超人バロムONE 第一話(前編)  投稿者:TOM


超人バロムONE 第一話 その名はバロムONE(前編)

「現在、日本には悪徳政治家や快楽殺人犯など人々に多大な害を為す物達で溢れている。そんな魔の手
から誰かが日本を守らなければならない!!そう!!君達は選ばれた戦士なのだ!!」
男は茜と詩子を指差しそう言った。
「人攫いが何か言ってます・・・」
「どうでも良いけど縄ほどいてよ」
二人は縄で縛られていた。
「私はプロフェッサーTOM。日本の平和を守る正義の使者だ」
「関係ありません・・・」
「まず、この縄を何とかしようよ、ねっ」
TOMと名乗った男は二人の言葉に聞く耳持たず話しつづけている。
「これから君達の進む道には幾多の困難が待ち構えているに違いない。だが・・・」
「全然聞いてません・・・」
「もうっ、お昼休みが終わっちゃうよ」
「お腹空きました・・・」
二人は空腹も相俟っていい加減疲れてきている。
「詩子、迅速且つ安全に帰れるよう彼を説得してください・・・」
「ええ〜っ。私がやるの?」
「緊急事態です。仕方在りません・・・」
「分かったわよぉ」
詩子はしぶしぶ説得にのりだした。
「あの〜言いたい事は分かったんだけど、私達これから用事があって・・・」
「用事?一体何があるのだ?」
「もう直ぐ午後の授業が始まっちゃうし、お昼ご飯もまだだし・・・」
「君は・・・・そんな事が日本の平和よりも大事だと本気で考えているのかね?」
「え!?あ、いやその・・・」
「どうなんだ!?ハッキリしたまえ!」
TOMはビシッと指差し詩子に迫る。
「す、すみません。私が間違ってました・・・」
「バカめが」
詩子はTOMに気圧されあっさり引き下がってしまった。
「詩子、個人の自由が尊重されてこその平和です・・・」

―――暫く経って
「茜、今何時?」
「5時過ぎだと思います」
「とりあえずコイツの言う通りにして今日のところは帰してもらおうよ」
「・・・納得いきませんが仕方在りません。後で隙を見て殺しましょう・・・」
茜はさらっと凄い事を言ってくれる。
「ねえ、プロフェッサー。私達正義の味方やるから、とりあえず家に帰してよ」
詩子の提案に本を読んでいたTOMは嬉しそうに反応する。
「やっとその気になってくれたか。よーし、君達に素晴らしい力を与えよう。それじゃ始めようか」
TOMが立ち上がると周囲の壁から無数の機器が現れた。
チュイーン・・・
部屋の中に異様な音が鳴り響いていた。

―――次の日の朝
チチ、チュンチュン・・・
雀の鳴き声で茜は目が覚めた。何時の間にかベッドの上で眠っていたようだ。低血圧のせいで未だ頭が
ハッキリしないが昨日の出来事を思い出し、右の拳を強く握り締めてみる。すると薄ぼんやりと右の甲
に「U」の文字が浮かんでいる。
「・・・夢じゃないようです」
茜はそれを見て昨日の事が夢でないことを確信した。

いつも通り家を出て学校に着くとこれまたいつもの様に詩子が教室で待っていた。
「おはようございます、詩子」
「おはよう、茜」
「詩子、昨日の事・・・」
「うん。どうやら夢じゃないみたいね」
「・・・そのようです」
「って事は私達改造されちゃったんだ。改造されちゃったって事は、服を脱がされてあんなとこやこん
なとこを見られた上・・・。あ〜、もうお嫁にいけない」
実際、改造されてる時の記憶は無いのだが勝手な想像で詩子は廻りながらそう叫んだ。
「それに、見られるって分かってたんならもっと可愛い下着付けてきたのにぃ!」
「詩子、ホントに嫌だったんですか・・・」
相変わらず廻りながら叫んでいる詩子に茜が突っ込んでいると俄かに外が騒がしくなった。
「おい、食堂に化け物が出たってさ」
「よし、行ってみようぜ」
何だかそんな事を言いながら男子学生が駆け出してゆく。
「茜、面白そうだから行ってみようよ」
詩子は廻るのを止めると茜の手を引き一直線に食堂へ駆け出した。どうやら三半規管が強いらしい。
「授業・・・」
手を引っ張られながら茜はそう呟いた。

食堂の周りは既に人だかりが出来ていた。
「よう、茜に詩子。お前達も身に来たのか」
其処には浩平の姿もあった。
「あ、折原君。一体何がどうなってるの?」
「どうも烏賊みたいな胃袋みたいな化けもんが暴れまわってるらしいぞ」
「ここからだと見えません。前の方に行きましょう」
茜は浩平を連れ立って人ごみの前の方へ進んでいった。すると食堂の中で胃袋に烏賊の足が生えたよう
な怪物が学食の中にある食材を持って暴れまわっていた。
「ありゃー、あれじゃあお昼ご飯が食べられないね」
「私はお弁当持ってきてますから・・・」
緊急事態なのだがまるで緊張感が無い。周囲はあたかもイベントを見ているようだった。と、一人の男
子学生が怪物の前に立ちはだかった。住井である。
「やい、貴様。我ら欠食児童の楽しみである昼飯を奪うとは何事だ!名を名乗れ!!」
住井は怪物を指差しそう怒鳴った。だが、欠食児童とは言い過ぎである。
「我は魔人ミズカ様が下僕、イブクロゲ。ここの食料はもらった!」
イブクロゲと名乗った怪物は冷蔵庫から次々と食材を奪い出す。
「これ以上お前の好きにはさせん!漢住井の拳を受けて死ねい!」
住井はそう叫ぶとイブクロゲに突っ込んでいった。だが・・・
「のぉぉぉぉ・・・」
あっさり捕まった。
「フン。威勢だけは良いようだな。だが、まだまだ・・・」
イブクロゲはそう言うと住井を自分の身体に押し付けた。すると住井の体がずぶずぶとイブクロゲに取
り込まれていった。
「あ、あれは伝説のサンタナ喰い!」
「サンタナ喰い?」
浩平の言葉に詩子が訊ねる。
「サンタナ喰い。それは細胞の一つ一つが強力な酸を出す事によって食物を溶かして直接吸収する食い
方だ。まさかこんなところでお目にかかれるとは・・・」
悠長に解説しているうちに哀れ住井は食べられてしまった。イブクロゲは尚も暴れている。
「はっはっは、早速怪人を見つけたようだね。私は今、直接君達の頭に語りかけている」
突然、茜と詩子の頭に声が響き渡る。
「この声は!?」
「昨日の人攫いです・・・」
「とりあえずここでは人目につく。やはり正義の味方は人知れず変身しないとね。屋上に行くが良い。
其処の主も今は居ない筈だ」
「どうする、茜?」
「行くしかないようです」
二人は屋上に向かって走り出した。
「おーい、二人とも何処に行くんだ?」
「女の子に野暮な事聞かないの!」
詩子はそう叫びながら走っていった。

二人が屋上に着くと再び例の声が頭に響く。
「君達には二人の力を合わせる事で特別な力を引き出せる様にしてある」
「ねえ、あの化け物は一体何なの?」
「まず、左の手首の甲の方を頭上で重ねろ」
「相変わらず聞いてません・・・」
TOMは尚も続ける。
「そして「友情合体」と叫びながら右手を肘の所でクロスさせろ。そうすればバロムONEに変身でき
るぞ」
「だってさ」
「仕方在りません。やりましょう」
しぶしぶ二人は左手首を組み合わせる。すると茜の甲には「U」の文字が、そして詩子の甲には「JO
E」の文字が浮かび上がった。
「友・・・」
「情」
「合体!(・・・(茜))」
右手を組み合わせた瞬間、辺りに閃光が走り二人の体が渦を巻くように混ざってゆく。
「溶け合う心が私を壊す・・・」
「茜、それ違うよ」
そして二人は一つになった・・・。

食堂では相変わらずイブクロゲが暴れていた。
「あんだけ持ってかれたら今日の先輩は餓死間違いなしだな」
浩平は淡々と状況を見ていた。もはや奴を止める事は出来ないのか。その場に居た皆がそう思った時、
窓を破り一つの影が飛びこんできた。
「な、何奴!?」
突然の来訪者にイブクロゲが問い掛ける。
「俺は・・・超人バロムONEだ!!」

(続く)

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次回予告

颯爽と登場したバロムONE。
だが、イブクロゲはムラヤマ元首相の様に戦闘に不慣れなバロムONEを圧倒する。
果たしてバロムONEは勝つ事ができるのか?
次回、その名はバロムONE(後編)をお楽しみに。

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あとがき

初めまして、いいんちょの弟子ことTOMです。
七瀬改の主任開発者でもあります。以後お見知り置きを。
今回、いいんちょに誘われてSSを書くことになりましたが色々設定とかで悩みました。
特撮好きの方には「ここが甘い!」とか思われる点もあるでしょうがご容赦の程を。
それでは、これからも宜しくお願い致します。

PS.
ニュー偽善者Rさんへ>
いいんちょに聞いたんですけど血へどSSに出たいっす。
茜とからみたいっす。
宜しくお願いします。