月が教団の建物を照らしている。 緑豊かな山中にひときわ異彩を放っている無機質なコンクリートの群衆。 それが新興宗教FARGOの建物だ。 シュンはその最上階、教主の間に入るとそこに座り、月を見上げている男に言った。 「父さん、まさきが十種の神宝の内の一つ。死反玉を手に入れたそうです」 シュンはそう報告すると、未だ振り返ろうともしない父親から目を背ける。 形式上、「父さん」と呼んではいるが、この男のことを父親となど認めていないのだ。 あちらも息子の僕のことを信用してはいないのだろう・・・と思う。 何故、十種の神宝という物を何故集めているのかすら教えようとしない。 そしてどうして今頃になって自分を引き取ったのかも判らない。 この男のすることは、自分の想像力の限界を越えている。 「それでは僕はこれで」 必要最小限のことだけ口にし、部屋を出ようとする。 そのとき、男が――父親が口を開いた。 「今、FARGOは破滅への道を歩いている」 何故、急にそのようなことを言うのか判らなかった。 だが、戸惑いながらも口を開く。 「知っています。不可視の力が与えられなくなってから入信者は減っていく一方です。」 「FARGOは新たなカリスマを――力を手に入れなければならない」 「新たな力?」 そこまで聴いたとき、シュンはある世界のことを思い出した。 現実世界とともにありながらも決して気付かれることのない世界。 永遠の安息と、幸せを与えてくれる世界。 そして、自分が行くはずだった世界が。 「そう。FARGOは永遠を手に入れるのだ」 「永遠・・・ですか」 内心の動揺を抑えつつ、口に出す。 この男は自分のことをどこまで知っているのだろう。 そんな疑問を胸に抱きながらも次の言葉を待つ。 「それの鍵となるのが十種の神宝だよ。 これでもおまえを信用しているんだ・・・しっかりやってくれよ」 まるで心を読んだかのように語りかけてくる男。 薄気味の悪い男だ・・・そんな父親に対しシュンはかすかな嫌悪感を覚える。 早くここから立ち去ってしまいたかった。 「お話はそれだけですか?」 そういうと早々にここを立ち去ろうとする。 扉をでたところで、頭の中に直接あの男の声が響きわたった。 「そう嫌うなよ。息子。 おれたちは生き残りなんだから」 月は雲に隠れ、辺りを闇が覆っていた。 ・・・イクミ・・・イクミ・・・ 天沢郁未は夢を見ている。 だれかが自分の名前を呼び続ける。 そんな夢だ。 その虚ろな声はやがて現実味を増し、やがて自分の脳に直接響く。 それは、自分を助けるために命を落とした、少年の声。 「郁未」 郁未が声のする方を振り向くと、そこに立っているのはあの少年。 寂しげな笑みを浮かべている。 「・・・どうしたの?」 郁未は問いかける。 「何か悲しいことでもあったの?」 だが、少年は答えようとはしない。 「私が何かした?」 自分が何かをしてしまったのかを必死に思い出そうとする郁未。 だが、思い当たる節はなく、ただ困惑するばかりだ。 「僕の仲間が生きていたんだ」 突然の少年の言葉。 「彼らを、救ってほしい」 ナカマガイキテイタ カレラヲスクッテホシイ 郁未は、それらの言葉の羅列がなにを意味するか気付くのに数刻かかった。 頭の中で情報を整理し、反芻する。 「つまり、あなたの同族を助け出せばいいの?」 そう問いかける。 それを聴いた少年は再び寂しげな笑みを浮かべ、そして消えた。 目を覚ますと、初めに目に入ったのは見慣れた天井。 すべてが普段通りの朝だった。 ただ、一つのことを覗いて。 それは、途方もない疲労感。 かつてFARGOにいた頃に不可視の力を使ったときのような、そんな疲労感だ。 ・・・あれ以来、不可視の力を使ったことがないのに そして思い出す。 先ほど見た夢。 寂しげな笑みを浮かべた少年を。 ・・・貴方も何かを感じているの? 自分の中にいるもう一つの存在に問いかける。 愛しい、彼の分身に。 そして、答えるかのように少年の分身が騒ぎ出す。 私は・・・FARGOから逃れることは出来無いみたいね 郁未は自分の運命を呪いながら、戦友に会うべく家を出た。 これからどんな運命が訪れるかも知らないままで 」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」 PELSONA:うーん、なんか今日はたくさん書いてるなぁ どっぺる詩子:ほんと、珍しいよね。 PELSONA:ってことは、そろそろ書く気もなくなるって事か・・・ どっぺる詩子:・・・・・だめじゃん。 PELSONA:だよねぇ・・・ ちょっとだけレスです。 ま、補足というか、独り言っぽいけど。 えーっと、神凪さんも言ってた私の不可視の力の解釈ですけど、 ・少年の同族である ・少年の分身を受け入れている ・少年の分身を精神力で押さえつけている という順で力の強弱が分かれてきます。 押さえつけている場合、自我が強くないと操り人形の状態になります。 本編での晴香とか、本作品中のまなみとか。 葉子さんは信仰心が強いから懐柔していたような感じだけど。 で、その辺りのキャラよりは郁未のほうが力は強いというわけです。 その存在を認めた上で、力を借りてるって感じですから。 って感じで書いていきますのでどっちも不可視使うくせに優劣あるやんけぇ〜(どこの方言?)ってつっこみは禁止ね(笑) じゃ、そういうことで♪http://www.grn.mmtr.or.jp/~pelsona/