【111】 薄墨櫻の名の下で
 投稿者: PELSONA <pelsona@grn.mmtr.or.jp> ( 謎 ) 2000/4/9(日)00:58

『薄墨櫻の名の下で』



――桜の下には死体が埋まっている。

そんな文句を何処かで聞いた事がある。

確かに、桜には何処か人の死を想わせる儚さがある。

薄墨色をした命の結晶。

人の命も、その存在も。

やがてはこの桜のように散り、消えてゆくのだろう。

だからこそ、其の魔性的なまでの美しさに人は惹かれるのかもしれない。

漠然とした不安を感じつつ、私は散り際の桜を仰ぎ見ていた。

「茜」

と、其の静寂を破る声が聞こえる。

声のした方に振り向くと、少し走ってきたのか微かに乱れた呼吸を整えている浩平がいた。

「こんな所にいたのか、探したぞ」

「……浩平」

「急に姿が見えなくなったから、何処に行ったのかと想った――って」

「…浩平? どうかしたのですか? 」

浩平は軽く、伸びをするように周りを仰ぎ見ると、

「嗚呼、ここは桜が降ってくるんだな。 綺麗な場所だ」

「………」

「ん? どうかしたのか、茜?」

「浩平って、偶に顔に似合わないようなことを言いますね」

私はそう言って、くすりと笑う。

「失礼な。大体、茜こそ 『花より団子』 だろ」

少しだけ意地悪な表情になって浩平が言う。

「私はお団子よりワッフルの方が好きです」

「………」

「ええっと……」

浩平は呆気にとられたような顔で少し黙り込むと、言葉を探して視線が宙を泳ぐ。

私は其の顔がおかしくて、又、くすりと微笑んだ。

「浩平ーーー。 里村さーーーんっ」

その時、遠くから私たちを呼ぶ声が聞こえた。

「っと、そう言えば伝言を預かってきたんだ。早く来ないとお団子無くなるよ、だってさ」

「急ぎましょう」

私はそう言うと声の方に向かって歩き出した。

浩平は 「現金な奴だな…」 等と呟きながらも並んで歩き出す。

と、その刹那、左手に暖かいものを感じた。

「…浩平?」

浩平は少し、照れたように桜を見上げると、言った。

「今にも消えてしまいそうなくらい、綺麗だったから…さ」

私は左手を少し強く握ると、

「其れはこっちの台詞です」

微笑んだ。

「茜ーーーっ、早くーーーっ」

私を呼ぶ、詩子の声が聞こえる。

「五月蠅いのが来る前に、早く行こうぜ」

浩平はそう言うと、私の手を引いて歩き出した。

私も舞い散る桜を見ながら歩く。

もう、先ほどまでの不安感は無かった。

此の、手の温もりがある限り。




                                            薄墨櫻の名の下で――――了。



」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」


初めましての方は初めまして、
そうじゃないは方こんにちは。
国家試験直前なのに現実逃避に走っているPELSONAです。
約一ヶ月ぶりっぽいのに連作の続きじゃないです。
や、ちゃんと完結させる予定ですとも、モチロン。
タイトルが日本語の文法的に変なのも知って増すとも、モチロン。
雰囲気でつかむものです。タイトルは。
んで、発作的に書いては見たものの文章力の無さと語弊の貧困さからして大変なことに。
…良いんだ、修行中だし。
あ、読んでくれた方に感謝。
感想をくれた方に大感謝。
では、少しだけど感想返し。
ほんの少しでゴメンナサイ。


>matsurugiさま
・彼のキモチと彼女のココロ(Side 茜)

…ふぅ、前作…というか沢口Sideを見てなかったので(失礼)OKかと想いましたよ。
でも、沢口、振られて良かったな。
奴のアイデンティティは虐められる…いや、振られることにあるんですから(笑)

・彼のキモチと彼女のココロ(Side 南)

…って、真下に南Sideあるし(汗)
で、こっちは告白シーンがないわけですね。
うん、道化師南、天晴れ。

>変身動物ポン太さま
・温泉ばとるろいやる!

このタイトルを見る度、止まってる自分の作品を思い出したり(汗)
で、いつものどたばたコメディなノリが面白いです。
MAKIRUMIの愛のツープラトン攻撃がいいですねー。
そのまま禁断の世界に(ヲィ)
因みに、私は台から90cm程離れたところで相手のスマッシュを打ち返すのが得意技でした。
右に曲げたり、左に曲げたり、角をねらったり…性格ワリィ。
閑話休題。

>から丸&からすさま
・BLADE

スピーディな展開、そして執筆…すごいですね。
話はこれから集約していくわけで、どうなる事やら。
こういう戦闘シーンなどが書ける人、羨ましいです。

>丸作さま
・SWEET LIFE VOL.07

やってやったの、に爆笑。セクハラおやぢですか(笑)
と、いうか次回が非常に気になります(笑)
必読、ですね。


じゃ、少ないですけど此の辺りで。
では、失礼。