innocent world 【episode X】 投稿者: PELSONA
「時は満ちた」



現FARGOの最高指揮者である男が言った。
それを聴いていた息子は――シュンは父に問う。


「でも、十種の神宝は全部集まってませんが?」
「全部集める必要など無い。私は十種の神宝を集めるのが目的ではなく、十種の神宝を使用するのが目的なのだ」
「つまり、必要な道具がそろったと言うことですか?」
「必要なコマも・・・な」


教主はそう言って不適な笑みを浮かべる。
シュンが少しでも感情を表した父親を見るのは初めてだった。


「そこで・・・だ」


教主はシュンに言う。


「折原浩平をつれてきてくれ」
「!?」


この男は彼を知っているのか。
永遠を求め、その世界に旅立っていった彼を。

この男が永遠の世界のことを知っていると言うことは自分も判っていた。
前に言っていた「永遠を手に入れる」というのはこう言うことなのだろうか。


「何故、彼を必要とするのです?」


内心の動揺を悟られないように聴く。
そう、この男が自分と浩平の接点を知っているはずはないのだ。
そう、自分に言い聞かせながら。


「それはお前が一番よく知っているんじゃないか?
お前が勝手な行動をしているのを見逃してやったんだ。それぐらいはしてくれてもいいだろう」


やはり、彼は知っていた。
自分の行動――浩平に会いに行ったことや、郁未に助言をしたこと――を知っていながら、あえて泳がしていたのだろう。
シュンはこの男にはかなわないと言うことを感じた。
行動のすべてが読まれているというのに、何ができるだろうか。
ましてや、自分の内側にある力は彼に絶対服従だ。


「――判りました」
「そうか。行ってくれるか」

当たり前だ・・・と言うように満足げに頷く。

「でも、一つだけ教えてください。
彼に何ができるというのです?
貴方は彼に何をさせようとしているのですか?」


返事は返ってこないと言うことは予想していた。
だから、返事を待たずに歩き出す。


「――強い意志や感情は一定の方向性を持ったエネルギーとなる」

背中から聞こえてきた声に、シュンはあわてて振り向く。
ただの気まぐれか、それとも意味があるのか。
それは判らないが、信じられないことに彼が質問に答えたのだ。

「たとえば、自分の殻に閉じこもっているようなヒト――夢の世界に生きている物達――はそのエネルギーが自己の内面に向かって強く働いているのだ。
よって、彼らだけの、彼らのための世界が生まれる。
それは現実と同時に存在する、彼の為だけのもう一つの現実だ」

シュンは一言一句を聞き漏らさないように、耳を傾ける。

「たとえば、呪いという物があるだろう。アレはある一定の手順を踏まえることによって『憎しみ』という感情に方向性を与え、相手に影響を与えているのだよ。
だから非科学的な呪いが実在している。幽霊も死んだ物の意志の結晶が具現化した物にすぎない」


教主はそこで一端言葉を切る。


「実際に永遠の世界を生み出したほどの力を持つ『折原浩平』。
それほどの力を持つ彼のエネルギーがもし、具現化したとしたら?
それは折原浩平というフィルターを通さない力の結晶だ。
つまり純粋な力の結晶であり、新たな世界を生み出すぐらいは造作もないことだろう。」


そこまで話した後、教主は無言で背を向ける。
つまり、話はもう終わり・・・と言うことだろう。

「判りました。彼を連れてきます」

シュンはそう言うと、その場を後にした。


教主の間を出ると、隠し扉から通路に出る。
すれ違う教団員や信者の間を縫いながら彼は考えていた。

確かに、それができるなら永遠の世界の操作もできるかもしれない。
だが・・・どうやってエネルギーを具現化するんだろう?
そのための十種の神宝なのだろうか。


と、左肩に軽い衝撃が走る。
考えながら歩いていたため、誰かにぶつかってしまったらしい。

「あっ・・・すいません」

とっさに謝る・・・が、彼の視線はぶつかった相手に釘付けになる。

「・・・・・いえ」

ぶつかった相手は、軽く返事をすると長い髪の毛をなびかせ、行ってしまった。
美しい金色の髪が印象的な女性。
だが、シュンが感じ取ったのは彼女の中に眠るもう一つの存在。

「彼女も犠牲者なのか・・・」

女は、もう見えない。
シュンは一つため息をつくと、今度はぶつからないように歩き出した。

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PELSONA:なんとか続きが決まりました〜。
        矛盾点は無視してねっ(笑)
どっぺる詩子:普通、そう言うこと考えながら書くんじゃないの?
PELSONA:俺は思いつくまま書いてるから。
        それにキミの言う普通とは何だ?
        要するに、大勢の人が同じ意見を述べているだけであってそれが正しいとは限らないだろう
どっぺる詩子:うっ・・・なんか説得力があるような無いような・・・
PELSONA:そんなことも判らないとは笑止千万。引っ立ててくれるわっ!
どっぺる詩子:ぅぅっ・・・ごめんなさい・・・
PELSONA:判ればよろしい。
どっぺる詩子:なんか騙されているような・・・
PELSONA:それはそうと、ちまたで話題の「山葉堂」の読みかた。
どっぺる詩子:「やまはどう」って意見が多いみたいだね。
PELSONA:ああ。だが、俺は「さんようどう」と呼んでいる。
どっぺる詩子:えぇ〜っ、本当にそれであってるのぉ〜っ?

・・・ごーまんかましてよかですか? 

PELSONA:これより「山葉堂」の読みかたは「SANYOUDOU」とするっ!
        他の読みからはいっさいみとめないっ!!
どっぺる詩子:・・・何かの本の読みすぎ(ぼそ)

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