BATTLE ROYALE 15〜17  投稿者:PELSONA


―――15


 「ね、これからどうするの?」
 口を開いたのは長森瑞佳。折原浩平の幼馴染みで、密かに浩平に片思い中。好きなものはネコ。そんな彼女は今、野良猫の様に体を丸め、茂みに潜んでいた。
 「瑞佳は、これからどうしたいの?」
 反対に問うのは七瀬留美。彼女も同じように、茂みに潜んでいる。否、彼女は銃を片手に、注意深く辺りの様子をうかがっている。恐怖をかみ殺しているような瑞佳と、其れは対照的だった。
 「ええっと、取り敢えず信用できる子を探そ? 其れに、浩平の事も心配だし……」
 「信用できる子って、誰よ?」
 「其れは……」
 口篭もる瑞佳。その時、少し離れたところで、ぱららららら、という乾いた音が聞こえる。忘れもしないその音。先ほど、自分を襲った里村茜が持っていたサブマシンガンだ。
 「――静かにしてッ!」
 くぐもった声で七瀬が、告げる。そう、茜は瑞佳を追っているのだ。
 「ごっ、ごめんなさいっ…」
 慌てて瑞佳があやまる。だが、七瀬はその返事も要らない、といったふうに瑞佳を睨んだ。まるで呼吸音すら、立てて欲しくないと言った感じで。一瞬の間を追いて、再び乾いた音が聞こえる。茂みの淵に立っていた木に弾が当たっているのが解る。幸い、威嚇の為に撃っているだけのようだ。次の瞬間には逆方向へ向かって、弾幕を張っていた。
 「………」
 目を閉じて、相手の――茜の出す物音だけに、気配だけに全神経を集中させる。つねに、集中すること。これが、七瀬留美が今まで培ってきた経験の中で尤も重要視していることだった。そう、気を抜いたものから死んでいくのだ。



――16


 里村茜は冷静だった。成り行きでこうなってしまったことは後悔してた。そもそも、偶然の要素が重なりすぎていた。これは運が良いとでも言うのだろうか。まるで死ぬな、となにかが言っているように幸運が――果たして、其れが本当に幸運なのかはわからないが――積み重なっていたのだ。ぱらららら、と再びサブマシンガン(だが、茜はこれがそう言う名前なのだと知らない)が火を吹き、草を、木の枝を吹き飛ばす。だが、ヒトの声は勿論、動物の声すら、聞こえなかった。逃げられてしまった様だった。
 茜は一息つくと、トリガーから指を離し、地面に置く。振動で震える指をマッサージする様に、強張った指をゆっくりと動かした。まだ、微か体が震えている。だが、其れも仕方がないことだと思う。なにせ、生まれて始めてヒトを殺してしまったのだから。其れに、自分はどんなことをしても生き延びないといけない。何時、司が帰ってくるかわからないからだ。だから、死ぬわけにはいかない。



――17


 遠慮がちに掛けられた声。繭は、其れが誰の声なのかわからなかった。浩平や、瑞佳達と話しているところぐらいは見たことがあった金色の長い髪。ゆったりと、長めに結んだ髪の毛は印象深かった。そんな声の持ち主が、知らない場所で話しかけて来たのだ。一瞬、警戒はしたが次の瞬間には喜びに変わった。知っているヒトがいると言うだけで、この何処かわからない場所で、なんだかわからない、重い荷物を背負わされているという現実を忘れることができた。時間にして1秒にも満たない時間だったが。知らないところで、知っているヒトにあう。これほど心強いことがあるだろうか。
 「……えっと、浩平お兄ちゃんの友達」
 「…ハイ、そうです」
 恐る恐る、たずねてみると笑顔を返してくれた。やっぱり、浩平お兄ちゃんの友達だ。繭は嬉しくなった。何をしたら良いか、其れすら分からないこの場所で、大好きな浩平お兄ちゃんの友達に出会えたのは運が良かった。彼女についていけば、浩平にも、瑞佳にも会えるだろう。そう考えた。
 「独りですか?」
 茜が聞く。尤も、繭はその名前すら知らなかったが。
 「……うん。浩平お兄ちゃんは? 瑞佳お姉ちゃんに逢いたい…」
 「浩平? 嗚呼、そうですね。一緒に探しましょうか?」
 「うんっ」
 繭は精一杯の笑顔で答えた。
 「其れはそうと、お腹、空いてませんか?」
 突然、茜がそんなことを言う。繭の頭の中は、すでに浩平や瑞佳との再会のことで頭がいっぱいではあったが、お腹は空いていた。昔から、本能には――体の欲求には従うようにしている。だから素直にお腹が空いている、と答えた。支給された食料はブロックタイプの栄養食で、偏食気味の繭の口には合わなかったのだ。其れを店ながら、これおいしくない、とも告げる。
 「其れなら、これをどうぞ」
 茜が出したのは、いつか浩平にも見せたことのあるあの瓶だった。首をかしげる繭に、これを掛けたら甘くなります、と告げる。子供なんて、甘いものには弱いものだ。茜はそう単純に考え、計画を実行した。先ほど、繭が独りだと聞いた時に思いついたことだった。練乳をその栄養食にかけ、自分で一口食べてやる。其れを見て安心したのか、同じように練乳を掛けたブロックタイプの栄養食を繭も口にした。
 「わぁ」
 一口かじり、甘いのが解ると繭は目を輝かせる。瞬く間に一つ食べてしまうと、もう一本食べたいとねだった。久しぶりの食事、其れも甘いものだ。繭に自制心などと言う物はなかった。
 「もっと別のもかけてみますか?」
 そう言って、茜はディバッグの中から別の瓶を取りだし、同じように掛けてやる。今度は粉末状だったので上から少し、練乳を掛けて固定させる。そして先ほどと同じように、繭に渡した。繭は疑うような素振りも見せない。さっきと同じように口に運ぶだろう。茜の思考はすでに繭よりも殺気の粉末の効果――そして、繭の持つ鞄から見えるライフルのようなものに注がれていた。
 只、一つ大きな誤算だったのは、瑞佳がやっと発見した二人に声をかけようとしていた所だった。茜は昔から、肝心な所で運を逃してしまう様だ。完全犯罪はこれでなくなってしまった。ジーザス。





再会―――いや、再開、です。
って、読んでるヒト、覚えてるヒトいるのかな…
まぁ、良いけど。
この話しも考えながら書き足しているので展開は結構適当。
私自身、如何なるかわからない……ってすごく無責任ですね^^;

http://www.grn.mmtr.or.jp/~pelsona/