新メニューが加わった日 投稿者: Sasho
「ありがとうございました〜」
(うーん、今日はいつにもまして客が多いわ…)
そんなことを思いながら洋菓子屋「山葉堂」の店員である松本は客の応対をしていた。
(やはり新製品のワッフルが出たことが一番の原因かな?)
今日は、ワッフルに新メニューが加わったのだった。
ストロベリーとココナッツそして…練乳蜂蜜ワッフル。
この店のワッフルはとてもおいしくて、特にワッフルの生地のふわふわ感がいいと女子高生の間でも人気がある。
実際、雑誌でも取り上げられたりしてその人気は計り知れない。
そんなわけで、新メニューが発売となる今日は近隣の甘党の人間たちが砂糖に群がる蟻のごとくこの店に集結したのである。

「ありがとうございました〜」
と言って、注文されたストロベリーワッフルを女子高生に渡すと、ニコニコしながら小走りで友達のところへ戻っていった。
こんな風景をみていると、心が和む。
(それにしても、友達と食べるにしても2ダースは多いわよね…)
大量に買い込んだワッフルをどう処理するのかを考えていると、次の客がカウンターに立った。
(おっと、お客さんを待たせないようにしなくちゃ)
「いらっしゃいませ。何になさいますか?」
(男の子と女の子…。恋人同士かな?)
「ええっと、その……、一番下のやつを4個入りの箱で………」
そう男の子が言ったとき思わず
「えっ」
と言ってしまった。
そのとき、松本の顔は少しの間硬直していた。
(思わず、「えっ」なんて言ってしまったわ。まさかアレを注文する人がいるなんて…)

男の子が注文した『一番下のやつ』とは
「砂糖をふんだんに使ったワッフルに、練乳を練り込んだ蜂蜜をたっぷり、想像しただけで口の中が甘ったるくなるような。甘党の人にお勧め」
という説明がついている通称『練乳蜂蜜ワッフル』だ。
もっと詳しく説明すると、
「ワッフルの生地に砂糖を飽和状態になるまで入れ、さらに練乳を練り込んだ蜂蜜を入れ、一口食べればあまりの甘さにウーロン茶を1本は軽く飲めるという激甘ワッフル」
というのが正しい。
ちなみに、ワッフルひとつで2日分の砂糖を摂取できるらしい。
(私も、試食したけど半分食べたところでリタイアしたんだっけ…。)
(私も相当な甘党だけど、アレだけは克服できないわ…。)
(そういえぱ、アレを試食した後はお腹がもたれて夕食が食べれなかったっけ…。)
「……かしこまりました。4個入りの箱一つですね」
(あれを4個も食べたらどうなるのかな…)
男の子は一瞬ためらった後
「………はい」
と答えた。
(どうやら、彼女の方が「食べたい」って言ったんだろうなぁ。かわいそうに……)
なんとなく同情してしまう。

そういっていると、厨房から焼きたてのワッフルが入った箱を渡される。
「お待たせいたしました。360円です」
「はい」
といって、男の子は代金を支払い、ワッフルの箱を受け取った。
「ありがとうございました」
そう言うと、男の子は行列を抜け出していった。
「はい、茜」
そう言って女の子に箱を手渡すと、
「おいしそうですね。浩平」
と答えた。
茜は満面の笑みをこぼしているが、浩平はちょっと険しい顔をしている。
(……これが原因で別れることにならないといいけど…)
そんなことを思いながら客の対応に戻る。

「いらっしゃいませ〜」

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こんにちは〜、Sashoです。
今回は茜ストーリーで出てきたあのワッフルを浩平たちが買うときの店員視点で書いてみました。
どうだったでしょうか?
感想、楽しみにしています。

あと、前回投稿した「約束」についてですが
あのときは、「こんなSSでいいのかな?」と不安に思っていたのですが、
予想を反して「良かった」という感想をいただけて恐縮です。
感想、ありがとうございました。

これからも、面白い、感動できるストーリーを書けるSS作家を目指してがんばりたいと思っているので
よろしくお願いします。

それでは、また。

P.S.
こんどは、七瀬のサイドストーリーを書こうと思っています。
もしかしたら、澪になるかもしれないけど…。(*^_^*)