エピローグ 「届いてください」 投稿者: 11番目の猫
------ エピローグ 「届いてください」 ------
繭 「みゅーっ!」
いなくなっちゃった。
繭 「浩平ーっ!」
いなくなっちゃったんだ。

一人で学校へ行くようになった。
みあっていう友達ができた。
毎日が楽しい。
みゅ〜♪

だけど。
今わたしが一番会いたい人はいない。
今のわたしを一番見てもらいたい人はいない。
みゅー…

12月。
今日はクリスマスイブ。
みあ 「ねえねえ繭、今日家でパーティーやるんだ。」
繭 「パーティー…」
みあ 「繭ももちろんきてくれるよね。」
みあのお誘いはいつも突然。
繭 「みゅー…」
みあ 「おいしいものいっぱいあるよ」
繭 「おいしいもの…」
みあ 「だから繭もおいでよ」
繭 「でも…」
みあ 「繭…もしかして用事とかあるの?」
繭 「う、うん…」
みあ 「そっかー。じゃ、しょうがないね」
繭 「ごめんね…」
みあ 「ううん、いいのいいの。急に言い出したわたしがわるいんだから」
みあ 「じゃ、残念だけど…いいクリスマスをねー」
繭 「みゅー…」

ごめんね、みあ。
約束なんか無かったの。
でも、今日は一人でいたい気分なの。

クリスマス。
サンタさんがくる日。
だけどね、サンタさんにお願いしてもプレゼントが来るとは限らないんだよ。
わたし、知ってるんだ。

もう何年も前…
その日、わたしはベッドの脇のお手紙にこう書いたんだ。
『おかあさん』
次の年になって。
わたしの家族が一人増えた。

今のお母さん、大好き。
膝の上で泣かせてくれたお母さん、大好き。
だけど。
あの日、お願いしたのはね…

だから、浩平をお願いするのはやめる。
だから、今年は何もお願いしない。
…一番欲しいものだから。

お母さんに、みあの家でパーティーがあるからと言って出かけてきた。
ごめんね、お母さん。
でも、今日はどこか行かなきゃならない所があるような気がするの。
繭 「えっと…ここをこう曲がって…」
みゅー。
違ったみたいだ。
繭 「えっと…えっと…」
あ…
かすかに見覚えのある路地。
この角の先…だと思う。
あった…
ぴんぽん〜
繭 「みゅーっ!」
ぴんぽんぴんぽん〜
繭 「浩平ーっ!」
ぴんぽんぴんぽんぴんぽん〜
繭 「浩平ーっ!浩平ーっ!」
確かこの家には浩平しかいないって…
ガチャッ。
ドアが開く。

由起子 「あら…?」
でも、出てきたのは見知らぬ女の人だった。
繭 「浩平…」
由起子 「…?どうしたの、お嬢ちゃん」
ここで逃げちゃダメ。
繭 「あの…浩平…いますか…」
由起子 「…どなた様ですか?」
繭 「…」
由起子 「…」
みゅー。
みゅー。
やっぱり逃げようかな…
長森 「あ、繭ーっ!」
前の学校のお姉ちゃんだ。
繭 「みゅ〜♪」
ぱふっ。
由起子 「あら、瑞佳ちゃん」
長森 「あはは、よしよし繭。こんな所に来て、どうしたの?」
繭 「みゅー…」
由起子 「瑞佳ちゃんの知り合い?」
長森 「あっそうですけど…」
由起子 「浩平って名前知ってる…?」
長森 「知らない…と思い…ます」
曇った瞳のお姉ちゃん。
由起子 「そう…」
由起子 「きっと誰か他の人の家と間違えたのね」
あってるもぅん…
このドアでいいんだもぅん…
この家の2階が浩平の部屋なんだもぅん…
佐織 「みずかー!何やってるのー!遅れるわよー!」
長森 「さおりー!今行くからちょっとまっててねー!」
長森 「繭、いい子だから知らない人の家のチャイムにいたずらしちゃダメだよ」
ちがうもぅん…
由起子 「繭ちゃん?よく見ると可愛い子ねー」
繭 「みゅー…」
長森 「この子の口癖なんです」
由起子 「わかってるわ。そうだ、これあげる」
そう言っておばさん(由起子さんっていうらしい)は私の手に柔らかいものを置いた。
…みかんだった。
長森 「よかったね、繭」
繭 「みゅー…、ありがと…」
由起子 「瑞佳ちゃん、友達待たせてるんじゃないの?」
長森 「あ、ごめんなさい…」
長森 「繭、一人で大丈夫?」
繭 「うー…うん…」
佐織 「みずかー!先行っちゃうわよー!」
長森 「あ…ごめんね、繭。また遊ぼうね…」
繭 「みゅ〜♪」
こう言うとお姉ちゃんは走っていった。
由起子 「それじゃあ繭ちゃん、いいクリスマスをね」
由起子 「…それと浩平ちゃんにもよろしくね」
それだけ言い残して。
懐かしいドアは音を立てて閉まった。
繭 「みゅー…」
いなくなっちゃったんだ。
どこにもいなくなっちゃったんだ。

気がつくと学校の裏山だった。
小さなお墓の前。
冬の夜は少し寒い。
由起子おばさんからもらったみかんをお墓に供える。
みゅー。
しばらくここにも来てなかったな…
ごめんね、みゅー。
毎日頑張ってるから。
ずっと頑張ってるから。

…ここで浩平と初めて会ったんだっけ。
いつのまにか涙が溢れてくる。

「本当に悲しい時は泣いてもいいのよ」
お母さんの言葉。
最後に泣いた日にもらった言葉。

いまだったら泣いてもいいかもしれない。
だけど…
もし泣かないでいられたら…
浩平は帰ってくるんじゃないかって…

だから。
空を見上げて。
お月様に向かって。
わたしは鳴いた。

(CGモノトーン指定。一声毎に卒業式以外の繭フルCGをランダムで切り替えて表示。)
(お好きなものを想像してください。愛を込めて)
みゅーっ!
  みゅーっ…
    みゅーっ…
      みゅーっ…
みゅーっ!
  みゅーっ…
    みゅーっ…
      みゅーっ…
みゅーっ!
  みゅーっ…
    みゅーっ…
      みゅーっ…
みゅーっ!
  みゅーっ…
    みゅーっ…
      みゅーっ…
みゅーっ!
  みゅーっ…
    みゅーっ…
      みゅーっ…

神様。お月様。サンタ様…はダメかもしれないからみゅーみゅー様。
誰でもいいからお願いします。
涙が零れ落ちませんように。
声が浩平に届きますように。
浩平が帰ってきますように。

わたしは鳴いた。

学校前のとある家。
みさき 「裏山で猫がないてるよ」
深山 「…クリスマスだからね」
みさき 「すごく悲しそうな声だね」
深山 「…クリスマスだからね」
みさき 「みんな優しい気持ちになれるね」
深山 「…クリスマスだからね」
みさき 「…雪ちゃん、酔ってない?」
深山 「…クリスマスだからね」

はぁ、はぁ、はぁ…
わたし泣かなかったよ…
わたし頑張ったよ…
届いたかな…

みゅーっ!
  みゅーっ…
    みゅーっ…
      みゅーっ…

こうして今年のクリスマスは終わった。

3月。
明日は卒業式だ。
いろんな人にありがとう。
そして、さようなら。

一年分の、思い出一杯。
一人で頑張った思い出一杯。
いろんな人にありがとう。
そして、さようなら。

繭 「みゅ…」
浩平 「よく頑張ったな、椎名」
繭 「みゅーっ!みゅーっ!みゅー…」
浩平 「卒業おめでとう」
繭 「お帰り…なさい…」
繭 「浩平ーっ!」
浩平 「よしよし」
繭 「浩平ーっ!」
浩平 「大人になったな」

悲しくなんかないんだよ。
うんと嬉しいだけなのに。
どうして涙が出るんだろう。
わたし、こんなの知らないよ…
知らなかったよ…

いろんな人にありがとう。
そして、おかえり。
ずっと側にいてくれる人。
わたしの頑張りを見てくれる人。
わたしが大好きな人。

fin.

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「叫び、それは愛」
某鍵の掲示板でわたしが見出した真実です。(縛)
きっとみなさん涙をこらえて叫んでいらっしゃるのでしょう。
…やっぱり違いますか。

え、繭はここまで複雑に考えていないって?
むーん。
繭の場合なあ…
感情は年相応に発達しているのに理性が追いつかないのか?
それとも感情そのものが幼いのか?
Moon…
Moon…
一応前者を前提に書きました。
てゆうか、後者だったら繭視点で長編なんてかかれへんわ。
ゲームではどっちかっていうと後者かもしれない。
SSなので許してください。

繭のトラウマってなんなんでしょうね。
とりあえず「サンタさんへのお願い」ってことにしました。
性格によってはあれ程度のことでも十分自分を責める要因にはなるそうです。
悪戯されたとか…
だって、ほらロリ多いし。(縛)
わたしはロリ度33.33%の普通の人です。(さらに縛)

さて、茜編エピローグを完成させねば…
SS用掲示板も新しいほうへ移動するんでしょうかね。
多分、その前にUpするつもりです。

感想
>kou様
浩平が忘れちゃうんですか。
忘れられるんじゃなくて。
やられました。
>だよだよ星人様
詩子が横から見ていても気持ちいいです。
惚れ直しました。
「新世界だよもん教」よすぎます。
はっ。もしかしてDTKって…だよもん地下教団?
ということは…OZ様や天ノ月様やだよだよ星人様は八将軍?
いいなあ。
>T.Kame様
南君、影うすいです。
彼は幸せになれるんでしょうか。
>KOH様
いいなあ、温泉。
誰か連れてってください。
>天ノ月様
みなさんよく食べますね…
>藤井勇気様
「ダメです。シュン君は僕のものです」
…って誰かが言ってました。
ちなみにわたしではありません。(笑)
>偽善者Z様
ついにあかされるお七の過去!
謎が謎を呼ぶ婦亜留後!
楽しみにしています。
ハムスターは学生結婚か…絶句。
>雫様
みゅー!みゅー!みゅー!
…繭は難しい。
>いけだもの様
さんまに練乳はかけないんですか?
ふっ、それでは真の茜様の境地には到達できませんぞ。

感想で疲れた…
じゃ、わたしは旅に出ます。

ごめんなさい。
ちょっと前に送ったのは自動スペース&自動改行がONでした。
というわけで送り直し。