超人バロムONE 第弐話(後編) 投稿者: TOM
超人バロムONE 第弐話 乙女の園へようこそ (後編)
薄暗い部屋の中をモニターの明かりだけが照らしている。モニターにはオトメルゲと対峙するバロムO
NEが映っている。
『オトメルゲがバロムONEと遭遇したの』
「そうみたいだね」
ミズカはモニターを見つめたまま動かない。だが、スケッチブックの文書が分かっているようだ。
『どうするの?』
「今は様子を見ようよ。オトメルゲが勝てばそれで良いし、負けてもデータ収集にはなるもん」
『分かったの』

「あなたがバロムONEね。イブクロゲを倒したそうだけどこの私はそう簡単にはやられないわよっ!」
オトメルゲはリリカル竹刀をバロムに突き付けながら叫んだ。
(で、これからどうするの?)
(どうしましょう・・・)
(もしかして何も考えてなかったとか)
(そう言う詩子こそ・・・・)
二人が攻めあぐねていると突然空中にファイルが出現し、とあるページを開いた。
(えと、何々・・・「G'sFILE Type 07 オトメルゲ」?)
(ウィークポイント・・・弱点表示のようです)
茜がそう言うと同時にオトメルゲのペンダントに丸印がついた。
(あそこを狙えってことね)
(でもいきなり突っ込むのは危険です。相手の出方を見ましょう)
作戦が決まったところでオトメルゲとの間合いを取っていく。
「そっちが来ないならこっちから行くわよっ!」
と、痺れを切らせたオトメルゲが突撃してきた。
「面、面、めぇ〜ん!」
オトメルゲの面三連撃だ。だが、それをバク転で回避する。
「ならばっ、突き、突き、突きぃ〜!」
バク転の着地を狙った突き攻撃を繰り出した。リリカル竹刀がバロムの鳩尾を捉える。
「ぐっ・・・」
急所への一撃だったが特殊装甲のおかげでダメージは軽減されていた。
(詩子、反撃です)
(よっしゃ、覚えたてのアレやってみっか!)
バロムは体勢を立て直すと、すっと腰を落とし気を溜める。
「!!」
「食らえ、バロム波動拳!」
叫ぶと同時に溜めこんだ気を両手に集めオトメルゲに叩きつけた。
ドッグォーン!
爆風が机を吹き飛ばし窓ガラスを粉々に砕いていく。
「やったか!?」
オトメルゲの生死を確認しようとするが爆発による埃で視界はゼロだった。
だが、風通しが良くなったため、直ぐに視界が視界が戻ってきた。埃の晴れた教室には粉々になった机
の破片が散乱しており、教卓の側にリリカル竹刀が突き立っていた。
(勝ちましたね・・・)
(今回はあっけなかったね。これも修行の成果かな)
二人が勝利を確信していると突然教卓が持ち上がり、その下からオトメルゲが現れた。
「何!?今のを食らって起き上がるとは」
「ふっ、あれしきの攻撃でやられるオトメルゲでは無いわっ!それに今の攻撃、覚えさせてもらったわ
よ!」
オトメルゲはゆらりと立ち上がると顔についた埃を軽く払った。
「こうなったらもう一度ッ!」
バロムは再び波動拳を繰り出した。だが、オトメルゲは避けるわけでもなく、刺さっていた竹刀を抜き
取るとすらりと構えた。そして左足を振り子の様に振るとバロムの放った気弾を力の限り打ち返した。
「奥義、首位打者剣!!」
竹刀を振りぬいたままの体勢でオトメルゲが叫んだ。
「ま、まさか打ち返すとは・・・」
「さっきも言ったでしょ。あなたの攻撃は覚えたとね。この私に同じ攻撃は二度と通用しないのよ!」
(茜・・・)
突然詩子が真面目な顔で茜を見た。
(・・・はい)
(逃げよう)
(・・・はい?)
(こういう時はまず逃げるものなのよ)
(そうでしょうか・・・)
(ジョセフも逃げろって言ってくれるよ)
(ジョセフって誰ですか?)
(とにかく逃げながら勝つ方法を考えるのよ)
(仕方有りませんね・・・・)
話がついたところでバロムはくるりと振りかえった。
「敵に背中を見せるとはどういうつもり?」
「逃げる!」
言うが早いかバロムは一目散に逃げ出した。
「あ、逃げるな〜」
オトメルゲが廊下に出た頃にはバロムは既に別校舎の方へ消え去っていた。
「あっちは・・・クラブハウスか。まぁいい。必ず追い詰めてやるわ」
フッと笑うとオトメルゲも別校舎へと駆け出していった。

バロムは別校舎内を走っていた。
(ここまで逃げたのは良いけどこれからどうしよう)
(・・・何も考えてなかったのですか?)
(だって・・・)
(それなら私に一つ案がありますが・・・)
(え、あるの。なになに?)
(私の予想が正しければオトメルゲは乙女であることにこだわるタイプの筈です。ですからそれを利用
すればあるいは・・・)
(弱点を突ける!)
(はい・・・)
「それならここかっ!」
バロムは文化部部室のある一室に飛びこんだ。それから遅れること十数秒・・・
「ここに逃げ込んだか。しかし何故茶道部の部室に・・・」
扉に張られた看板を見つめ、オトメルゲは呟いた。そして、おもむろに扉を開き中に入った。

シューーー・・・・
電熱器にかけられた茶釜から蒸気が静かに吹き出している。それを前にして着物に着替えたバロムが正
座している。バロムはやや俯き気味だった顔をついと上げると
「よく来なすったな。ま、一つ茶でも点てる進ぜよう。そこに座りなされ」
と言った。
「あ、うん・・・」
オトメルゲは言われるままに正座をする。
コポコポコポ・・・・シャシャシャ・・・
バロムは慣れた手つきで抹茶を点てると、それをすっとオトメルゲに差し出した。
オトメルゲも慣れた手つきで椀を持ち、艶やかに茶を飲み干すと
「結構なお手前で・・・」
と言い、椀を返した。ついでに
「艶やかに抹茶をいただく。乙女にしか為せない技よね!」
などとのたまってくれた。しかしふと顔を上げると、椀を返した先に居た筈のバロムの姿がない。
「って、あれ?」
と振りかえると茶釜を構えて立つバロムの姿があった。
「あ・・・・」
「・・・・・」
きっかり三秒の間を置いて
「食らえ、バロム茶釜!」
と叫びながら熱湯の入った茶釜を振り下ろした。だが、オトメルゲは横に転がりそれをかわした。
「ちぃ、足が痺れてなかったか・・・」
「ふっ、これでも剣道で鍛えてるからね。あの程度の正座じゃびくともしないわよ」
「・・・・・」
「何よ、その間は?」
「漢くせえ・・・」
「言うなっ!」
怒りを露にしたオトメルゲの斬撃が襖を分断した。その分断された隙間からバロムは廊下に飛び出し、
再び走り出した。
(第一作戦失敗ですね・・・)
(それじゃあ次は・・・)

オトメルゲは再び扉の前に立っていた。今度は美術部と書かれている。
「まったくちょこまかと・・・」
そう言いながら扉を開ける。
今度はベレー帽を被ったバロムが果物を前に静物画を描いていた。
「やぁいらっしゃい。君を絵を描きに来たのかい。まぁそこにかけたまえ」
「あ、うん・・・」
またもオトメルゲは言われるままに椅子に座るとキャンバスを前にし、絵を描き出した。
ドシュドシュ!
オトメルゲは何故か布製のキャンパスにケント紙を置いてそこにペンを走らせている。普通なら余りに
も変な光景なのだがそんな状況下でも
「初夏の午後、窓辺で優雅に絵を描く。乙女にしか為せない技よね」
などとのたまってくれた。
ピシュピシュ!
今度はペンを振り回しインクを飛ばし必要な部分を黒く塗りつぶしていく。まるでインクが手裏剣の様
だ。そして、筆を山の様に握ると一気にそれを紙の上に走らせた。
「できたー」
果物を前に絵を描いていたはずだがオトメルゲの描き上げた絵は何故か少年の絵になっていた。
「できましたよ・・・って、あれ?」
絵を見せようとオトメルゲが立ちあがるとそこには誰も居なかった。
「まさか・・・」
と後ろを振りかえると今度はビーナス像を持ったバロムの姿があった。
「・・・・・」
「・・・・・」
「食らえ、バロムビーナス落し!」
「同じ手を食うかっ!」
オトメルゲの一撃でビーナス像が粉々に砕け散った。
「ちぃ・・・」
軽く舌打ちするとバロムは三度廊下へと駆け出した。
(第二作戦失敗ですね・・・)
(次はどうするの?)
(ネタ切れです・・・)
(・・・・・・・)
(とにかく逃げましょう)

本校舎へ戻ったバロムは何時の間にか見知らぬ場所へと出ていた。
(ねえ、ここ何処?)
(・・・分かりません。私も初めて来る場所です)
やけに暗い廊下を歩いているとその奥に部屋があった。
(資料・・・室?)
(もしかしてここは・・・)
(え、茜、何か知ってるの?)
(開かずの資料室です。昔ここで女の子が事故にあったとか・・・)
(や、やめてよぉ。私そういうの苦手なんだから・・・)
二人がそんなことを言っていると廊下の先から足音が聞こえてきた。
カツーン・・・カツーン・・・・
(も、もしかして・・・)
恐る恐る振りかえるバロム。と、そこには
「見つけたわよ、バロムONE!」
走りまわって髪の毛がくしゃくしゃになったオトメルゲが立っていた。
「な、なんだ、オトメルゲか・・・驚かすなよ・・・」
「何を言ってるかは良く分からないけど・・・とにかく、追い詰めたわよ!」
「な、何ィ!?」
言われて辺りを見まわすと確かにそこは袋小路になっており、何処にも逃げ場は無かった。
「さぁ年貢の納め時よ。おとなしく私の竹刀のサビになりなさい!」
オトメルゲは竹刀を構えてジリジリと迫ってくる。遂にバロムは壁際まで追い詰められてしまった。
「くっ・・・ここまでか・・・」
と、その時、廊下の隅に蠢く黒い物体が目に入った。
「これでも食らえ!」
バロムは素早くそれをつかむとオトメルゲに向けて投げつけた。
「ふっ、何を今更・・・」
オトメルゲは投げつけられた物体をいとも簡単に受けとめた。
「しかし・・・一体何を投げたんだ?」
手を開くとそこには一匹のゴキブリが蠢いていた。普通ならここで驚くものだと思われたが
「なんだゴキブリか・・・」
と、オトメルゲはゴキブリをぽいっと投げ捨てた。
「な、何故だ。乙女ならばゴキブリを見て驚かないわけがないのに!?」
「あ、昔、咥えた笛の中にゴキブリが入ってて、それ以来克服しちゃったのよ」
「なんと・・・」
「さて、もう万策尽きたようね・・・」
更に距離を詰めるオトメルゲ。と、その肩に一匹の蜘蛛が落ちてきた。それを見たオトメルゲの顔がみ
るみる蒼ざめていった。
「ぎゃ〜〜〜、蜘蛛〜〜〜〜!!」
そう叫ぶとそこいらじゅうを駆け回り出した。
「くくく蜘蛛に驚いてててて悲鳴を上げるるる・・・おおお乙女にしかなせない技よねねねね・・・」
気が動転しているのかどもりながら乙女の証明をしている。
(詩子、チャンスです・・・)
(オッケー!)
瞬間、バロムの目がキュピーンと音を立てて光った。そして、右手の肘から先が高速で回転した。
「滅殺、バロムコークスクリュー!」
ずむっ・・・
ドリルのように回転したバロムの右手がオトメルゲのペンダントを捉えた。
ぱきーん
そして、遂にオトメルゲの弱点たるペンダントは砕け散ったのだ。
「ぐ・・・あああああ!」
弱点を突かれたオトメルゲは頭を抱えて苦しみ出した。そして、糸が切れた操り人形のように倒れこむ
と、七瀬に姿を変えたのだった。
「やはり七瀬さんでしたか・・・」
変身を解いた茜が七瀬の身体を抱き起こした。七瀬は気を失っているようだ。
「ねえ、茜。もしかしてこれって・・・」
「ええ、私達の周りで何かが動き始めているのかも知れません・・・」
二人は更なる闘いの予感にかられていったのだった・・・。

(続く)


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
次回予告

またも闘いに辛くも勝利したバロムONE。
だが、ミズカは更なる刺客を送りこむ。
ウタゲルゲの音波攻撃に学園が破壊されていく。
闘え、バロムONE。学園を守るのは君しかいない!
次回、聞け、地獄のメロディーをお楽しみに
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
茜「あとがき・・・」
詩子「コーナー♪」
TOM「・・・・」
詩子「さて、久々にやって来ましたこのコーナー。バロムONEの謎についてバンバン迫っていきまし
ょう」
茜「まず最初に何故これだけ間が開いたかについて・・・」
詩子「作者さん、どうぞー♪」
TOM「・・・大学忙しかったから・・・・」
茜「・・・寝るのに?」
TOM「うっ・・・」
詩子「噂じゃゼミ中も舟漕いでたそうじゃない」
TOM「日々忙しいんだよ!」
茜「・・・遊ぶのが?」
TOM「うっ・・・」
詩子「大体、夜遅くまで遊んでるから・・・」
TOM「うるさい、うるさい。次!次の質問!」
茜「・・・では、『出てくる怪人は全て長森さんや澪なのか?』という質問が来てますが」
TOM「あ、うん」
詩子「それじゃ受け答えになってないって・・・」
TOM「そんなこと言っても見たままやん」
詩子「ま、まぁね・・・」
茜「次の質問いきます・・・。『怪人はあと何人出てくるのですか?』と言う質問が来ています」
TOM「4人だね。メインキャラの残り3人と彼が出るよ」
茜「彼?」
TOM「そう、彼だ」
詩子「それじゃ分からないでしょうが・・・」
TOM「ONE界のカヲル君だ・・・と言っておこう」
茜「・・・では次・・・と思ったのですがもう質問は無いようです」
詩子「じゃあ、個人的な質問いい?」
TOM「なんだ?スリーサイズと女性関係以外なら答えるが」
詩子「んなもん聞きたかないわ!この番組(?)にテーマソングって無いの?」
TOM「無い!(きっぱり」
詩子「え〜無いなら作ってよぉ」
TOM「俺は替え歌師じゃないんでな」
茜「ブロロロローブロロロローブロロロロー・・・」
TOM「だから作らないって・・・」
茜「残念です・・・」
TOM「そういうわけで話も終わっただろ。ホレ、はよ出てゆかんか」
詩子「なんで?」
TOM「だって寝るから・・・」
茜「寝てる間ここに居るのは駄目なのですか?」
TOM「添い寝か膝枕をしてくれるなら了承するがそれ以外なら駄目だ」
茜「どっちも嫌です・・・」
詩子「いいじゃない。由起子さん(母の名)の許可貰ってるんだし」
TOM「いちいちおかんを引き合いに出すなっ!」
詩子「「あの子もとうとう女を部屋に連れ込む様になったのね」って喜んでたじゃない」
TOM「だーかーらー・・・・」
茜「というわけで次回へ続きます・・・」
TOM「ぐあっ、締められた・・・」
(おしまい)