Everlasting Days 〜終わらない日常〜 投稿者: Sasho
第1回 「入学式・1」

カシャアッ!
カーテンの引かれる音。同時にまばゆい陽光が瞼の裏を刺す。
「ほらぁ、起きなさいよーっ!」
がばぁっ!
いつものように長森がオレを起こすために布団を剥ぐ。
(よし、たまには素直に起きてやるか…)
そんなことを思いつつもまた浩平は寝てしまった。
どうやら、体はまだ眠ったままらしい。
「ほらっ、起きてってば浩平」
長森がオレの体を揺すっている。
ずるっ。
ごん。
(なっ何だ?今の擬音語はっっ?)
目を開けてみると視界が暗い。いや、むしろ真っ暗だ。
そしてなんだか顔面が痛い。
どうやら、ベッドから落ちて顔面から床にダイビングしてしまったらしい。
「あぁ〜」
背後から長森の声が聞こえる。
オレはようやく体を起こし、長森に罵声を浴びせかける。
「ばかっ、何てことをするんだ!」
「だって、浩平が全然起きないんだもん。不可抗力だよっ!」
「うるさい!わざとだろっ、言い訳するな!」
「わざとじゃないもん」
そんなやりとりをしていると、長森がふと我に返り
「って、時間!」
「んっ? 今日はまだ春休みじゃないのか?」
「春休みは昨日までだよ、浩平。 それで今日は入学式だよっ」
「ぐあっ、そういえば…。 で、時間は?」
そう言うと長森が「はいっ」と言いながら腕時計を見せてくれる。
8時20分。
「いつもながら、芳しくない時間だな」
「とにかくっ浩平、早く着替えてよ」
「わかったわかった」
そう言いながら制服に袖を通す。
「浩平、それ中学の時の制服」
「長森……。 実はオレ、中学を留年したんだ。だから今日から長森は先輩だけど、今まで通り接してくれるよな……」
そんなことを言いうと、長森は思いっっっきりため息をついて、
「わかったから、早くこっちの制服に着替えて」
と言い、制服を渡してくれる。今度は高校の制服だ。
「じゃあ、行こうか」
「うん」

高校への道を走りながら長森と話をする。これが中学の時から行われてきた登校時の日課である。
「まったく、こんなんじゃこれからの高校生活が思いやれるぞ、長森」
「そんなっ、浩平がちゃんと起きてくれれば余裕で間に合う時間に来たんだよ」
「そんなこといって、またオレを悪者にするつもりか?」
「そうは言ってないもん」
「いや、同じようなものだ」
「解ったから、明日からはもうちょっと寝起きをよくしてね」
「……努力はしてみる」
「うん」
そして高校の校門への直線をラストスパートをかけて走り抜けていった。

「おい、長森。 体育館ってどこだ?」
「……浩平の目の前だよ」
「おおっ、こんな近くにあったとは…。 『灯台もと暗し』とはこの事だな」
「っていうか、浩平が鈍感なだけだよ」
「今のは聞き捨てならないぞ、長森。 オレはこう見えても敏感な男ともっぱらの噂だ」
「誰が言うんだよ、そんなこと」
「オレだ!」
「はぁっ……」
「ところでもうすぐ入学式が始まるんじゃないか?」
なんて言うことを言ってるそばからチャイムが鳴る。
キーンコーンカーン……
「わぁっ、チャイムが鳴ってるよ、浩平」
長森がそう言うのを聞き流してオレは体育館に走り出す。
「待ってよ、浩平」
少し遅れて長森も走りした。

体育館の中に入るとまだ入学式は始まる前だった。
周りを見るとまだ2、3年生が並んでいる。
「なんとか間に合ったな。長森」
「勝手に走って言っちゃう何てひどいよ」
「いいじゃないか、間に合ったんだから。 それにしても、入学式に遅刻しそうになるのって俺たちくらいかな?」
「そうかもね」
そこへ、俺たちの後ろから猛スピードで何かが突進してくる気配を感じた。
「遅刻だ〜〜」
そんなことを言いながらさらに加速して走ってくる。このままでは俺たちとぶつかってしまう。
「あぶない、長森」
そう言ってオレは長森を盾にしてその物体に身構えた。
「えっ、ちょっ、こ、浩平〜」
オレの予想通り長森とその物体はぶつかった。
長森がオレの盾になって守ってくれたおかげでどうやらオレは無傷だ。
「長森、身を呈して俺を守ってくれてありがとう」
ふと、目の前を見ると少年と長森の2つの死体が転がってる。
「う〜っ、私を盾にするなんてひどいよ、浩平」
「うわっ、長森が生き返った」
「勝手に殺さないでよ…」
「すまん。 でもオレは『あぶない、長森』って言ったぞ」
「確かにそうだけど……」
「ところで、何が起こったんだ?」
「確か、男の子がものすごい勢いでぶつかってきたんだよ」
(どうやら、突進してきた何かとは俺たちと同じように遅刻しそうで走ってきた少年らしいな…)
「うっ…」
どうやら、その少年も気を取り戻したらしい。
「大丈夫?」
長森が声をかけてやる。
「ああ…。 あんたらも新入生か?」
「そうだ。おまえは?」
と言った瞬間、教頭らしい教師が
「これより第64回入学式を始めます。一同、起立」
と言った。
「話は後だ。とにかく空いている席へ行くぞ」
といって、オレらは新入生らしい人間がいる集団の一番後ろの席へ教師たちにばれないように進んでいった。

「ふうっ、何とか間に合ったな」
オレが一息ついていると長森がさっきの少年と話している。
「オレは『住井 護』って言うんだ。よろしく」
「私は『長森 瑞佳』。で、こっちが『折原 浩平』」
「こっちとは何だ、長森」
「いいじゃない、別に」
「良くない。だいたいだな、いつもおまえはオレに迷惑をかけるくせにだな、すぐ自分のことを棚に上げて文句を言う」
「それは浩平じゃない」
「何っ? オレはこう見えても気がきく男で世間に通っているんだぞ」
いつものように言い争っていると住井が
「おいっ、周りの注目を浴びてるぞ」
と言ってきた。
(確かに…。 教師をはじめとするみんなの視線が痛い…)
「それにしても、仲がいいな。二人とも」
「うん。幼なじみなんだ」
「腐れ縁ってやつだ」
「へえっ…。 そうだ、今日は俺たち3人の出会いを祝してカラオケにも行かないか?」
「でも…」
「昨日は大勝ちしたからな、金のことなら気にするな」
(あえて、何に大勝ちしたかは聞かないが、なんて頼もしいやつなんだ、住井。)
「おしっ。その話、乗った。長森も当然行くよな」
「浩平がそう言うんだったらつき合うよ」
「よしっ、じゃあ放課後に校門前に待ち合わせな」
「ああ」
住井と意気投合していると、長森が
「ちょっと、また周りの注目を浴びてるよ」
と言ってきた。
(いや、注目と言うよりは睨まれていると言う表現の方が正しいような気がする…)
「仕方ない、静かにしてようぜ。初日から教師に目を付けられるのは得策ではない」
「そうだな…」
こうして俺たちは真面目に(?)入学式を受けることにした。
しかたないので校長が永延と自分の高校時代の話をしている間、睡眠をとることにした。

つづく(?)

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予告 Everlasting Days 〜終わらない日常〜 第2回 「入学式・2」

入学式は無事(?)終わった。
しかし、この後にはクラス分けが待ちかまえている。
果たして、瑞佳と浩平はまた同じクラスになることができるのか?
そして、突然現れた謎の少年「住井 護」とは?
第2回をお楽しみに

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ONEらしい日常を書いてみました。
「次は七瀬か澪じゃなかったのか?」
と言う意見もあると思いますが、七瀬SSも同時進行で執筆中です。
多分、近日中に公開できると思いますので楽しみに待っていてください。
ゲーム本編ではあまり描かれていない運動会や防災訓練のような学校行事を
どのように浩平たちは過ごすのかを書いてみようと思ってます。
とりあえず、連載を予定していますが、どうなることやら…。
前回投稿した「新メニューが加わった日」について感想を書いてくれた人、
ありがとうございました。

また、Everlasting Days 〜終わらない日常〜についての感想もお待ちしております。