そして誰もいなくなった 投稿者: PELSONA




99/7/16

次のプログラムが決まったのでお知らせいたします。

開始日時:99/7/21
終了日時:99/7/23
場所:瀬戸内海
参加者:約17名
オッズ:別紙を参照







 軽快なメロディが辺りに響きわたる。
 行進曲を思わせるそのメロディに急かされるように折原浩平は目を覚ました。
 鉛でも入っているかのように重い頭をもたげ、辺りを見回す。
 そこで感じる小さな違和感。
 (ああ……そうか)
 浩平はその違和感の正体に気付くと、急に立ち上がる。
 
 「ここは何処だっ!?」

 違和感の正体とは、場所。
 教室にいたはずの自分が木にもたれ掛かるように眠っていたことだった。
 
 





 同時刻。

 「んあー、みんな、起きたかぁ?
 未だ寝てるやつー、早く起きろーー」

 瀬戸内海に浮かぶ小島。
 その島全体に声が響きわたった。

 「時間がないから手短に話すぞー。
 いまから、ここにいるみんなに椅子取りゲームをしてもらおうと思う。
 んあー、椅子取り……と言っても、実際に椅子を取るワケじゃないぞー。
 命を賭けた、椅子取りゲームだ」

 島中に設置された隠しカメラとスピーカー。
 その近くに停まっていた鳥たちが突然聞こえてきた声に脅え、飛び立つ。
 にわかに騒がしくなった森に髭と呼ばれる教師の間延びした声が響いていた。

 「ルールは簡単。
 今から3日間、お前達はこの島に閉じこめられる。
 そこで生き残った一人だけ、命が助かる……と言うわけだ。
 取りあえず必要な物は近くにある鞄の中に入っているからなー。
 3日後までは協力も、敵対も自由だ。
 ただし、3日後。
 一人以上の人間が残っていた場合はなー。
 その時は一人残らず家に帰れなくなるからなー、気をつけろよー」







 「そうそう、ここから逃げ出そうとした場合も失格だぞー。
 不可視の力とか言うので殺されちゃうらしいからなー。
 それにお前らは常に監視されている。
 妙な行動とかも行わない方が良いぞー。」

 こくっ、こくっ、こくっ……

 椎名繭は小さく喉を鳴らしながらペットボトルに入った水を飲んでいた。
 喉が潤うと、次は携帯型固形食に手を伸ばす。
 
 「みゅー……おいしくない…………」

 繭は後ろ手にそれを放り投げ、再びディバックの中を探りだした。







 「…………」

 里村茜は、黙って担任の間延びした声を聞いている。
 不可解な状況であったが、何故か彼女はそれを受け入れることが出来た。
 ヒト一人が消えることがあるのだから、こんなコトがあってもおかしくはない。
 それが、彼女がこの状況下で冷静にいることが出来た理由だった。

 「あー、それと、12時間置きに死亡者を発表するからなー。
 最後の一人を目指して、がんばれよぉー。
 先生、お前達が死ぬの哀しいけど、見守っているからなー」

 ブツッ。

 一瞬、耳障りな音がして放送がとぎれる。
 だが、それにしても滅茶苦茶な話だ。
 他の皆は、この放送をどう受け取ったのだろうか……。
 茜は、まず鞄の中身を確認することに決めると、鞄を開けた。





 鞄を開けると、そこには伸縮式の特殊警棒が入っていた。
 確か、サバイバルショップで見たことがある。
 南明義はそれを一旦延ばすと、軽く振ってみた。

 「でもなぁ…………」

 ヒュッ、ヒュッ。

 空気を裂く音がする。

「あんな話……どう信じろっていうんだよ……」

ヒュッ、ヒュッ、ヒュッ……

 数回振り、その重さになれてくると近くにあった木の枝に向かって振りかざす。

「……茜さんは……無事かな…………」

……ヒュンッ

乾いた音と共に、小枝が地に落ちる。
落ちた小枝と、警棒を見ながら南は軽く溜息をついた。

「とりあえず……誰か探すかな……」







 パンッ、パンッ、パンッ

 三回、銃声が響く。

 みさきは音のした方に顔を向けると、手に持っていた鞄を強く抱きしめた。
 銃声に驚いた鳥達が逃げまどうように飛び立つ。
 様々な鳥達の羽ばたきと、木々の揺れる音を聞きながらみさきはうずくまっていた。

「……誰か……いるの?」

 声に出してみるが、返事はない。
 銃声のが聞こえたのはもっと遠くだったはずだ。
 ここにヒトがいるはずはない。
 だが、今のみさきにそれを考える理性は持ち合わせてなかった。
 
 「ねえっ!誰かいるのっ!?
 雪ちゃん?浩平君?
 ねぇっ!お願いっ……返事をしてよぉっ!!」







 「さってと、コレで誰かが気付いてくれると良いんだけどな……」

 硝煙の臭いをかぎながら、住井護は呟いた。
 さっきの髭の放送。
 アレがどうであれ、今必要なのは仲間だ。
 自分に与えられた武器は拳銃。
 仮に、このゲームに乗った奴がいるとしても返り討ちにすることが出来る。
 それに――

 「南か折原辺りが来てくれると有り難いんだけどな……」

 万一の場合はコレを使えば良い。

 「しばらく待ってみますか……」

その台詞を最後に、住井は木にもたれ掛かるように座り込んだ。







 銃声。
 さっき聞こえたのは銃声だ。
 銃声が聞こえたと言うことは、銃を持った誰かが誰かを殺したのだ。
 誰かが、この訳のわからないゲームに乗ったのだ。
 
 広瀬真希は、片手に握ったナイフを強く握りしめると辺りに視線を張り巡らせた。

 誰かが私を殺しに来るかもしれない。
 誰かが私を狙っているかもしれない。
 誰かに私は殺されるかもしれない。

 奥歯を強くかみ、震えを押さえる。
 深呼吸をし、判断力を取り戻させる。
 その時、視界の橋にリボンが見えた。



10



 上月澪は、辺りを彷徨っていた。
 勿論、恐怖は感じていた。
 戸惑いも感じていた。
 でも、みんながあの放送を本気にしているとは思っていなかった。
みんな、優しくて、いい人達ばかりなのだ。

 浩平でもいい。
 茜でもいい。
 詩子でもいい。
 みさきでもいい。
部長でもいい。

 兎に角、誰かに会いたかった。
 そして、安心したかった。

ガサッ

 そう考えながら歩いていたとき、背後から物音が聞こた。
 やっと誰かに会える!
 澪は、その姿が友達であることに期待して、音のした方を振り返った。



11



 一瞬、衝撃を感じる。
 だが次の瞬間、その衝撃は消え失せ、代わりに熱い物が手を濡らしていた。
 相手は、大きく目を見開いている。
 だが、その口から声が発せられることはなかった。

 真希は、力を失い倒れていく人影を見ていた。
 ゆっくりと、スローモーションのようにそれは倒れ、とさり、と音を出す。
 
 「……案外、あっけない物ね」

 真希は意外と冷静にやれたことに少しばかり満足感を覚えていた。
 そう、自分は悪くはないのだ。
 悪いのは、自分を殺そうとしていた相手。
 やらなければ、やられるのだ。
 罪に問われることもないだろう。

 真希は今はもう動かなくなったそれを一別すると、その場を後にした。




残り、16名

……………………………………………………………………………………

どーも、PELSONAですー。
息抜きに、こんなの書いてみました。
イノセントに感想くれた方、ありがとうございましたm(__)m
反応無いけど、ちゃんと読んでますっ。
16日すぎには感想も書けるようになる……と、いいな(^^;)
ではではぁ……

http://www.grn.mmtr.or.jp/~pelsona/