたは今誰とどこにいるの …と…が手を繋いで 盟約の言葉を交わしていたとしたら 「わたしたちずっと一緒にいようね」 幼なじみは二人ではなく三人だった 主演女優の心得は『舞台裏を知らないこと』 脚本家でさえ忘れているの 学校はいつも創立記念日 一番多くの時を共有していたのに 絆はほんの少し足りなかった 彼が最後に求めたのは彼女ではなかった ピースのかけたパズルはいつまでもそのまま 「わたしは誰を待てばいいのですか」 One is Another. ----- 「透からの手紙」 ----- 一通の手紙がある。 あの日以来会っていない、透からの手紙。 そっと封を切る。 「やあ、茜。 元気にしているかい? あの雨で風邪ひかなかったかい? …僕はちょっとの間君とお別れしなきゃならなくなったんだ。 だから、この手紙を送るよ。 もし暇があったら、読んでおくれよ。 いつだったっけなぁ… だいぶ昔の事だ… 僕と茜、詩子はいつも一緒に遊んでいたね。 とても幸せだった。 いつまでもあのままでいられると僕は思っていたんだ。 『わたしたち、ずっと一緒にいようね』 こう言ったのは茜と詩子、どちらだったっけ。 確か…いや、少なくても僕の中ではこれは詩子の言葉だったんだ。 そして、僕はその言葉を望んだんだ。 …いつまでもつづく世界を。 あの時から、僕の旅は始まったんだ。 …茜は知らないんだ。 最後まで覚えていたんだ。 今も、ずっと覚えているんだ。 だけど、知らないんだ。 …詩子は知っているけど忘れたんだ。 一番最初に忘れたんだ。 今も、涙を流しながら。 それでも忘れているんだ。」 そう。 言葉の本当の意味をわたしは知らない。 「結果として残ったのは、茜の痛みだけだった。 茜は泣いていたね。 別れの日、冷たい雨の中で。 何が起こったのかわからずに。 何をすればよいのかもわからずに。 茜には永遠にわからないんだ。 いや、わかってはいけないんだよ。 流れる時の中で輝いている茜達には。」 茜 「…」 「僕はずっと謝らなきゃならなかったんだ。 茜に、詩子に。 …特に茜には。 求めてはいけない絆にすがってしまった事を。」 ポタッ。 ポタッ。 それは頬を伝って流れ落ちる雫の音。 にじんだ文字。 にじんだ世界。 わたしには近く、透には遠かった輝く世界。 「だから僕は茜の側にいようとしたんだ。 茜の心がすこしでも癒されるなら。 …でもよかった。 茜には別に待っている人がいるんだね。 ずっと待ち続ける事ができるようになったん…」 茜 「ずるいです…」 茜 「透、とてもずるいです…」 茜 「またみんな引き受けていくんですか…」 もう読み続けることなんか出来なかった。 手紙を握り締め。 涙も拭かずに走り出す。 あの公園に。 昔、3人が盟約を交わした場所へ。 遠くに人影ひとつ。 ベンチに座った人影ひとつ。 …詩子だった。 茜 「詩子…」 詩子 「ん…茜…」 茜 「こんなところで何をしてるんですか?」 詩子 「…よくわかんない」 茜 (詩子…また忘れたんですか…) 茜 「隣、座っていいですか?」 詩子 「ん…いいよ…」 茜 「…」 詩子 「う…」 茜 「…」 詩子 「う…う…」 茜 「…こういう時は、大声で泣くものです」 詩子 「…いいの?」 茜 「…はい」 (CG指定泣きじゃくる詩子と無言で抱きしめる茜。二人の顔アップ) 詩子 「うわあぁぁぁぁぁん」 茜 「…」 詩子 「うわあぁぁぁぁぁん」 茜 「よしよし…」 詩子 「うわあぁぁぁぁぁん」 茜 (詩子…わたしの分まで泣いてくれるんですね…) 暖かかった。 泣きじゃくる詩子はとても暖かかった。 茜 「大丈夫…大丈夫です…」 詩子 「う…ひっく…」 茜 「きっと戻ってきますよ…」 詩子 「ひっく…誰が…?」 茜 「…みんなです」 詩子 「みんなって…?」 「じきに帰ってくるよ。 僕も。茜の待ってる人も。 …絆は確かにあったんだから。」 茜 「待ってる人、みんな」 茜 「想ってる人、みんな」 fin. -------------------------------------------- しょーとしょーとすとーりー。 エピローグ「Another」の最後の部分の補足です。 茜、詩子、透の間に盟約が存在したとしたら。 詩子がかなりのファクターを占めているんじゃないか、と。 …こういうことだったんですねぇ。 まあ前の書いた時にはすこしでも盟約の匂いをかいでくれればいいかな、 程度に考えてたんですけどね。 例えば詩子うんぬんを抜きにして、 単に「3人一緒にいたい」という昔の願いが 透が茜に特別な感情を持ってしまった時点で盟約として発動した、 という程度の背景でも別にかまいません。 いろいろなストーリーが想像できてその一つ一つがアナザーストーリーですの。 はい。 茜 「…ところで透はなんでまたいなくなったんですか?」 う…いやその…手紙形式の都合上… 単に…詩子を泣かしてみたかっただけだったりして… だって…あの二人…絵になるんだもん… 詩子 「きっと浩平たちを連れ戻しにいったのよ」 ナイスフォロー、そういうことにしておこう。 前作が流れ過ぎないうちに投稿するのじゃ。 感想はちょっとパスね。