夏のワッフル 投稿者: UMA
「おーい、茜」
「嫌です」
茜は速攻で拒絶する。



学校の帰り、下駄箱で茜の姿を見つけた俺は茜に声をかけたところだ。
「…って、俺まだ何も言ってないぞ」
「耕平のことだから、『今からゼロ3のロケテストを見に行くぞ』なんて無茶
をいうんでしょ」
茜は俺を無視して、靴を履き替えるとすたすたと歩き出す。
「そ、そんなことはないぞ」
「でも、先週もそんなことを言いながらKOF98のロケテストにつき合わさ
れたわ」
茜が非難するように俺を見る。前科があるって辛いなぁ。
「そうだっけ?確かあの時はまだロケってなかっただろ。ってことは『単にゲ
ーセンに行っただけ』ってことじゃねぇか。ん?でも、今日はもうロケってる
かも知れないなぁ…」
「耕平。やっぱり、ロケテストに行くつもりだったのね…」
あ…。
「いや、そんな訳じゃ…」
「さようなら」
「ま、まて。マジで違うんだって!」
俺は茜を追いかけながら声をかける。
「長森から聞いたんだけどな、山葉堂にまた新しいメニューが増えたらしいん
だ。それで茜を誘ったんだが…」
「本当ですか?」
茜は立ち止まって聞き返す。
「ああ、本当さ」
俺は答えた。ただし、情報のソースは長森ではなく住井だが。
「行きましょう」
立ち止まっていた茜が急に駆け出す。
「おい、待てよ。ワッフルは逃げないぞ」
いいながら俺も駆け出した。



「『我、新作ワッフルを手に入れたりぃぃぃ』!」
俺は見せびらかすようにワッフルの入った袋を掲げる。
「…恥ずかしいからやめて」
そういって他人のフリをしようとする茜。
「はっはっはっ。いいじゃねぇか、無事に買えたことを前進で現したかったん
だからさ」
「…」
茜は思い切り他人のフリをしている。
「おい茜?」
「…」
なおも他人のフリをする茜。
「ふーん。じゃあ、ワッフル食べないんだ?」
「…」
「食べないんだ?」
「…食べます」
恥ずかしそうに答えてついてくる茜。
可愛い奴だ。
「だろ?じゃ、どこで食べる?」
「公園」
「公園か…。天気もいいし、走るか?」
「はい」
そう言って二人は走り出した。



公園に着いた俺達は適当なベンチに座った。そして、俺は袋から一つワッフル
を取り出し茜に手渡す。
「はい、茜」
「ありがとう。真っ赤ですね、この新作ワッフル」
茜は手にした赤いワッフルを見つめながら言った。
「ああ『夏季限定!REDワッフル』って書いてあったからな。多分スイカか
なんかの色じゃないのか」
スイカ味のワッフル…自分で言っておいて何だが、『おいしいのか?』という
疑問が頭をよぎる。
「スイカ…ですか。ところで浩平は食べないんですか?」
「え、何を?」
「ワッフル」
「あ、ああ。そうだな…」
茜に言われて俺もワッフルを一つ取り出す。

 毒々しいまでに真っ赤なワッフル。
 俺の本能が『やめろ!』と警告する。…が、気のせいだろう。

「じゃ、食おうか」
「はい」
そう答えて二人同時にワッフルを食べる。

ぱく…。

「なんじゃこりゃぁぁぁ!!!」
脳天を突き抜ける、凄まじい辛さに俺は叫んだ。
食ってみた分かったが、表面の赤はタバスコ。さらに、自分のかじった痕をみ
ると、ご丁寧に中までタバスコで真っ赤…。
「あ、あかね…。こんなもん、にんげんのくうもんじゃないぞ…」
俺は死にそうになりながら茜に言った。だが、

 …ぱく。もぐもぐ…。
 …ぱく。もぐもぐ…。

茜は事も無げに食べてる。
「大丈夫です。私、辛いのも強いですから」
…ってそんな次元か?『りー50倍カレー』より100倍凄まじいぞ?
「…食べないんですか」
「当たり前だ。辛いワッフルなんて食えるか。くそー、住井の野郎〜!」
奴がワッフルの話題をふると思ったらこういうことだったのか!明日会ったら
ボコにしちゃる!!
「…住井君?」
ぱくぱく。茜はワッフルを食べながら聞いてきた。
「ああ。あの情報をくれたのは住井なんだ」
「さっき耕平、『長森さんが』って言った」
もぐもぐ。
「そ、そうだっけ?」
「そうです」
ごくん。
「う…。そういやそんなこと言ったような…」
「…耕平、残りのワッフル全部食べていいわよ」
そう言って、袋ごとワッフルを渡される。
「え゛…。いいよ、茜が食べなよ」
「私をだました罰です」
俺の全身から汗が滝のように流れるのが分かる。
「ば、罰ってなんのことかな〜」
「罰ゲームよ。当たり前じゃない」
いつの間にか背後にいた誰かが、俺をがっちりと羽交い締めにしてそんなこと
を言う。こんなことをする奴は…。
「ゆ、柚木か?!」
「あれ?何で分かったの?」
やっぱり…。
彼女は茜の幼なじみの柚木詩子。最近何故か俺達の周りに現れるのだ。
「て、てめえ柚木!離しやがれ!!」
「やだよーーーん。茜、今の内に折笠にそれ、食べさせて」
「はい。耕平、あーん、して」

『あーん、して』…と言われると恥ずかしいけど嬉しい…じゃなくって!

「おい、茜。冗談だろ?」
「いいえ、本気です。はい、あーん」
にっこりと微笑みながら茜が言う。思わずつられて俺も…
「あーん…ぱく…しまった!」
口を開けた所へワッフルが押し込まれる。
一瞬にして全身に駆けめぐる辛さ!!
「茜、次よ次!!」
「はい」
「まて、茜!まってくれぇぇぇ…!」
俺の言葉を無視して、茜は残りの激辛ワッフルも口の中へ運んだ…。



<おわり>
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どうもはじめまして。
駄文書きのゲーマー、UMA(『うま』って読みます)と言います。

SSははっぱのところでぼちぼち書いていましたが、タクティクスでも書き始
めようかと思います。

#東鳩のヒロインが殺意の波動全開で幼なじみの主人公をボコにするキレたS
#Sをよく書いてます>はっぱSS


ぢゃ、そういうこって。