innocent world  【episode Z】 投稿者: PELSONA
改正版です。
でも、はっきり言って別物っぽいです^^;


」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

頭が痛い。
ここは・・・何処だ?
俺は何故こんな所に居る?


目を覚ますと、そこは知らない天井だった。
そのまま、目を横へスライドさせるとドア。
部屋全体は白で統一されていて、病室を思わせる。
違うと感じさせたのは、部屋の床から発せられる青白い光。
そして、ベッドしかないという奇妙な無機質さだった。


「おはよう。気分はどうだい?」


そんなとき、部屋の何処からか声が聞こえる。
見渡してみるが、そこには誰の姿も見られない。
部屋のどこかにスピーカーでもあるのだろうか。


「ここは一体何処だ?」
「FARGOの中だよ」


即座に返ってくる返事。
その時初めて、その声の主に気がついた。


「氷上っ!お前、俺に何をする気だ!?」


そうだ。
思い出した。
俺は氷上にここに連れてこられたんだ。
確か・・・大事な用がある・・・とか言って。
そして連れてこられたのがFARGOとか言う宗教の本部。
俺はそこで飲み物を出されて――


「思い出したかい?」


氷上はさっきと同じような調子で聞いてくる。
こいつが俺に睡眠薬でも飲ませて運び込んだのか?


「・・・ああ」


何故そのような回りくどいことをするのだろう。
だが、俺にはそのようなことは判らない。


「・・・で、大事な用ってのは結局何だったんだ?」
「ちょっと協力してもらいたいだけさ」
「協力?」
「そう。協力」


氷上がそう言うと機械音が聞こえてきた。


ごうん・・・ごうん・・・ごうん・・・


何かが回っているような。
何かが動いているような。
どこか、大きな工場か何かでしか聞くことの出来ないような音だ。


「おいっ、氷上っ!」


呼びかけるが、今度は何も答えない。
それとも、この機械音のせいで聞こえていないのか。


ごうん・・・ごうん・・・ごうん・・・


音は続く。
その規則的な音が子守歌となり、俺を闇へと誘っていった。



「おにいちゃ〜ん・・・」


呼び声が聞こえる。


「おにいちゃ〜んっ・・・」


一体、誰の声だろう


「おにいちゃ〜ん・・・」


そうだ、これはみさおの奴だ。
みさおが、僕のことを呼んで居るんだ。


「おにいちゃ〜ん・・・何処に行っちゃったのぉ〜っ」


少女の声は涙混じりになっている。


「おにいちゃ〜んっ」


まったく、しょうがない奴だな。
ぼくは、やれやれといった感じでため息をつくと、


「みさお〜っ。」


大きな声でみさおの奴を呼んでやった。
全く、みさおの奴は僕の姿が見えなくなるとすぐに泣き出すんだからな。


「あっ、おにいちゃんっ」


みさおは、僕が大きな声で呼んでやると嬉しそうに駆けてくる。
なんだか、そんなみさおが犬のように思えて微笑ましい。
僕の側まで来たみさおは、そのまま僕へと抱きついた。


「なんで私を置いて行っちゃったのぉ」


頬を膨らませるみさお。
我が妹ながら、そんな表情も可愛いなと思いながら、僕は妹の機嫌を取り戻させるために謝る。


「ごめんごめん。もう一人にしないからさ」
「本当に?本当に一人にしない?」
「ああ、本当だ」


僕がみさおをわざと一人にしたのは、そろそろお兄ちゃん離れをして欲しかったからだ。
ずっと良い兄であり続けようと思った僕は、みさおの奴にもそろそろ「じりつ」と言うのをして欲しかったのだ。


「本当の本当に?」
「本当の本当だ」
「本当の本当の本当?」


でも、まだみさおには僕が必要みたいだ。
ぼくはしょうがないなぁと思いつつも、心の何処かではホッとしていた。
僕も妹離れをしなくちゃな・・・なんて思う。


「えっへへぇ〜。おに〜いちゃんっ」
「なんだ?みさお」
「呼んでみただけっ」


本当、みさおに好かれているように思う。
そして、それと同じぐらい、僕はみさおのことが好きだった。
だから、しつこく聞き続ける妹に僕は言ったやったんだ。


「永遠に一緒にいてやるよ」
「えいえん?」
「ずっと一緒ってことさ」


ずっと一緒って言葉に無邪気に喜ぶみさお。
僕はそんなみさおをみて、本当にずっと一緒にいたいと感じていたんだ。



コレは・・・。
目の前で展開されている過去の映像に俺の目は釘付けになっていた。
懐かしくもあり、哀しくもある。
最近思い出さなくなったみさおが、目の前で笑い、動いているのだ。


「楽しそうだね」


突然聞こえてきた声に俺は振り返る。
と、そこにいたのは――


「この場合は初めまして・・・か」


そこにいたのは・・・俺だった。


「おっ・・・俺っ!?ってことは・・・俺は誰だ?」
「・・・折原浩平」
「そうだよな。なら、お前は誰だ?」
「・・・折原浩平」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・そうか。折原浩平は二人居たのか」


訳が分からなかったが、納得しておく。
どうせ、コレは夢なのだろう。
夢なら何が起きても夢で済ませられる。
それが、どんなことでも。


「それで、俺が俺に何のようだ?」
「・・・ずいぶんと素直に受け入れるんだな」
「ま、俺だしな」
「・・・それもそうか」


何故か納得しているもう一人の俺。
もしかしてコレがドッペルゲンガーとか言う奴か?
そう納得しながら、俺に向き直る。


「ちょっと、見てもらいたい物があってね」
「見てもらいたい物?」
「そう。」


どっぺるがそう言うと、今まで目の前にいた俺とみさおが消える。
そして次は、病室が現れた。


「・・・コレは?」


どっぺるは何も答えない。
そして薄いもやのような物がヒトを形作っていき――


「おにいちゃんっ・・・苦しいっ、苦しいようっ・・・」


それは、みさおになった。


「お兄ちゃんっ・・・助けてよぉっ・・・」


みさおは胸の辺りを押さえながら、悶え苦しんでいる。
そして時折、宙に手をやっては何かをつかもうと動く。
ベッドに乗っていたカメレオンの玩具が床に落ち、乾いた音を立てた。
そしてみさおは、俺の方に視線を移して言った。


「お兄ちゃん・・・苦しいよぉっ・・・助けてっ」
「みさおっ!!」


俺は夢だと言うことも、幻覚だと言うことも忘れ、みさおに近づこうとする。
だが、そんな俺をどっぺるは止めた。


「無駄だ」
「放せっ!」


俺は無理矢理振り払おうとするが、予想外に強い力のため振り払えない。


「行ったところで、何が出来る?」
「五月蠅いっ!みさおが助けを呼んでるんだぞっ!!」
「行って、どうするんだ?」
「みさおを助ける!!」
「どうやって?」


どっぺるは表情も変えずに言う。
確かに、奴の行ってることは正しい。
俺が行ったところで、みさおには何もしてやれないとおもう。
でも、せめて側に近寄って励ましてやりたかった。
その手を握って、勇気づけてやりたかった。


「どにかく、俺はみさおの所へ行くっ!」
「キミは彼女を見捨てたのに?」
「・・・えっ?」


俺が・・・みさおを見捨てただって?
そんなことはない。
俺はずっとみさおを見守っていたはずだ。


「だってそうだろ?お前は妹のことがが鬱陶しかったんだ。
 だから構って欲しくなくてあの玩具をあげたんだろ?」
「違う。俺は操が退屈しないようにアレをあげたんだ」


「お前は、思うとが嫌いだったからわざと姿を眩ませて、みさおを一人にしたんだろ?」
「違うっ。アレはみさおのことを思ってやったんだっ」

「みさおが嫌いだったから、プロレスの技をかけていたんだろ?
 あんな奴が居なければ、お前は哀しい目に遭うことなんか無かったんだ」
「違うっ!」

「お前は無意識のうちに知っていたんだ。
 操はお前を不幸にすることを」
「違うっ!」

「違わないさ」
「何でそんなことが言えるっ!」


「俺は、お前だからだ」


違う。
違う。違う。違う。
違う。違う。違う。違う。違う。
違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。


俺はどっぺるに向かって否定の言葉を吐き続ける。
そんなとき、今まで苦しがっていたみさおが俺に目を合わせると口を開く。


「結局、授業参観に出てくれなかったくせに」
「アレはっ・・・みさおが入院したから・・・」


「私が痛いって言ってるのに、私のこと殴っていたくせに」
「違うっ・・・アレは・・・アレは・・・」


「お兄ちゃんの、嘘つき」


「ホラ、みさおも言ってる」
「違う・・・俺は・・・本当にみさおのことを・・・」


気がつくと、俺は泣いていた。
それがみさおに対する謝罪の涙なのか。
操に嫌われたことから来る悲しみの涙なのかは判らない。
ただ、泣いていたんだ。


「何で泣いているの?」


彼女は俺にそう聴いた。
見たことのない女の子だった。
いや、俺はこの子を知っているはずだった。


「ねぇ、何で泣いてるの?」


何でって?
そんなこと、決まっているじゃないか。


「悲しいことがあったんだ」
「悲しいこと?」
「そう、哀しいこと」


何で、この女の子は俺に話しかけて来るんだろう。
俺は、泣きながらそんなことを考えていた。
気がつけば、周りにいるのは俺とこの子だけ。
もう一人の俺も、みさおも、消えてしまっていた。


「どんなこと?」
「思い出したくもないくらい、哀しいことだよ


でも、この子と会話をしていると、少しだけ悲しいことを忘れられた。
本当に、本当に少しだけど。


そんな時だった。
彼女が言ったのは。


「じゃあ、私が貴方の悲しみを無くしてあげる
 ずっと一緒にいて、哀しいことも忘れさせてあげる」


そう言った彼女と、僕の唇が鳥の挨拶のようにちょんっとぶつかった。


「私が、永遠に一緒にいてあげるよ。
 この、残酷な世界から貴方を守ってあげる」


ああ・・・そうだ・・・思い出した。


この子は・・・俺に永遠を与えてくれた子だ。



永遠はあるよ

         ここにあるよ



小さな、みずかの胸に頭を埋めながら俺はそんなことを考えていた。


その時。


何の前触れもなく折原浩平の心臓はその活動を停止した。



「さてと。それじゃ体細胞の復旧、よろしく頼むよ」
「了解しました」


シュンは浩平の脳波レベルが臨界点を突破した頃を見計らって、浩平の心臓を止めた。


不可視の力を使って。


「準備が出来次第、教主に伝えてくれ。
 準備は整いました・・・と」


シュンは最後にそう伝えると、モニタールームから姿を消した。



「さよなら。折原君」


」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」


前回よりは判りやすく成ったんじゃないかなぁ・・・と思います。
で、永遠の世界の具現化の方法・・・どうしよう(汗)
肉体の組成方法は考えたけど、そっちはまだです(爆)
ちょっとは考えてるケド(笑)
えーっと、どうこじつけるべきか・・・(屍)
ではっ、次回は3日以内に書きたいな・・・と思います^^;

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