超人バロムONE 第一話(後編) 投稿者: TOM
超人バロムONE 第一話 その名はバロムONE(後編)
「バロムONEだと?」
突然の来訪者にイブクロゲが驚きの声を上げる。
「怪人イブクロゲ。しがない学生の数少ない楽しみである昼食を奪おうとする貴様の根性、例え学食の
おばちゃんが許してもこのバロムONEが許しはしないぞ!」
バロムONEはイブクロゲを指差しそう叫んだ。
(窓ガラス破っちゃったね)
(この際、仕方ありません)
バロムONEの右目には茜が、左目には詩子が浮かび上がっている。合体していてもお互いが会話でき
るというのが特徴らしい。
(どうでも良いけど何で喋ると渋いおじさん声になるのよ〜)
(全ては仕様だそうです・・・)
そう、バロムONEに変身すると何故だか声が宮内洋っぽくなってしまうのだった。
(それにこの格好もいかにも「昭和40年代の特撮物です〜」って感じがして嫌なんだけど)
(かっこいいです・・・)
(へ?)
(かっこいいです・・・)
(・・・・・・(汗))
茜のセンスに詩子は閉口した。
(詩子、来ます・・・)
茜がそう言った瞬間イブクロゲの足の一つが鞭のようにしなって襲いかかって来た。
「くっ・・・」
すかさずガードするがバロムONEはあっさりと吹き飛ばされてしまった。そのまま壁にぶつかり落下
する。
「はっはっは、ちとやりすぎてしまったかな?」
イブクロゲは自慢気に足をくねらせている。が、吹き飛ばされたバロムONEは何事も無かったかのよ
うに起きあがってきた。
「な、何だと!?」
自信があったのかイブクロゲはうろたえている。だが、起きあがったバロムONEもその状況に驚いて
いた。
(すごーい。全然痛くない)
(流石は軍用の特殊装甲です・・・)
一見、バロムONEは只の全身タイツを着ているように見えるが驚く無かれ、これはドグラ星で開発さ
れた軍用の特殊装甲なのだ。因みにカラーレンジャーも同じ装甲を使っていることは言うまでも無い。
(いける!)
勝てると感じたのかバロムONEはイブクロゲに向かって一直線に走っていく。
(詩子、駄目・・・)
茜は静止しようとするが既に遅かった。
「でやぁぁぁぁっ!」
体重を載せたパンチがイブクロゲの急所(なんじゃないかなと思う所)を捉える。が・・・
ぺきっ
軽快な音がしてバロムONEの右手首が90度に折れ曲がっていた。
「のぉぉぉぉ・・・」
脱臼した右手を抱えてバロムONEがのた打ち回っている。
「な、何か無茶苦茶弱いぞ・・・」
浩平達はやや呆れていた。
(ちょっとぉ、特別な力があるんじゃないの!?)
詩子の問いに答えるように頭の中でTOMが語り掛けてくる。
「ふっ、甘いな。君達は未だヒーローレベル1の状態で、ザコ敵を倒すのにも数ターンかかるカスだ。
かたやラスボスになるであろう魔人ミズカは絶好調時のイデアよりも強いのだぞ。まぁレベル次第で魔
人ミズカを倒す可能性があるという事は補償しよう」
(・・・因みにイブクロゲのレベルはどのくらいですか?)
「そうだな・・・大体イフリート位だな」
(どういう設定なんだか・・・)
詩子は茜とTOMの会話についていけないようだ。
(・・・必殺技とかは無いのですか?)
「ホントは戦闘中に閃く事で使えるようになるのだが・・・仕方ない。今回だけ特別に教えよう」
(わーい、やったぁ)
「とりあえず相手に触れた状態で「バロムショック」と叫んでみろ。それで技が発動する筈だ」
(どーしても技の名前を叫ばなきゃ駄目なの?)
(ヒーローの王道ですから・・・)
茜は納得したようだ。
「とりあえず今の私にできるのはこれくらいだ。それでは健闘を祈る」
(あ、ちょっと待ってよー)
(行ってしまいました・・・)
(どうする、茜)
(さっきの技を試してみましょう。勝てるかもしれませんし・・・)
外れた右手首を元に戻すと再びイブクロゲに飛びかかっていく。
「ほほう、なかなかしぶといな・・・。だがっ」
イブクロゲは連続して足を振りまわしバロムONEに襲いかかる。しかし、バロムONEはすんでのと
ころでその攻撃を避けていく。
(ひんっ、恐いよぉ)
(詩子、右から来ます。次は上・・・)
茜が見切り、詩子が避ける。絶妙のコンビネーションでジリジリと間合いを詰めていく。そして、遂に
イブクロゲの懐に飛び込む事ができた。
「くらえ、バロムショック!!」
ストーム・ブリンガーの要領で右手を押し当てる。すると電気ショックがイブクロゲに襲いかかった。
「ぐああああ!」
イブクロゲは絶叫し、バロムONEを引き剥がしにかかるが足が思うように動かない。暫く暴れまわっ
ていたが次第に動作が鈍くなり、とうとう動かなくなってしまった。
「勝った・・・」
誰もがそう思った瞬間、イブクロゲがゆっくりと起きあがった。
「な、まさか動けるとは!?」
「ふふふふふ・・・。はーっはっはっは」
足をくねらせイブクロゲが吼える。
「長年悩まされていた肩こりが治った!!」
「はぁ?」
その場にいた全員が?マークを浮かべて固まっていた。すると、
「説明しよう。バロムショックとは低周波の電気ショックを与える事で相手の肩こり、腰痛などを治療
する事ができるのだ!」
説明おじさんの要領でTOMが解説をしてくれた。どうやらこの為だけに戻ってきたようだ。
(そんなんで敵が倒せるかっ!)
(肩こり治療・・・・)
茜は肩こり治療と聞いて少し関心があるようだった。だが、ツッコミをしているおかげで隙が生まれて
しまった。背後にイブクロゲが迫る。
(詩子、後ろ・・・)
気づいた時には既に遅く、バロムONEは足を掴まれ宙吊りにされていた。そして、人形のように身体
を振りまわされる。
「おお、MIB・・・」
浩平は某映画のワンシーンを思い出しながらそう呟いた。
(このままでは負けてしまいます。何とかしないと・・・)
茜は振りまわされながらも冷静に打開策を考えていた。その時、バロムONEの懐から紙袋が落下した。
(茜、何か落ちたよ)
(ワッフル・・・・)
どうやら落ちたのは茜がおやつにと買ってきた山葉堂のワッフル(激甘)だった。それをイブクロゲが
素早く別の足で拾い取る。
「ちょうど良い、これも戴くとしよう」
イブクロゲは袋ごとワッフルを飲み込んだ。
「ふふふ、貴様も腹の足しにしてくれるわ」
バロムONEを飲みこもうとしたその時、イブクロゲの足がぴたりと止まった。
「ぐ、ああぁぁぁぁ・・・」
突然イブクロゲは苦しみだした。胃の部分がボコボコと膨れ上がる。
(詩子、今です・・・)
(え?あ、うん)
バロムONEは苦しむイブクロゲの足を引き千切ると後ろに飛び退いた。依然イブクロゲは苦しんでお
り、身体から煙が立ち昇り始めている。
(どういう事?)
(分かりません・・・)
「多分、栄養過多なんじゃないかな?」
またもや説明モードのTOMが呟く。
(えっ・・・)
「あの激甘ワッフルを食べたんだろ?高密度に圧縮された糖分の持つエネルギーにイブクロゲが耐えき
れなかったんじゃないのか?」
(茜、そんなの食べてたの?)
(おいしいのに・・・)
そうこうしている間にもイブクロゲは苦しみつづけている。
「ぐあああ、ミズカ様ぁぁぁ!」
「危ない、離れろ!」
イブクロゲの身体が光り輝き、断末魔の叫びと共に粉々に砕け散った。
(やったの?)
(いえ、未だ生命反応があります・・・)
茜の言う通りイブクロゲのいた場所に誰かが倒れているようだった。爆発の煙が晴れるにつれてその姿
が露になる。
「先輩!」
浩平が急いでその人物に駆け寄る。倒れていたのは川名みさきだった。どうやら息はあるようだ。
「先輩、大丈夫か?」
「浩平君・・・もう食べられないよぉ・・・」
相変わらずボケボケな返答をするみさきに浩平は安堵の息を漏らす。
一方、バロムONEの方はというと・・・
(何だか知らないけど勝ったのかな?)
(そのようです・・・)
「こうして超人バロムONEは辛くもイブクロゲに勝つことができた」
(ヒトの頭の中で恥ずかしいナレーションしないでよ!)
「行け、バロムONE!!闘え、バロムONE!!魔人ミズカを倒すその日まで!」
(絶対に殺します・・・)
TOMへの怨みを再確認しつつ闘いの日は暮れていった(まだ午前中だが)

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次回予告

イブクロゲに勝利した茜と詩子。
だが、新たな敵が学園に迫る。
次々と襲われていく学園の仲間達。
そして敵の魔の手は浩平にも及ぶ。
はたして二人は学園に平和を取り戻す事ができるのか?
次回、乙女の園へようこそをお楽しみに。

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あとがき

TOM「ようこそ私の研究室へ。プロフェッサーTOMです」
茜「助手の茜です・・・」
詩子「ちょっと。なんで「カノッサの屈辱」風なの?」
TOM「さて、今回はバロムONEの謎に迫っていきたいと思います」
詩子「聞いてないし・・・」
茜「本人の趣味だそうです・・・」
TOM「まず最初に・・・」
詩子「バカは放っといて私達だけであとがきやりましょう」
茜「・・・そうですね」
詩子「ところで作者ってバロム1が好きよねぇ。いっぺんも見た事無いのに」
茜「マッドテープで聞いて以来、好きになったそうです・・・」
詩子「ああ、あの『ブロロロロー』って所でドモるやつね」
茜「それとバロム1ネタは以前、悠久幻想曲でもやってたそうです」
詩子「確かアレってエンフィールドの消滅と共に消えたんだよね」
茜「はい・・・」
詩子「え、何?葉書を読め?あ、これね。えと、質問が来ています。『バロムONEの格好はどんな感
じなのですか?』だってさ」
茜「作者が言うには『一応バロム1に似た形のイメージがありますが絵が描けないので何とも・・・』
だそうです・・・」
詩子「絵心無いからね」
茜「美術も2しか取ったことが無いそうです・・・」
詩子「え、もう時間?適当に締めて終われ?はいはい。それじゃあ、次のあとがきで逢いましょう」
茜「さようなら・・・」
TOM「・・・・という事で次回はバロムONEの力の秘密に迫ってみるとしましょう」
詩子「結局、コイツは何がやりたかったんだか・・・」

(EOF)