innocent world  【episode 10】 投稿者: PELSONA
壁。
壁がある。
その壁は扉。
不可視の力というヒトにあらざる力を持つものにとっての扉。
その扉の前に立つ影が二つ。

郁美と晴香だ。

二人は、共通の目的の為にここに立っている。
それは復讐。
FARGOという組織への復讐。
そして、その頂点に立つものがこの中に居る。
居るはずなのだ。

名前も知らぬ物への憎悪と殺意。
それを満たすときは、今。

そして、今、扉は開く。
終局へと向かう扉が。



開かれた扉の隙間から最初に目に入ったのは一人の老人だった。
体のあちこちにがたがきているのか、車椅子に座っている。
キイ、キイと音を立てる車椅子は其れまで目をやっていたものからこちらに目を移すと微笑んだ。

「ようこそ」

一瞬、彼が私たちの事を馬鹿にしているのかと思った。
「私達があがいた所で何の意味も無い」と、暗に告げているのかとも思った。
私達が彼に、FARGOに強い憎しみをもって無ければつられて微笑み返したであろう微笑。
其れほど、穏やかな微笑。

「悪いけど、死んでもらうわ」

私がそう感じている間、晴香の頭には殺意と憎悪しかなかったようだ。
敵のトップを目の前にして闘争本能だけが表に出てきたのかもしれない。
一言、そう口にすると即座に力を解放した。

「まぁ、そう慌てるな」

老人はなんの予備動作もなしに晴香の力をかき消すと、話しを続ける。
すぐ隣で唖然としている晴香が目に付いた。

「これから歴史的な出来事が起こる。
 君達がその傍観者になることを許そう」

「郁美っ!」

老人の言葉も聞かず、私に呼びかける晴香。
つまりは「おまえも攻撃しろ」ということだろう。
全身の神経を集中させ、老人にむかって力を放つ晴香につられるように私も力を解放する。
中にいる彼に呼びかけ、力を解放してもらう。

だが、結果は氷上シュンの時と同じように終わった。
彼には、私達の攻撃は通じない。


「どうしてかわからないって顔してるね」

其れでも尚、攻撃を続ける私達の後ろから声が聞こえる。
氷上シュン。
彼の声だ。

「おお、我が息子…ちょうど良いところに来た」

老人に軽く会釈をすると、シュンは続ける。

「彼はオリジナル……つまり、君達にその力を与えた一族のクローンだよ。
 尤も技術が完璧じゃないから寿命は全然違うけどね」

「……彼のクローン?」

「そう。其れが完成したからこそ、あのときに躊躇いも無く殺すことができたんだよ。
 唯一の誤算は彼に分身を生みつける能力が無いってことだけど」

「……それであの変な石を集めていたの?」

力が通じないことから多少、冷静さを取り戻した晴香が尋ねる。

「そう。もう終わったから言うんだけど、『十種の神宝』という秘宝。
 それには死者をよみがえらせる力もあるという」

「それでアイツを甦らせるって言うの?」

アイツ……きっと少年のことだろう。
晴香にとってはよほど厭らしく、言葉の端に憎しみが感じられる。

「残念だが違う。私はそれを使って『永遠』を手に入れるのだ」

老人が引き継いで言う。

「死者をよみがえらせるという『死反玉』、
 その形態を具足させるという『足玉』、
 浮かれゆく魂を返し止めるという『道反玉』、
 生き生きとした活動をもたらすと言われる『生玉』。
 この四つはすでに我々の手の内にある。
 そして――」

そこで話を切り、老人は背を向ける。

「――儀式は終わった。
 彼を一旦殺すことにより、その魂を葬り、
 彼の中にある『みずか』という永遠を司る存在を新たな魂として定着させる。
 それを不可視の力で意のままにコントロールできるようになれば――」

「FARGOは安泰……ですか?」

最後の言葉をシュンが引き継ぎ、老人は頷く。

「そろそろ目覚めの時間だ。
 君たちにも永遠を与えてあげよう。
 永遠の、幸せだ」



そこで一旦、私の意識は途切れる。
奴らの攻撃を受けたのか、それとも別の理由か。
ただ、次に目覚めたとき、そこは知らない場所だった。

「おはよう、郁未」

声のした方を反射的に振り向く。
すると、そこにはいるはずの無い人物がいた。

「……嘘」

「わ。いきなり『嘘』は酷いよ。
 せっかくこうして郁未の元に戻ってきたって言うのに」

「……何で生きてるの?
 ここは何処?
 私、どうしたの?」

「わからない」

心の中で溜息を一つ。

「本当、変わってないわね」

「まぁ、ね」

そして、彼には笑顔を。

「それじゃ、再会を祝ってお祝いでもしようか」

私は彼にむかって頷くと手を取った。

「もう……何処にも行かないわよね?」



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えっと、PELSONAです。
気が向かないと書かない上に駄作、さらにわけがわからない…と言う感じですが、
コレで本編終了です(爆)

中途半端だーとの意見、ごもっともです(爆)
でもコレは郁未が主人公の視点でのEND。
郁未は永遠の世界で永遠に幸せで良いかなぁ…と思ったり(笑)

一応、このあとの展開についてはエピローグで書く……予定。
で、エピローグの後書きで全部の説明、書きます。

やっぱ書きながら展開を考えていくと駄目だなぁ…と実感しました(笑)

感想くれた方、ありがとうございました。
新人の方、読まなくても良いです。目が腐ります(笑)

それでは早いトコエピローグが賭けることを祈りつつ…………

偽SS作家、PELSONAでした。

http://www.grn.mmtr.or.jp/~pelsona/